おのおのがた、討ち入りにごさる
カジノとビールはものすごい勢いで王都中に知れ渡った。
カジノに関してはまだ店舗も少なく限度があるが毎日朝から長蛇の列が出来ている。
ちなみにビールはとどまることを知らない。とりあえず王都中全ての酒場から仕入れの依頼が来ている
しかし生産数にも限りがあり需要に対して供給が追いつかず、十倍以上で取引されていると耳にした。
この世界にも転売ヤーいるんですね!びっくり!ちなみに自分はどちらかというと転売ヤーは賛成派でした。金さえ積めばほぼ確実にライブに参加できるシステムはあっても良いと思う。まぁ法律で規制されたんで過去系ですよ。転売駄目絶対!
ちなみにブリッジさんの話だと、シェリレーヌ侯爵はお酒と賭博場の収益は90%以上なくなっているらしく、彼と繋がりがあったビッグレッド商会は四苦八苦しているらしい。
自分達は何と数週間でブリッジさんから借りたお金の返済が終わり、ここからは真っ黒クロスケです!勝ったな!ガハハ!
という具合で完全にシェリレーヌ侯爵及びキッツ君の実家に見事ざまぁが出来ているのだが、こういうのには『お決まり』がある。
そろそろその『お決まり』が始まるかなぁとなんて考えていると自警団が街の中央広間で暴れている四人組がいるというので、おっ始まったか!?と、カチューシャさんと向かおうとすると、ピッパちゃんも行きたいというので、なにかあった時にすぐに逃げれる様にジャンヌと一緒なら、と許可を出して3人で暴れている四人組がいるという中央広間に向かった
「シュン男爵はまだですかぁー?早く出てこないと暴れますよ~?」
「オグリス、こんな小さい街どうでもいいから早く王都行こうぜ」
「ぷんぷ、ちゃんとしおり通り行動しないとオグリスさんキレるよ」
「ままこー。早く噂の鳥から食べたいー。」
想像してたのとはちょっと違う、チンピラ、いやドロンジョ一派みたいな四人組が広間で何やら騒いでいた。
おそらくはオグリスだの、ままこと呼ばれているのが最年長みたくリーダーか?
それにしてはメガネかけてひょろひょろで弱そうだ。
「はいはい、私がシュンです。あなた達は?」
自分は手短に自己紹介をし尋ねると
「自分達が何者かなんてそんな事はどーでもいいんですよー。ウチラはあのシェリレーヌ侯爵様から男爵風情が調子乗ってるから痛い目に合わせてこいって言われてるんで、シバいていいっすか?」
弱そうな割にオラついている、オグリスと呼ばれているおじさん。多分侯爵家の後ろ盾で気が強くなっているのだろう。
こっちも少し睨みをきかせてやるかと睨みつけると、オグリスは怯んだ。よっわ
「オグリス、こいつ俺の弟ほどじゃないけどマヌケそうだな?男爵が侯爵に勝てる訳ないでしょ。そんな事も分からないのかな?」
「オグリスさんっ!負けないで!もっと何か言ってやりましょうよっ!」
「お、おう。えーと。オグリスわ」
「「「ギャハハハハッ!」」」
内輪ネタで盛り上がるのやめてもらっていいですかー?
この頭の弱い四人組を見ているとさっきまでそこそこ緊張感を持っていたのが馬鹿みたいに思えてきた。
「用がないなら帰ってもらっていいですかー?」
「いや、こっちも既に報酬もらってるんで手ぶらで帰る訳にはいかないんですよ。侯爵様も生死は問わないって言ってたんで本気でやっちゃいますよ?」
と言って四人組は剣を抜いた。
するとザキオさんが自慢の槍を構えて
「抜いたな?それじゃあこっちも本気でやらせてもらうぜ?」
それに習って自警団も剣を抜く。
「主、私はシェリレーヌの所に行って因縁に決着をつけたいのですが、向かってもよろしいですか?」
「お願いします。あっちが先に吹っ掛けてきた訳ですから、問題ないでしょう。どうするかはカチューシャさんにお任せします。」
「分かりました。ピッパさん。ジャンヌをお借りしてもよろしいですか?」
「はい!ジャンヌ、カチューシャさんの言うことを聞いてシェリレーヌ領まで乗せていってあげて?」
ぶるるっと返事をするジャンヌ。
そしてカチューシャはジャンヌに跨り颯爽とシェリレーヌ領に向かった。
「そろそろ用事は済みましたか?みんなも早く鳥から食べたいみたいなんでササッと終わらせちゃいますよ」
さて、と
ザキオさん、自警団の皆さん懲らしめてやってください
ダカタッダカタッ!
