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ジャンヌ視点

僕はなに変哲もない草原で生まれた


僕が一歳になった時お母さんが寿命で死んでしまった。

他の仲間を探して草原を歩いて見たけれど誰も見当たらず一人ぼっちになってしまった。

凄い寂しかったけど食べれる草は一杯あるし、水辺もあったので何となく毎日を過ごしていた。


そんなある日とても優しい目をした一人の人間がやってきた。初めて見る人間で最初は少し怖かったけど、彼は毎日僕の大好きな麦を持ってきて僕に食べさせてくれた。


一人ぼっちで寂しかったし、何よりこの優しい目をしたこの男の人を僕は好きだったので彼の後をついて行くことにした。


彼のお家にたどり着き、するとそこにはとても小さな少女が待っていた。


ピッパと呼ばれていたその少女はキラキラした目をしながら、彼に抱きかかえられながら僕の事を一杯撫でてくれた。


その家にはお母さんはいなかったけど、そんな優しい彼らがいるこの家が僕は大好きになった。




いつもピッパは何やら僕に一杯一杯声をかけてくれたけど、やっぱり僕は馬で彼女は人間で、何を言っているかはさっぱり分からなかった。





彼女の言葉が分かればもっと毎日楽しいだろうになぁ





なんて思っていたらある日突然彼女の言葉がはっきりと分かるようになった!



それは彼女も同様で僕の言ってる事が分かるらしく、それからというもの彼女と一杯お話をした。



ジャンヌだーいすき!

