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キッツ君視点

僕の家はこの国の中堅クラスの商会。

父はいつも商売の事しか頭になく、母は高価な装飾品を集め着飾る事しか頭になかった。

兄は父と良く似ていて父の元で商売の勉強をし、人付き合いが得意な人だった。


一方自分は人付き合いが苦手で余り人と喋らず、そのせいか家では余り家族に相手にさせていなかった

そんな中で僕は1人積み木で遊んでいた。積み木は置く形によって姿を変えそれがとても楽しくて色んな形に組み立てたりと1人夢中になって遊んでいた。


そんなある日、いつまでそんな物で遊んでいるんだと父が激怒し、積み木は取り上げられその代わりに勉強の本を渡されこれでもやっておけと言われた。


それはあまり面白い物ではなかったがやらないと父に怒られるし、それをやっていると嫌な事は忘れるので無心になって毎日毎日その本の問題を解いていった。


すると父が「七歳でこの問題を解くとはやはり俺の子供だ!」と言って褒めてくれた。

あまり嬉しくなかったけど怒られるよりはマシなので父の言われた通り次々と渡される本の問題を解いていった。


そんなある日父がお前もついて来いと言い取引先の商会に連れて行かれた。

父は愛想笑いを浮かべながらヘコヘコと頭を下げている姿に嫌気がさし俯いていると、「おい!お前も頭を下げろ!」と言って頭を押さえ付けられ無理矢理頭を下げされされた。

帰り道では「なんでそんな事も出来んのだ。本当に情けない。」と失望され、二度と一緒に行動することがなくなった。

元々商売に興味はなかったし、今回の父の姿を見て僕には向いてないと痛感していたので別に悲しくはなかった。


そして勉強だけは出来るんだからと商会の経理の手伝いをさせられる様になった。

全然楽しくなかったけど父には怒られてたくなかったので渋々業務をこなしていった。

すると最初は社長の子供だといって優しくしてくれた大人の人達が次々と業務をこなしていく自分を見て


「なにあの子。何の表情も変えないでどんどん仕事進めちゃって。これじゃ自分達がいる意味ないじゃない。」


と相手にされなくなり、終いには辞めていった。


これには父は諦めの様な顔をし

「お前は何なんだ。そんなに俺を苦しめたいのか?もういい、これでもやっておけ」


といって『トランプ』なるものを渡してきた。

どう使うのか分からず、兄に聞くと面倒くさそうに大富豪のやり方を教えてくれた。


なにこれ!凄く面白い!


と一瞬のうちにトランプの虜となった。家では相手にされてないので自分なり必死にやってくれる人を探し毎日毎日大富豪にあけくれた。


そんなある日父が国王主催の大富豪大会があり賞金が破格だから出てこいと言われた

初めて父の命令に快く頷いた。


大会は今まで経験したことのないくらい心が踊った。何しろ王国の叡智と言われているサークル宰相が相手だ。

自分は今までかつて無い程頭を使い大会で優勝出来た


これで父も喜ぶだろうと賞金を持ち父の元へ行くと

「はぁ。。。宰相相手に勝ってどうする?お前は花を持たせてやるということを知らんのか。宰相と交流が出来れば大きな商いにつながったのに。もうお前はこの家を出て他所で人の機微を勉強してこい」


と賞金を持って他の貴族のもとに行きいつもの様に頭を下げていた。


僕はそれを見て絶望にも似た感情を抱いた。


その後マイネル商会のブリッジさんに連れられ家を後にする。

どちらに行かれるのですか?と聞くと

新しく男爵になったシュンはんが治めているパール街や。と言った。

シュン男爵といえばトランプを作った人だ。少し興味が湧いたが、結局この人も商売の為にトランプを作っただけで、きっと父と同じ嫌な大人だろう。と、もう大人を信用出来ずにいた。


街につきシュン男爵と挨拶をかわすと、父とは違い優しげな印象を受けた。けど結局前と同じ嫌な毎日が続くのだろうと思っていたら


突然算数ドリル勝負だ!と言ってきた。

結局勝負にはならない位あっさりと勝ってしまったのだが、その後も彼は仕事そっちのけで良く色んな勝負をふっかけてきた。大富豪もやったし、新しいトランプのゲーム『スピード』なんかも教えて貰いやった。シュン男爵自身も良い意味で大人気なく本気で勝負を挑んできた。たまに無理矢理連れて行かれるサウナ勝負はちょっと嫌だったけど、そんな毎日が僕にとって意外と楽しいものだった



そんなある日街に奴隷が連れて来られた。何でも人員が足りないということだ。


その後僕にとって信じられない事を耳にする。

シュン男爵が奴隷の契約書を燃やし捨て解放したというのだ。いつも利益第一と言っていた父のもとで生活していた自分にとって理解が出来ない行動だった。


そんなシュン男爵に僕は強い興味を持った。


そのままシュン男爵はオークを狩りに行くと言って彼が作った見たことの無い武器を次々と出してきた。

これには今までかつて無いほど興奮し、自分の作った閃光球を試して見たくなった


しかし昔父に閃光球を作って見せた時には

「そんなくだらない物を作っている暇があったら勉強しろ」

と切り捨てられていたので正直出すのが躊躇われた。


しかしこの人はそんな事を言うだろうか?

この人と過ごした日々を振り返るとそんな事を言われるなんて思わなかった。


勇気を出してシュン男爵にそれを見せると彼は子どもの様にはしゃぎ凄いと褒めてくれた。それが嬉しく狩りに参加させてくれと頼んだら、自分の身を案じ少し躊躇った後参加を許可してくれた。


狩り自体は本当に楽しいものだった。シュン男爵の後ろで馬に跨り凄い速度でオークに近づき閃光球を投げ混乱するオークに確かな手応えを感じ、その後自警団のみんなが次々とオークを倒していく。その光景に興奮し、自分も男なんだな。と自覚した。


狩りが終わり謝肉祭が行われ、僕は自分から勇気を出してシュン男爵にお礼をしにいった。


すると貴族とは思えない態度で彼も僕に感謝の言葉を言い、この街にいてほしい。と言ってくれた


そんな事が叶うならどれだけ幸せだろうと思ってみたが、きっと父がそれを許してはくれないだろうと口にすると


「その時は僕がどんな事をしても説得してみせるよ」


といつも飄々としている態度とはうって変わって、強い姿勢でそんな事を言ってくれた。


初めて人に必要とされた。そうか、僕は誰かに必要とされたかったんだ。

物心ついた時から泣いたことなんかなかったのに初めて人前で涙が溢れた。


シュン男爵の求めているみんなが笑顔で生活出来る街の為に僕は全力で彼の為に尽くそう。と心に誓った

30話ぶりにイイネがつきました!しかも作者の戯言回w

つけてくださった方は馬の話に興味を示してくれたのかな?それとも軽い気持ちで押してくれただけなのかな?いずれにしても凄い嬉しかったです!この場を借りてお礼申し上げます。もしよろしければこれからもお付き合い下さいませ。

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