全力疾走のジャンヌに跨りシェリレーヌ領に向う。
街のみんなは私が行った後大丈夫だろうか?あの四人組はそれほど強そうには見えなかったし、ザキオさんも吃ってなかったので大丈夫だとは思うが心配ではある。
ちなみにこのジャンヌという馬は何者なんだろうか?私が心配してるのをよそに、先ほどから足場が悪かろうが、坂道だろうがペースを落とすこともなく凄い速さで走っていて、自分が風にでもなった気持ちにさせられる。
帰ってみんなが無事だったら少し剣の修行を休んで乗馬の練習でもピッパさんにお願いしようか?
そんな事を考えているとシェリレーヌ領が見えてくる。
門番が手を大きく振って静止させようとするが、私とジャンヌはお構い無しに城門を突破する!
この馬はどこまでもっ!肝まで据わってると来たものだ。この馬と一緒ならば千人の敵にも渡り合える気がする。正に一騎当千である。
城内に入りシェリレーヌの騎士団もいたが、それらも蹴散らかしシェリレーヌ領主邸に辿り着く。
ここまでのジャンヌの活躍も労い、首をトントンと愛撫したあと下馬し、領主邸に乗り込む
もう大分日も暮れ屋敷の中は薄暗く、それでいて思っていた以上に殺風景だった。いや、絵画や骨董品が置いてあったのだろう、あちらこちら不自然に空白になっている。資金源が失われ相当苦しいのだろう。
今はそんな事をどうでもいいか。
一階の全ての部屋を調べたが誰もおらず、二階の奥の部屋の扉を開けると、部屋に大きなベッドがありガウンを着たシェリレーヌと裸の女性が今正にことを構えるつもりだったのだろう。突然入ってきた私を見て女性は悲鳴を上げて逃げていった。
本当にこんな時までこの男はどこまでもクズなのだろうか
「なんだ貴様は?ん、よく見ると見覚えが。。。あ!貴様は手籠にしようとしたらブリッジの奴が横から掻っ攫って行った女だなっ!シュンとやらの所に行ったのだろう!忌々しい!」
「そうです。あなたに騙され没落したヴィフォルテ騎士爵の次女カチューシャです。」
「貴様の事なんてどうでもいいわ!シュンのせいでワシが得ていた酒や賭場の利益がなくなってしまったではないかっ!どうしてくれるっ!」
「はぁ。あなたは何も理解していないのですね。我が主は私の為にあなたをここまで追い詰めたのです。そして今私はここにいる。その意味がわかりませんか?」
と言って刀の柄に手をやる
「ひぃぃぃ!わ、分かった!お前がこれからシュンの元に戻り首を持ってきたら、何でも言う事を叶えてやる!金か?それとも地位か?爵位ならワシが言えばなんとでもなる!」
「その様なものはいりません。私は父の無念を晴らすのみ。」
鞘から刀を抜きシェリレーヌを一刀両断する!
着ていたガウンは斬られ素っ裸になり崩れ落ち失禁するシェリレーヌ
「我が主から頂いたこの刀。貴様の様な薄汚い人間の血で汚す訳にはいきません。ですがもし、このあとも我が主、主の街の者に害を出すのであれば貴様の首は繋がっていないものと思え」
と言い残しその場を後にするカチューシャ。
シェリレーヌ領を出て、これで良かったのだろうか?父の無念は晴らせたと言えるのだろうか?など自問自答していると道すがら
「やべーってあの街の連中。イカれてやがる」
「オグリスさんちょっとカッコ悪いですよ」
「いやいや無理無理!生きてるだけで偉いから!」
「ままこー鳥から食べてないー」
「「「今それっ?」」」
とパール街にちょっかいをかけてきた四人組がボロボロになりながらすれ違った。
夜も開け日が昇りジャンヌと共にパール街に着くと門の入口で笑顔で手を振り迎えてくれる街のみんな
お父さん。正直無念を晴らせてはないかも知れません。ですが、私はこの街の素敵なみんなに囲まれて今とても幸せです。
私も笑顔で大きく手を振り応えるのだった




