表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/79

初めてのお産!

馬の妊娠期間はおよそ340日で人間の十月十日とさほど差はない。

そんな事をこの前の講習会で教えて貰ったので壁に正の字を書き記していたらピッパちゃんに「なんか気味が悪いです」と言われて消されしまった。ひどいっ!!



そんなこんなで季節は巡りジャンヌが種付けを行った冬が訪れた。



自分の一番のお気に入り、母馬のオリーブもお産の時期が近づき大分お腹が大きくなった。



「オリーブのお腹が大きくなったような気がするけど、そろそろ産まれるかな?」


ソワソワしながらピッパちゃんに聞くと



「そんなに見てたらその子も産むに産めませんよ?」



と言われてしまう。ちなみに一月ほど前から馬の行動や雰囲気などをノートに書き記している。


良く毎日そんなに書くことありますね。なんてピッパちゃんに言われたが、今回のお産が最初で最後と言う訳ではないので産まれるまでの数日間の挙動は今後何かの役にたつだろうと始めてみた。


これは前世で上司が事あるごとに

「はぁー。またか。もうさ、お前毎日ノートになにがあったか書けよ」

と言われて始めたのだが、内容の半分はデスノートの様な有り様だったが、意外と残り半分は結構役にたった。


そんなある日の夜いつもの様に餌をあげに行ったのだが少し食べてすぐに食べるのをやめてしまった。

これはひょっとしたらと思い尻尾をあげて陰部を確認するといつもより広がり緩くなってるように見えた


これ、講習会でエロおじさんが言ってた『くぱぁ』だ!


「ピッパちゃん、オリーブそろそろお産始まるかも!」


とピッパちゃんを呼び出し状態を確認すると腕まくりをし


「温めのお湯を用意してください!始まります!」


と指示を出す。


お湯をバケツ一杯用意して数分後陰部からバシャバシャと茶色の羊水が溢れ出す


破水だ!いよいよ始まるお産に心拍数が速まる


ピッパちゃんがオリーブの陰部に手を突っ込み中に居る仔馬の体位を確認する。無言で頷くと自分にも確認するように促す。


手を入れると前脚の蹄がちゃんと下向きになっているのが確認出来た。


その後すぐに「ううぅぅ」と軽い呻き声と共に寝て脚を伸ばしてお産の体制に移る。すると陰部から白い胎盤に包まれた前脚が姿を出す


「ピッパちゃん、な、なにか出来ることあるのかなっ!?」


さっきから苦しそうなオリーブの様子を観ていると居ても立ってもいられずそんな事を口にする


「基本は自然分娩が理想なんでもう少し見守りましょう」


自分とは打って変わって冷静に判断するピッパちゃんだったが数分経っても状態が変わらないを見て


「ちょっと渋いかも知れませんね。シュンさん手を洗ってください!出しましょう!」


「うん!分かった!」


手を洗い少し出ている脚まで向かう。前脚は大分出ているが鼻が少し出ている辺りで止まっていて、相変わらずオリーブは苦しそうにしている。


「今出してやるからなっ!」


胎盤を割き前脚を掴みぐっと引っ張る


「シュンさん!ただ闇雲に引っ張ったら母子ともにダメージを与えちゃいます!オリーブの息みに合わせて真っ直ぐ引っ張って下さい!」


「ごめん!分かった!そーれ!よいしょー!」


オリーブの呼吸にに合わせて息を吐くのに合わせて引っ張る!


