違和感
「すいませんー。。。今月の収支報告書くれますかー。。。」
デートの後あんな事があって思考が止まってしまい王都に置いてけぼりを食らったのだが、帰ってから何やら様子がおかしい。
ピッパちゃんなら話は分かる。僕もどの面下げて帰れば良いのかと思ったがピッパちゃん自体はあんな事がなかったかの様に普段通り接してくれている。
それはそれでどうなの?とは思うが自分から
あれはどういう事だったの?なんて言う勇気も無いので、彼女のその雰囲気に合せて普段通り接している。
では何の様子がおかしいの?というとミルフィアさんがものすごい冷たい。まるでミジンコでも見るような目で見下され、何を言っても無言である。
ここは職場で唯一の男であるキッツ君だけが頼りである
「キッツ君、僕なんかしたのかな?」
「それは。。。僕も男なんでシュン男爵の気持ちも分からなくはないのですが、流石に擁護できません。自分の胸に手を当てて考えて下さい。」
「え、マジで?そんなにかぁ。。。」
胸に手を当てて考えて見たが思い当たる節がない。
うーん、、、あ、そうだ!
「そういえば、みんなにお土産買ってきたんだ!」
と言って話を逸らすべく、ピッパちゃんと一緒に買ってきたティーカップを出す。
「はい、この緑色のがキッツ君の!」
と言ってお揃いで色違いのティーカップをキッツ君に渡す。
「ありがとうございます。大事にします。」
相変わらず無表情だったが、最近は彼の感情が少し分かるようになり、嬉しい事があった時は瞬きの回数が増えるクセがある。
そして今めっちゃ瞬きしてくれている。良かった。
「で、これがミルフィアさんのなんだけど。。。」
と言って恐る恐るミルフィアさんに紫色のティーカップを渡す
「。。。ありがとうございます」
こちらは大分付き合い長くなったが全く感情が分からない
「では〜お茶入れてきますね〜」
あ、いつもの雰囲気に戻ってきた。よ、良かった。
ミルフィアさんが入れてくれたお茶を飲みつつ業務に戻り収支報告書に目を通すといつも通りしっかりと黒字で利益を上げているのだが、若干の違和感を感じる
「なんだろう、黒字なんだけどいつもより少し少ないというか、なんかおかしいな?」
するとキッツ君が
「それは多分トランプの売り上げが落ちているせいかと思います」
「あ、そうなんだ。流石にブームも過ぎちゃったかな?」
「いえ、そうではなく。。。」
とキッツ君が俯き暗い表情を浮かべる
「ん?どうしたの?」
「今王都ではトランプの偽物が出回っていて、それを販売しているのがウチの実家らしいのです。。。」
「そう、なんだ。。。」
だとしたら由々しき事態である。ウチのトランプは王様直々に専売を許可されていて王家の紋章をプリントすることを許されている。
それの偽物というと王家に泥を塗る行為である。
「うーんどうしたものか。。。」
と頭を悩ませているとミルフィアが
「これは噂の話なんですが〜キッツ君の実家のビッグレッド商会はシェリレーヌ侯爵家と密接な繋がりがあって〜トランプもシェリレーヌ侯爵の指示らしいです〜」
シェリレーヌ侯爵かぁ、あまり良い噂は聞かないけど、ウチなんか恨まれる様な事したかな?と思考を巡らせていると後ろで控えながら聞いていたカチューシャさんが眉をひそめる。
「ん?カチューシャさん何かあった?」
「いえ、実は。。。」
と言って過去にあったシェリレーヌ侯爵との経緯を説明する(39話カチューシャ視点参照)
「そんな事が。。。」
「申し訳ありません。。。」
「いや、カチューシャさんは何も悪くないよ。それよりも」
許せないのはシェリレーヌ侯爵である。前世でもいないよ、そんなクズ。貴族社会では良くあることかも知れないがそんな事は知ったことではない。
カチューシャさんが、こんな悲しい思いをしたのだ。絶対に許さない。報復して然るべきなのだが、そうなるとシェリレーヌ侯爵と密接な繋がりがあるビッグレッド商会、キッツ君の実家にも牙を向ける事になる。
悩みながらキッツ君の方を見ると
「構いません。父も断罪されて然るべきですし、僕自身実家に何も未練もありません。それよりも今は僕らの家族であるカチューシャさんの意志を尊重すべきです。」
彼の口から自分らを家族と言ってくれて凄い嬉しい。そんなキッツ君の頭を撫で「ありがとう」と言った後、カチューシャさんの方を向き
「それでカチューシャさんはどうしたい?」
と聞くと、俯きながらなんとか声を振り絞り
「私は、、、父の無念を、、、晴らしたいです」
と涙ながらに訴えた。
そうと決まればやるべき事は一つ。
「パール街はこれよりシェリレーヌ侯爵、ビッグレッド商会に仇討ちをします!みんなそれでいいかな?」
と言うと一同に頷く。
カチューシャさんの実家ヴィフォルテ騎士爵の仇討ちを決意する。これより我ら鬼となる!




