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カチューシャ視点

カンッ!キンッ!カンッ!


私はヴィフォルテ騎士爵と言う貴族の次女として生まれ、今日も剣の稽古励んでいた。

父のヴィフォルテは剣一筋で、戦で武勲を上げ騎士爵を賜った。曲がった事が大嫌いで、こと剣に関しては厳しく自分が女だろうと容赦はしなかったが、皆から慕われていて、何より強い父が自分は誇らしく大好きだった。


剣一筋で領地の経営はあまり上手では無く貴族といえど裕福な生活をしていた訳では無いが、私と同じく金色の髪で優しい母と、父と同じく銀髪で逞しい兄、そして母の様に美しく妹思いの姉に囲まれて幸せな日々を過ごしていた。


私が15歳になった頃稽古で初めて兄から一本を取るまでに私の剣は上達した。兄も

「くそっ!ついにこの日がきたか!」

と悔しがっていたが、やっぱりカチューシャは俺よりも才能がある!と頭を撫でて褒めてくれた。

父は

「カチューシャ、剣は誰かを守る為にある。決して憎しみで刃をむけてはならない。その事を肝に銘じこれからも鍛錬に勤しむように」

とありがたい言葉を頂いた。不器用な父なりに褒めてくれたのだろう


そして18歳の成人になった頃、母に呼び出され貴族令嬢としての嗜みを教えられた。私の様な手にタコが出来ている女には必要ないと拒否してみたが、あなたが幸せになるためには必要何と言って色々と教え込まれた。がダンスや礼儀作法など壊滅的で私はすぐに諦めた。

そしてこの国では有名なザキオと言うSランク冒険者がいて、彼はパーティを組み、生きては帰れないと言われている魔境の森でのデスアナコンダ討伐したと言う話は英雄譚として語られ、それに憧れて冒険者の道を志す事に決める。




そんなある日家にシェリレーヌ侯爵が訪れた。

ここ最近の作物の不作により我が家はお金が無くシェリレーヌ侯爵にお金を借りていたようだが、その担保として母を差し出せと言い出した。


以前より好みの女を見つけては無茶な金利で金を貸し返せなくなったところで女を自分の側室に入れ手籠めにする。と言う噂は聞いていたのだが、そんなクズが本当にいようとは。。。


それに対して父は大激怒。我を忘れてシェリレーヌ侯爵に刃を向けてしまったのだ。

兄と私が必死になって止めたので刃傷沙汰にはならなかったのだが

貴族社会では階級が絶対。騎士爵ではいくらこちらに正義があろうと侯爵に刃を向けた時点で有罪なのである。

父は極刑にこそならなかったものの爵位は剥奪


「すまなかった。あれほど憎しみで刃を向けていけないとお前達にも言い聞かせていたのに。。。どうかカチューシャお前だけは父のようにならないでくれ。。。本当にすまない」

と言い残し、シェリレーヌ侯爵の命令で兄と二人、魔境の森に遣わされた。


そして父と兄がいなくなった次の日にはシェリレーヌ侯爵の使いが我が家に訪れ母と姉を連れ去った。


あんなに幸せだった生活があっという間に音もなく崩れ去った。

父の無念を晴らすため私1人でもシェリレーヌ侯爵家に行き一矢報いてやろう。と思ってみたが父の残した一言が忘れられず、

「父は私にどうしろというの?剣では何も出来ないではないか。。。」

と、何も出来ずに塞ぎ込んでしまった。


それから数日後シェリレーヌ侯爵本人が私のもとに現れ、お前の母と姉が使い物にならなくなったから次はお前だと言って連れ出そうする。


無気力のまま、父の無念を晴らすために切り捨てやろうかと剣を抜こうとすると


「ちょいちょいお待ちを。それはウチの奴隷やさかいいくら侯爵様といえどもご勘弁いただけますやろか?」

と1人の商人が突然現れ、飄々とそんな事をいう。

確か以前父と取引していた業界最大手のマイネル商会のブリッジという名前だったか。その男は魔法を唱え私の右手の甲に刻印が刻まれた。


「商人風情が!私を誰だと心得る!?シェリレーヌ侯爵だぞ!」


「そんな事は言われなくても知ってるがな。うちもお得意様に奴隷連れてこい言われてましてなぁ。もうウチの奴隷やさかいご勘弁を。」


「誰だ!その得意先とやらは!」


「シュン新男爵や」


「はっ?男爵、笑わせるな。わかった。そいつの十倍の金を出そう。それでいいだろう。」


「はぁ~これだから貴族は。いくら積まれてもお譲りすることは出来まへん。商人は信用が第一やさかい。あとあんさんよりもシュンはんの方がよっぽど魅力的やさかいなぁ。ではこれにて失礼します。」