すると目、耳、首と出てくる


ブフゥっ!と、もうかれこれ五分位一生懸命気張っているオリーブ


「オリーブあと少しだからなっ!そーれ!」


と引っ張ると胴まで出て、そこからはずるんっと最後の後脚まで出てへその緒がしっかりと繋がれた子っコが産まれてきた。


オリーブも疲弊はしているが、ふぅーと呼吸も落ち着く


良かった。。。無事に産まれたよ。。。


「オリーブお疲れさま、シュンさんもお疲れさまでした。シュン見てください」


ピッパちゃんは羊水で濡れている仔馬の身体をタオルで拭き優しい笑顔で僕に見せてくる


「男の子です。ほら、この目ジャンヌにそっくりじゃないですか?」


仔馬に目をやると産まれて間もないと言うのに生きる力に満ち溢れたジャンヌにそっくりな真っ黒な毛色で

力強い瞳の目をした仔馬が、なんともう立とうと必死に動いていた。


「まだへその緒繋がってるからもう少し寝ててねー」


とピッパちゃんが寝かしつける。

そんな仔馬を愛おしそうに舐めるオリーブ。



正直、ジャンヌが死んでからずっと喉につっかえていたものがあった。


いくら後悔しても命は返ってこない。

いくらピッパちゃんが僕のせいではない、ジャンヌは幸せだったと言ってくれても本当にそうだったのかは分からない。


ずっと後ろばから振り返りながら毎日を過ごしていた気がする


けど、今目の前の新しく生まれてきたジャンヌにそっくりなこの仔を見ていると、未来を想像するとしか出来ない。


この馬が大歓声を受けて先頭でゴール板切る、その栄光の瞬間が。その馬の背にはピッパちゃんが乗っていて小さくガッツポーズする、その光景が脳裏に浮かぶ。


新しい生命って凄い!


あんなに後ろ向きな毎日が一瞬で輝く未来しか想像出来なくなっていた。



「ピッパちゃん」


「はい?」


ピッパは呼ばれて羊水で汚れた腕を拭きながらこちらに顔を向ける


「結婚しよう」


「はい。。。。はいぃぃぃぃぃいい!?」


一瞬で顔を真っ赤にしアワアワするピッパちゃん


「え?なんでっ?しかも今っ?!」


「いや、なんて言うか子供欲しいなぁって思ってさ。子供作るならピッパちゃん以外考えられないし、だめかな?」


「いえ、、、だめって訳ではないんですけど、、、子作り前提っていうのが。。。そもそもお互いオシッコウ◯コまみれの時にプロポーズします?」


「ははっ本当だね。ごめん」


お互い汚れた姿のまま、あははっと笑う


「プロポーズの返事は保留でお願いします。この仔馬を見ていたら、私も私が思うタイミングが出来たので」


「それって」


「それは言うのは野暮ですよ?」


とウフフと大人びて笑うピッパちゃん。その姿にドキッとする。ウ◯コまみれだけど


そんなやり取りをしていたら仔馬は自分で立ってオリーブのおっぱいを一生懸命探していた。


そんなマイペースな所もジャンヌにそっくりだな。と二人で笑い合うのだった

更新遅くなって申し訳ありません!

前の後書きで言い訳したのでもう言い訳しません。


無駄にYouTubeの雑学動画みたり、第一次世界大戦の全貌見たり、サクラ大戦のオープニング無限ループしたりしてました。

そしてふとマイページを確認したらブックマークが1件減っていました。

一ヶ月も更新してなかったらそりゃ当然って話なんですけど、こんな作品でも多少なりと更新を待ってくれていた日本1億分の1の人の気持ちを踏みにじってしまったことに後悔しています。今後は多少は遅くなるかもですがちゃんと更新します。あと数話ですがお付き合い頂けたら本当に幸せです。


今回は初めてのお産を前向きに書いてみました。

実際自分が初めて経験したときは

「うわぁ。。。」の一言ですねw

その一言で大体察して下さい。

慣れてくるとやはり新しい命に携わるというのはかけがえのないものですし

男の子なら

「これはダービー馬になるな!ガハハ!」

女の子なら

「これはオークス馬になるな!いやウォッカと同じで女の子でダービー馬になるな!ガハハハ!」

などと未来のダービー馬の話に花を咲かせます。

それがシニスターミニスター産駒でもな!(短距離ダート血統)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