決着!
「ただいま戻りました。ものすごい歓声ですね!さっきから会場が揺れてるみたいです」
ゲートを終えたピッパちゃんがジャンヌと共に来賓席に戻ってきた。
「お疲れ様!もう最後の直線だからね!凄い盛り上がりだよ!」
歓声が大きいので少し大きな声でピッパちゃんと会話をする。
「残り2ハロン(400メートル)!先頭はサークルオブフラワー!一番人気サークルオブフラワー2馬身3馬身と差を広げて行きます!」
最後の直線に入り競馬場の熱気は最高潮に達していた。
いつも冷静沈着で寡黙なサークル宰相も最終コーナーで自分の馬が先頭にたつと、立ち上がり声を張り上げていた。
やっぱりこの馬で決まるのかっ!?
僕の推しのカサブランカゴールドは、、、来てるっ!?
「内からスルスルと金色輝きと共にカサブランカゴールドが3番手から2番手と先頭のサークルオブフラワーに並ぶ勢いで上がって来ている!」
かわせ!カサブランカ!
「この2頭で決まるのか!?いや、大外からものすごい勢い上がって来ている馬がいます!ゼッケン9番サクシードカメンだぁー!」
サクシードカメン(スケベ太郎)来たかっ!?
するとサクシードさんも椅子を倒して立ち上がり
「行けぇ!頑張れ!サクシードカメンー!」
と一際大きい声を応援し始めた
どうしてもサクシードカメンって聞くとタキシード仮面を思い出す。ごめんね~素直じゃなくって♪
そのサクシードカメンの大外強襲をピッパちゃんは何故か苦笑いしながらみていた。
「どうしたの?ピッパちゃん。なにかあった?」
「いえ、サクシードさんの馬どうしようもない事言いながら走っているので。。。」
「え?なんて言ってるの?」
「えぇー言うんですか。。。えーと、『ねぇちゃん相変わらずえぇ尻してまんなぁ!そんな1人で走らんとワイと一緒に走ろうやぁ!』って言ってます。。。」
ねぇちゃんとはもちろんサークルオブフラワーの事だろう。確かにセリの時からずっとサークルオブフラワーの後ろばっかり歩いてたけど、どうしようもないスケベ太郎である。ごめんね~欲望に素直で♪
しかし理由はともあれものすごい豪脚だ!これはひょっとしたらひょっとするのか!?
「あっ!危ない!」
ピッパちゃんが突然そんな事をいうと、2番手を走っていたカサブランカゴールドをサクシードカメンが並びかけた時、ガッとサクシードカメンがカサブランカゴールド齧ろうの威嚇した!
もとよりセリの時から
3番の馬はとても良い馬なんですが、少し臆病さんです。とピッパちゃんが言っていた通りカサブランカゴールドは逃げるように後ろに下がってしまう。
ものすごい闘争本能だぜ!サクシードカメン!
自分の馬券は今のでおそらく当たることはなくなったが、そのサクシードカメンの負けん気を称賛していると、またもピッパちゃんが苦笑いしている。
「、、、今度は?」
「『どけっ!若造!そこ(お尻の鑑賞ポイント)はワイの場所や!』ですって。。。。シュンさんこれ言わすのセクハラですよ?」
「すいませんでした。」
今まで馬の会話を聞きながら競馬観戦したことなかったので、つい楽しくて聞いてしまった。
「残り100!先頭は変わらずサークルオブフラワー!しかしサクシードカメンがものすごい豪脚で交わさんと言う勢いでその差1馬身!」
「内サークルオブフラワー!外サクシードカメン!栄光はどっちが掴み取るか!」
完全にサクシードカメンが並びかけ、ものすごいデットヒートになると馬券買ってる人もそうでない人も、サークル宰相もサクシードさんはもちろん、自分の馬は大分後ろを走っていようが立ち上がり結末を見守っている。
一方国王陛下の方を見ると、完全に魂が抜け出ていた。いくら馬券買ったの?