僕もピッパが大好きだよ。



と他愛もない会話だったけど、ずっと孤独だった僕にとってはかけがえのないもので、この能力をくれた神様に感謝していた。



会話をしながら色んな所に遊びにも行った。



ある日一緒に行った草原で


「あそこの草はとても美味しいよ」


とピッパに言ったら、ピッパはそこの草を食べ始めて軽くお腹を壊してしまって、さすがにちょっと笑っちゃった。


僕は馬で、君は人間で、違うんだよ


だけどそんな僕を家族同様に扱ってくれて、僕はこんな毎日がずっと続けばいいのにと思っていた。




そんなある日ピッパが


「お父さんが戦争に行っちゃった」 


と泣きながら言ってきた。


いくら会話が出来ると言っても、僕はただの馬でなんの力もなくピッパに励ましの言葉をかける事しか出来なかった



数日後、今度は泣きもせずただ暗い表情でお父さんが死んでしまったと言ってきた。

僕も彼の事が好きだったし悲しかったけど、その暗い表情をする彼女をみるのがとても苦しかった。なんとか励まそうとしたけれど


所詮僕は馬で寄り添う事も出来ず、あの幸せで明るかったお家は暗く、とても暗くなっていった。



あんなに一杯話しかけてくれたピッパは完全に塞ぎこみ、何も会話もせず、ただただ悲しい毎日を過ごしていた。






そんなある日、見慣れない青年が突然僕の尻尾の毛を引き抜き何やら変なものを作り出した。


尻尾の毛を抜かれた時はちょっと痛かったけど怒る元気もなくただその出来上がったものを見ていると、彼はその道具でポーンと音を鳴らし始めた



僕ら馬は人間よりも音に敏感ですぐにビクッてなっちゃうけど、不思議と彼の鳴らす音はとても心地よいものだった。



それはピッパも同様だったのが、彼女のお父さんが亡くなってから初めて泣き出すと、涙が止まらなくなり僕らはずっと彼の演奏を心ゆくまで聴いていた。



後日ピッパに彼の名前はシュンと教えてもらった。


シュンがこの街に来てからピッパも少しづつ元気を取り戻し、僕はスッと胸をなでおろした。

それからというものシュンの演奏を聴きに行くのが日課になった。

彼の皆に愛される人柄と優しい目は何処となくピッパのお父さんに似ていた。







しかしそんな日々もつかの間、ピッパが

「お父さんを殺した人達がこの街に向かって来てる」

と言った。

彼女は以前のような暗い表情をして俯いてしまった。

僕も声をかけてみたけれど、やっぱりピッパは以前のように塞ぎ込んでしまっていた。


なんとか彼女の力になりたい。そう思ってはみたけれど、やっぱり僕は馬でなんの役にも立たない。



そんな時シュンが慌てた表情で僕とピッパを見てピッパに何やらお願いをしていた。

彼の言葉は分からないけれど、おそらくは僕らに力を貸してもらいたいと言うことだろう。


それを聞いたピッパは手は震え怯えた表情をしながら困惑していたが



「僕は大丈夫だよピッパ。それに僕も力になりたい。ピッパもこの街やシュンさんを奪われたく無いだろう。奪われたくないなら、立ち上がらなきゃ!」


と彼女に声をかけた。


すると彼女の手の震えは止まり、強い意志を込めて彼に


「分かりました。私とジャンヌで良ければ力になります!」


と言ってくれた。





とはいったもののピッパはともかく、僕なんかにシュンは何をさせようと言うのだろうか。



すると彼は変な道具を作り出して、僕の口の中に棒の様なものを入れてきた。


一瞬ウェッ!ってなったけど、妙にしっくりくる感じだった。それと同時に背中にも何やら乗せてきて、なんとピッパが僕の背中に跨ると言うのだ!


そんな事されても真後ろのピッパの考えてる事なんて見えないし分からないよ!


しかし、いざピッパが僕の背中に乗ると、僕の口の中にあるハミという道具から、彼女の意志や思考がダイレクトに伝わってくるじゃないかっ!?


言葉よりも早く彼女の意思が伝わってくる。

まるで一心同体になれたようなこの感覚はとても心地よく、そして力強く感じた。



その後僕の仲間達が集められ、僕同様彼らも人間を背に乗せ、戦場へと向かった。






その時の胸の高鳴りは今でも忘れられないなぁ。

背中に跨るピッパの強い意志をハミから感じながら、並み居る敵をなぎ倒す!


今まではいくらピッパとは会話出来る様になったとはいえ


やっぱり僕は馬だから。

と無力な自分に嘆いていたけれど今は違う!



ピッパと僕はこんなに強いんだ!僕らの大切な人を奪ったお前達なんかに絶対に負けない!




そうやって次から次へと追い払い打ち負かす事が出来た。



戦いが終わりまた平和な毎日を取り戻す事が出来たのだが、ハミが出来た事によって僕ら馬の生活はガラリと一変した。


人間を背に乗せ色んな所に行ったり、色んなもの運んだりと色んな仕事が増えた。



怠け者の馬とかは面倒くさそうしていたが、僕はピッパやシュン、人間が大好きだったので彼らの役に立てるのがとても嬉しかった。




ピッパを背に乗せ、色んな所に行った。


山や海や人が一杯いるお城にも行った。本当に本当に楽しかったなぁ


ある日子供の頃に行った草原で



「あそこの草はとても美味しいよ」


と言うと


「ジャンヌったら!もうそんなに子供じゃないよ」


と笑ってみせた。

そうすっかり彼女も大人になったのだ。


それと同時に、僕はすっかり歳をとっておじいちゃんになっていた。



やっぱりピッパは人間で僕は馬だから。。。





ある日1番脚が速いか決める大会があるって聞いて挑戦してみたいとは思ったけど、僕が出るって言ったら当然ピッパが乗るって言うだろうし



最近歳のせいか全速力で走ると胸が少し痛むことがあって、そのせいでピッパが大怪我でもしたらと考えたらとてもじゃないけど出られない



だから適当に嘘をついて出るのを辞めたんだ。



けどその大会を見て、ピッパと一緒にこの大会を勝てたら心の底から嬉しいんだろうなぁ。。。って思った




正直出たかった。勝ちたかった。




けどやっぱり僕は馬で、ピッパと同い年くらいだけどもうおじいちゃんなんだ。。。





やり場のない気持ちを抱いているとピッパが


「ジャンヌの子供でレースに勝ちたい」


と言ってきた。


そうか!僕じゃもう無理だけど、僕の子供がピッパを背に乗せレースに出ることは出来るのか!




馬生最後の大仕事だ!




正直色々とキツくてやっぱり胸が痛くなったりしたけど、なんとか3頭の種付けを終える事が出来た。


これで数年後にはピッパは僕の子供に乗ってレースに出ることが出来るだろう。。。








今まで悲しい事もあったけど、僕はピッパの家の子で本当に良かった。毎日本当に本当に楽しかったなぁ。


シュンも色々ありがとうね。君のおかげでピッパはもちろん色んな人間と仲良くなれた気がするよ。


願わくば僕の子供がピッパを乗せて走る所を見たかったけど、やっぱり僕は馬でそれは叶いそうにないや。。。





天国でピッパのお父さんと一緒に見るとするよ。



ピッパ、今まで本当にありがとう。大好きだよ

シュン、ピッパの事を泣かせたら許さないからね?


僕は人間に出会えて、本当に、本当に、幸せ、だったよ。。。

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