と言って私の手を引きブリッジが私はを連れ出す


「ちっマイネル商会!そしてシュン男爵覚えとけ!」


などと捨て台詞を残しシェリレーヌ侯爵は去って行った。


「ありがとうございます。ですがいいのですか?」


「何がや?そもそも奴隷したんよ?恨まれこそするが感謝される覚えはないなぁ」


「いえ、侯爵相手に。。。」


「あんな小者気にしたって始まらんし、ワイの見立てでは近いうちに没落しよるさかい。なんせワイとシュンはんにキバ向けるんやろ?終わりや。」


「ちなみにシュン男爵というのは?そんなに手練れなのですか?」


「わっはっは!シュンはんが手練れっ。それとは正反対の人間や。せやけどおもろい人や、シュンはんとシェリレーヌの船どちらに乗ると言ったら商人は全員シュンはんちゃうか?」


はぁ。と私はよくわからず返事をする。


「まぁ行ってのお楽しみや!きっと悪いようにはされへん!」

と言い、続けて

「あとな、お父さんホンマ難儀やったなぁ。ワシがお金貸しとけばあんなんにはならんかったのに。。。ホンマすまん。」


と言い頭を下げる。

私はまだ色々と割り切る事が出来ずにいたので頷く事ができなかった。


その後彼の引く馬車というものに乗せられシュン男爵のパール街に向かう。

その馬車の中には奴隷達が乗せられていて私と同じくこの世界に失望したような人間ばかりだった。

シェリレーヌの毒牙にはかからなかったものの、私も奴隷になったのだと痛感させられた。

奴隷になる前は自分で命を断つ事もできたのだが、奴隷になると契約書の呪いによりそれすらも出来ない。主人の言う事を聞くしか出来ない家畜となるのだ。


正直シェリレーヌに連れられていったほうがまだ良かったのかもしれない。などとこれから待つ地獄に失望していた。


パール街に着き馬車から降りるとそこにはブリッジが言ってたようなとうてい手練れとは思えない貴族とは正反対のお人好しそうな人がいた。


こんな成りでも所詮は貴族。シェリレーヌと変わらない。きっと母と同じ様に弄ばれ捨てられるのだろうの悲観していたが

次の瞬間、彼は奴隷の契約書を燃やし捨てた。


何が起こったのと自分の右手の甲を見るとさっきまであったら刻印が光を放ち消える。


そして

「これで皆さんは自由の身です。故郷に帰るも良しだし、家族のもとに帰るも良しだし自由でしてもらって構いません。でももし、やることがないとか行く宛がなければ住居も用意出来てますし、この街で生活してみませんか?」


などと言い始めた。その行為にさっきまでの悲観感が薄れ感謝する奴隷達。それを温かい眼差しで見守る男爵。


ブリッジが言っていたがこんな貴族を、いやこんなお人好しを私は知らない。と彼に強い興味を持った。


その後自警団の採用試験が行われるのだったが、そこで驚くべき出会いをする。

試験官があの有名なSランク冒険者ザキオさんだった。

彼との手合わせは久しぶりに心が踊った。あと一歩のとこで負けはしたがあの、憧れのザキオさんと手合わせできたのだ。これほど嬉しいものはない。


そしてそのザキオさんや業界最大手のマイネル商会の会長が慕っているシュン男爵に魅力的以上のカリスマ性を感じ


皮の剥けた手の豆を見つめながら

この人に仕える為に今まで修練してきた。と思える程になっていた。


お父さん。私の剣で守るべき人が見つかりました。

この身尽きるまで彼の剣でい続けよう。心に誓うのだった

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