アサヒスープァドゥラーイ
「乗りかかった船だ。シュンがサークル宰相に会えるよう私の方から働き掛けよう。だが、サークル宰相と会って何をするのだ?」
「これからパール街に帰って新しいお酒の開発に着手しようと考えているんですけど、三ヶ月後に出来た新しいお酒をサークル宰相に飲んで頂いて美味しければ王都での販売を酒造ギルトを通さず許可していただきたいんですが」
「なるほど、酒造ギルトの会長がシェリレーヌだからか。ただ酒作りは難しいぞ?」
「ええ。ちなみにシェリレーヌ侯爵が手掛けているお酒ってありますか?」
「ああ、あるがこの前サークル宰相から頂いた一級品だぞ?大事に飲めよ?」
と言ってサクシードさんは使用人にグラス一杯のお酒を持ってこさせた。
深い紫色でおそらくはワインだと思われるものを口に運び試飲してみる。
うわっ!不味っ!
ぶどうを使っているんだろうけど、酸味だけが残っていて深みがない。これが一級品なのっ!?
「どうだ?美味いだろう?」
「自分それほどお酒に詳しいわけではないんですが。。。ちなみに王都に出回っているお酒はこの種類だけですか?」
「ああ、他の酒があるのか?だったら自分も飲んでみたいものだが。」
「分かりました。それとは全く違うものにはなるんですが、大人の皆さんが楽しめるお酒を作ってご覧いたします。」
「おお!何やら自信ありげだな!分かった。首を長くして待つとしよう。カジノの件は任してくれ。マイネル商会と打ち合わせしながら土地を確保した後建設していく。」
「ありがとうございます!突然の訪問すいませんでした」
と言いサクシード邸を後にする。
街に出ると未だ黒服達が自分達の捜索をしているので中が見えない馬車を用意しパール街に向かった。
「今回は色々と大変でしたね〜」
馬車は王都を出て少し気が抜けたのかいつもの口調でミルフィアさんが話しかけてくる
「ええ。本当に今回は危ない橋を渡らせてしまった申し訳なかったです。」
「いえいえ〜私もピッパちゃんのデートを見ていて羨ましかったので〜こんな形でも楽しかったですよ~」
「ん?ミルフィアさんデートには来ていませんでしたよね?」
「あっ!すいません〜間違えました〜『デートに行って』でした~」
と訂正してくる。変なミルフィアさん
「ちなみに〜シュンさんはどんなお酒を作るんですか〜」
露骨に話を逸らせてくるミルフィアさん
「パール街は麦の生産は豊富なんで麦を使ったお酒を作ろうかと思ってます」
「麦のお酒ですか〜?聞いたことありませんね〜」
「ふっふっふっ!絶対美味しいですよ!」
「それは楽しみです〜」
などとやり取りをしていると馬車はパール街にたどり着く
さてやらなくてはいけない事が山積みだ!
まずは職人さん達を集めての打ち合わせ。カジノのプレイ台はそんなに台数は必要ないので自分が作るが、カジノ特有のきらびやかな店内を再現するために装飾品やディーラーの服装を作らなくてはならない。
うちの職人さん達はもうこの国随一と自負しているので説明すればやってくれると思う。
色んな面で考えてもカジノはさほど問題ではない。何せあの優秀なサクシードさんが乗り気になってくれたのだ。マイネル商会にも話はつけてきたし、約束された勝利である。
問題はお酒作り
前世ではお酒自体好きで良く呑んでいたし、興味があったので作り方など調べた事もあったけど、もちろん作ったことはない。そもそも違法でしたっけ?
麦は多種多様の種類を栽培していてパール街の特産品
と言ってもよい。あとはホップだがこれも王都に行くときの森林で見た気がする。
初めての試みということもあり、1人では出来そうもないので住民を集めて説明会を行うことにした。
「という感じでこれからパール街で新しいお酒『ビール』を製造していきたいと思います!」
住民に大まかな製造方法を説明し終えると、馬やトランプなど色んな改革に成功していたこともあって多くの人が参加してくれることとなった。
「多くの皆さんが参加して頂きありがとうございます!自分も初めての試みなので失敗することもあるかと思いますが、きっと美味しいお酒が出来上がりこの国全土で愛されるものになると思いますので頑張って行きましょう!」
と言ってピッパちゃん達に事前に作っておいて貰ったダンダラ模様の法被を参加者全員に配る。
「これを着て新しいお酒作っていくのかっ!」
「凄い格好いいな!」
「みんなで同じ物を着て作業するって思うとやる気が出てくるな!」
と参加してくれた人達は喜んでくれた。
頑張って最高のビールを作っていこう!




