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ビール。それは黄金の輝き

さてビール作りが始まった。


まず大き目の工房を作り


お酒は発酵させる事が必至なのでどうしても時間がかかる。

失敗してはまた新しく作っていたのではサークル宰相と面会する三ヶ月後に間に合わなくなるので数多くのタンクを用意し、温度やホップの量等微妙に違うものを幾つも作る事にした。


大麦からゴミやホコリを取り水に着け発芽させた後に、風魔法で良く乾燥させそれを砕き米等と混ぜ適温で寝かせた後、ろ過しホップを加えて煮込む


そこから酵母を加えて冷し一週間程寝かし出来上がり


と言った具合である。


一つ一つの作業はとても大変なものだったが、同じ法被に身を包みみんな一生懸命頑張ってくれた。


10日後にテーブルには5つの試作品が出来上がる。


「なんだこれ!シュワシュワして凄く美味しい!」

「この苦味が最高だな!」

「染みる〜」


などとみんな初めてのビールに感動していた。


「···違う」


違うこれじゃない。最初のやつは色が淀んでキレイな感じじゃないし、2つ目のは苦いだけ。3つ目は惜しいが喉越しが足りない。他のは論外。


全部作り直しと言うと、皆が不思議がっていたが、もっと美味しいものが作れるはずと言い聞かせて、また微妙に温度や分量を変え新しいものを作り直す。


「シュン、どうだいお酒作りは?」


工房に宿屋のエルラさんが訪れてみんなに差し入れをしてくれた


「ありがとうございます。いやぁなかなかこれといったものが作れなくって。。。。あ!そうだ!エルラさんに頼みたい事があったんです!」


「なんだい藪から棒に。で、なんだい頼みたい事ってなんだい?」


この世界の料理は基本煮ると焼くという料理しか見にしたことがない。ビールといえばやっぱり揚げ物!


「という感じでエルラさんには『鳥の唐揚げ』を作ってみてもらいたいのですが」


と揚げ物の作り方を説明する


「面白そうだねぇ。任せな!今帰って作ってみるからちょっと待ってな!」


と言ってエルラさんは工房を後にする





ちょうどそのタイミングで試作品がまた5杯出来上がる


みんながドキドキしながら見つめる中、試飲を繰り返し最後の一杯に確かな感触を掴む


「···これだ」


おおっ!と歓声が沸き起こり最後の一杯をみんなで飲む


「ぷはー旨い!」

「見ろよこの色!まるで黄金の輝き!寝かせる時間を少し長くしたのが良かったんだな!」

「ちげぇって!ろ過を徹底したのが良かったんだよ!」


「「「「なにより旨い!」」」」


ここ一ヶ月の成果が実を結び大喜びしながらビールを飲んでいると


「お待たせ!おっなんだいビール出来たのかい?それよりもシュン、これとんでもないよ?」


と言ってエルラさんがお皿一杯の鳥の唐揚げを差し出す。


「みんなエルラさんが料理持って来てくれたんで食べましょう!」


というと

「エルラの料理はあんまり美味しくないからなぁ」

「まぁ腹減ってるし食べるか」

「ビール飲んでたらなんか食べたくなってたんだよねー」

「けど良い匂いはするぞ?」

なんて言い始めた。失礼な奴らだ。


「いいから黙ってお食べ!きっとびっくりするよ!」


とエルラさんが言いみんな恐る恐る鳥の唐揚げを食べる



「「「「うめぇー!」」」」


「なんだこりゃ!旨い!旨すぎる!」

「おい!ビール!ビール持って来い!これビールに合うぞ!」

「生きてて良かった···」


と大絶賛の嵐である。

そうだろう。そうだろう。ビールと言えば鳥から。これぞ王道。


「シュン、この鳥の唐揚げ絶対に売れるよ!簡単に作れるし、なにより美味しい!」


とエルラさんも太鼓判を押してくれた。


ビールが完成した達成感と鳥からの悪魔的美味しさによってお酒も進みプチ宴会みたいになっていたのだが、何やら楽しい事になっていると聞きつけた街の人達が次々と集まり始めた。