そんなバカ国王はほっておいて
「どっちだ!?どっちだ!?いや、ここでサークルオブフラワーが1步2歩と前に出始めた!サークルオブフラワー先頭!サークルオブフラワー先頭!2番手サクシードカメン!体制決しました!サークルオブフラワー一着でゴールイン!勝ったのは一番人気サークルオブフラワー!2着は4番人気サクシードカメンです!」
サークル宰相はうおおぉ!と雄叫びを上げる。
一方惜しくも2着に敗れたサクシードさんはうなだれているかと思ったが、笑顔で拍手を送っていた。
それは最後まで頑張ったサクシードカメンに送ったものなのか?それともライバルの勝利を称えたものなのかは分からないが、清々しい表情をしていた。
その後馬達がスタンドの方へ帰って来ると、観客から割れんばかりサークルコールが沸き起こる!
「「「サークル!サークルっ!」」」
そのコールに国王陛下も正気をを取り戻し、優勝セレモニーが行われた。サークル宰相には金貨10000枚と領土の授与。あと薔薇勲章だがサークル宰相は以前この国に疫病が蔓延した際に特効薬を作り、既に受け取っていたので2着のサクシード子爵に送られた。
「シュンはんお疲れさん。えろぅ盛り上がりましたなぁ」
露店を出していたマイネル商会のブリッジさんが労いの言葉をかけてくれた
「ありがとうございます。ブリッジさんも大分お疲れのご様子ですが大丈夫ですか?」
「いやぁ疲れた疲れた!アホみたいに鳥から売れましたもん。5キロ位の痩せたんちゃうか?けど良い疲れや!ホンマにシュンはんは面白い事ばっかり思いつく。驚きの連続や。」
「いやぁ、そんな事は。。。」
と少し小恥ずかしくなり謙遜していると
「おい!競馬楽しすぎないかっ?」
「これ毎日やってくれないかな?」
「一番人気とは言え3倍だ!よしっ!呑みに行くぞ!今日は俺の奢りだ!」
「「「ウェーイ!」」」
と楽しそうな集団とすれ違う
な、せやろ?と微笑みかけるブリッジさん。
横のピッパちゃんやジャンヌも一様に頷く。
だとしたら本当に良かった。何より自分自身、もう二度と見れないだろう競馬を堪能出来た事に国王陛下を始め、開催に伴い協力してくれた全ての人に感謝した。
そんな事を考えながらスタッフと後片付けをしていると、サークル宰相とサクシードさんが何やら話しているので少し聞き耳を立てていると
「サークル宰相。改めましてこの度はおめでとうございました。」
「うむ、で話とは?」
「はい、もしよろしければ、私のサクシードカメンと、宰相のサークルオブフラワーを交配しては頂けないでしょうか?」
「それは私も考えていた事だ。良い馬と良い馬を種付けすることによってさらに良い馬を目指すのだな?良いだろう。細かい話は後ほど」
「はっ!ありがとうございます」
この二人!競馬の本質をもう既に熟知しているとは。。。
こうしちゃいられねぇ!
足早に後片付けをし、ピッパちゃん達と共に久しぶりのパール街に帰宅した。
長らく競馬開催にお付き合い下さりありがとうございます。如何でしたでしょうか?なかなか競馬の面白さを文字で表現するのは難しいものですね。。。
ちなみに競馬では数多くの名勝負が繰り広げられています。私が1番胸が躍ったレースは1997年の天皇賞春。自分の推しのサクラローレルは2着に敗れるですが、それでも電光掲示板にレコードと映し出された瞬間は鳥肌ものでした。
ちなみにスケベ太郎をレース中にも関わらずコメディに書いてしまいました。すいません。
余談ですが馬心拍数は落ち着いている時で35/分位なのですが、レース中は220/分位まで跳ね上がります。正に命を燃やして走っていると思います。
そんな中「ねぇちゃんえぇ尻してまんなぁ」なんて事は考えいないと思います(笑)ただ闘争心からかレース中横の馬を噛みつく事は稀にあります。シンコウウインディ。学生時代レース見てたら「あっ!噛んだ」って位、最後の直線でガブチョでしたねー。