「凄い盛り上がってますね〜」

「お疲れ様です!みんな法被着てくれてるんですね!似合ってます!それでビールはできあがったんですか?」

「シュン男爵お疲れ様です。良い匂いがしますがこれは一体なんですか?」


とミルフィアさんとピッパちゃんにキッツ君、パール街事務局の面々が訪れた。


「うん!何とかみんなのお陰で完成したよ!法被もねピッパちゃんが素敵に作ってくれたから皆最後まで頑張れたよ!ありがとう!キッツ君それ鳥の唐揚げって食べ物。みんな食べてみな。飛ぶぞ?鳥だけに」


キッツ君は一瞬「何いってんだこいつ」って顔をしたが、良い匂いのするそれを食べた瞬間満面の笑みを浮かべ「なにこれ、ヤバぁ」とか言い出した


あの賢いキッツ君がなんて頭の悪い感想を言うんだろう。てか笑った!見間違いじゃないよね?と他の二人を見ると本当に珍しいものを見た様な目で口を覆って驚いていた。


「···どうしましたか?」


みんなに見られて少し恥ずかしそうにした後、無表情で聞いてきた


「いや、笑っていたからそんなに美味しかったのかなって」


「はい、この鳥の唐揚げというものはとても美味しいです」


いつもの調子に戻るキッツ君。いずれにせよ食レポは苦手のようだ


だがこの二人には刺さった。クリティカルヒット!


「「キッツ君が笑顔になる、鳥の唐揚げ。。。」」


二人はごくりと唾を飲み、鳥の唐揚げが気になっているご様子


「二人も食べて食べて!あとミルフィアはビールもどうぞ!」


「私もビール飲みたいです!」


「だーめ。お酒は20歳を過ぎてから!」


というとピッパちゃんはむぅと頬を膨らませる

そんな様子を見たエルラさんが


「なんだいシュンはイジワルだねぇ。しょうがない、唐揚げのおかわり作りに行くついでに冷えたオレンジジュース持ってきてあげるよ!いいかい?あんたら3人はピッパのオレンジジュースが来るまでお預けだよ。なに、唐揚げは揚げたてが一番美味しかったから楽しみに待ってな」


はーいと返事をし数分後揚げたての唐揚げとミルフィアさんと自分はビール、ピッパちゃんとキッツ君はオレンジジュースが渡った。


すると自然と周りのみんなも待ってくれていて自分が何か言うのを待ってくれている


少し緊張するがコホンと咳払いをしたあと


「皆さんビール作り本当にお疲れ様でした。自分の無理強いにもついて来て下さり感謝の念に耐えません。皆さんのお陰で最高のビールが出来たと思います!今宵だけは仇討ちの置いといてビールと鳥からを堪能しましょう!乾杯っ!」


「「「「乾杯っ!」」」」


一斉に唐揚げを頬張りビールで流し込む!


「シュンさん〜ビール美味しいです〜。シュワシュワです〜ぷは~」


「唐揚げ凄く美味しい!私今まで食べたものの中で一番好きかも」


「···モグモグ(コクリ)」


もうキッツ君は話すことを辞め一心不乱に唐揚げを食べピッパちゃんに頷き同意する。


「おいおい!うううう旨そうな匂いするから来てみれば、たたたた楽しそうな事してるじゃねぇか!」


「お疲れ様です我が主。この盛り上がり様は?ひょっとしてお酒作り完了されたのですか?」


訓練を終えたザキオさんやカチューシャさん自警団のみんなも集まり始めた。


「訓練お疲れ様でした!ビール出来上がりましたよー!もし良かったらみんなも出来上がりホヤホヤのビールとエルラさんお手製の唐揚げを頂いて下さい!」


遠慮なく唐揚げとビールと流し込む自警団。

訓練後だからかあまりの美味しさに大騒ぎ。泣き出す人までいた。カチューシャさんも元貴族とあってか、お上品に食べてはいるものの、感動で目を輝かせている。



工房には大勢が集まりほほ街の住民全員がいているような状態で、謝肉祭の時のようなお祭りの雰囲気になっていた。



次々とおかわりを作るエルラさん。

法被を着たみんなは誇らしげに美味しい美味しいとビールを呑んでくれている姿を見ている。

本当にお疲れ様でした。今までついて来て下さり感謝です。


「「ビールと鳥からおかわり!」」


そこからは飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ


気付いたら完成したビールタンクは空になっていた。ま、いっか。まだ2ヶ月位あるしサークル宰相に提出するビールは明日からまた作るか。ついでに失敗作も飲んじゃうかっ!


今日はこの完成披露会を全力で楽しむとしよう!


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