謝肉祭!
大量のオーク肉を馬車に乗せ街に凱旋する。
今回の狩り関しては大した見せ場もなく、自警団の皆さんの活躍によって成し得た事なのだが、貴族である自分が自ら現場に赴いただけでも褒めて貰いたい。
いや、社長が「俺は現場主義だから」とか言って偉そうに現場に来るのは、現場の人間からするとただ鬱陶しいだけである。社長は元気で留守がいい。間違いない。
などと、前世のブラック企業の社長に恨み節を心の中で述べていると街の中央広間にはキャンプファイヤー用の焚き火が既に用意されてミルフィアさんや街のみんなが出迎えてくれた。
「シュンさん〜そして皆さんお疲れ様でした〜」
その一言を聞けただけで。。。うぅ、現場に行って良かった。。。社長!あんたとは違うのだよ!
そして住民達はバーベキューが始まるのを今か今かと待ちわびているので、壇上に立ち
「皆さん!お待たせしました!見ての通り大漁です!お腹一杯食べて下さい!これより謝肉祭を開催します!」
と宣言するとみんなが歓声を上げ一気に肉を焼き始める
「うめぇ~!やっぱりオーク肉は最高だぜ!」
「ふぅー!B.B.Q!B.B.Q!」
「酒だ!酒持ってこーい!のーんでのんでのーんで!」
などと住民達がパリピと化していく。え?ここの住民こんなだったっけ?いや、過重労働のせいで頭がおかしくなってしまったのかも。本当にすいません。今日は思う存分楽しんで下さい。
するとキッツ君が珍しく自分から声をかけにくる
「シュン男爵。この度は本当にありがとうございます」
「え?なんかしたっけ?」
「いえ、足手まといの自分を狩りに連れて行ってくれたので」
と頭を下げる
「いやいや、足手まといなんてとんでもない!閃光球大活躍だったし」
「いえ、実家ではこういう物を作っても相手にされず、商人の子供何だから商売の勉強をしろと言われていたので。」
「あーなるほど。けどもったいないなぁ。あんな凄いもの作ったのに。他にもなんかあったりするの?」
「はい。他に煙が出る球や眠らせる球とか色々作りました」
「え!凄いじゃん!今度見せてよ!」
と言うと今までずっと無表情だったキッツが
「是非!」と言って年相応の無邪気な笑顔を見せる。
守りたい。この笑顔。てか初めて笑っている姿を見た気がする。可愛すぎる。こういうのをツンデレというのか。いや、クーデレだったか?
などとあどけない笑顔に見惚れていると照れくさそうに
「今もそうですが、シュン男爵はトランプやサウナ等みんなが楽しめる物を次々と作りみんなを笑顔にする天才だと思います。」
「そ、そうかな?」
キッツ君の称賛に照れていると
「はい。僕は実家にいる時は父の言われた事を無理矢理させられて苦痛の日々を過ごしている時に出会ったのが大富豪でした。僕はそのゲームに夢中になり辛かった毎日に楽しみが出来ました。夢中になり過ぎて実家からお払い箱になってしまったんですが」
と苦笑する。
「キッツ君さえよければさ、いつまでもこの街にいてくれて。いや、いて下さい」
と頭を下げると
「そうしたいのですが、父が許してくれるかわかりません。」
「その時は僕がどんな事をしても説得してみせるよ」
と強い決意でそういった。
度々ネタにするけれど僕はブラック企業が本当に嫌いだ。
したくなければしなくて良い。辞める選択肢だってもちろんある。しかし人間は追い詰められるとそんな簡単な選択肢を取れなくなり、どんどんと自分を追い詰めてしまう。
前世では何度もそうなってしまった後輩を見てきた。
その当時は自分に何の権利もなく声をかけてあげる位のことしかできなかった。その度自分の無力さに居た堪れない気持ちになっていた
けど奴隷の事も含め今の自分には守る力がある。絶対にこの街にいる限りあんな暗い表情にはさせない!
するとキッツ君はうっすらと涙を浮かべ頭を下げるのだった。
「あーシュンが子供を泣かしてるー!」
「ひどーい!」
などと笑いながらヤジってくる。
今良い話してたのに!今ヤジった奴らは肉代払えよー!
キッツ君はそれを訂正しながらその輪に入って行った。
うんうん、そうやって自分のペースで人付き合いしてけば良いよ
そんな光景を主賓席に戻りピッパちゃんと眺めていると、元奴隷、いや新しく仲間入りした自警団のみんなが端の方でどうしたらいいかと躊躇っているのに気が付き声をかけにいく。
「どうしましたか?」
「いや、俺達は元奴隷だし、オーク肉は高いから。。。自分達がいていいものかと。」
するとすかさずザキオさんが会話に入ってきて
「ななななんだ!そんな事気にしてるのかよ!シュンが奴隷解放したんだろ?そそそれならもうこの街の住民!仲間じゃねぇか!それにお前が狩った肉だ!気にせず食え!」
と肉の乗った皿をみんなに渡すザキオさん。
なるほどこういう所がみんなに慕われているのか。ザキオカッコ良いじゃん。風貌、北斗の拳のザコキャラだけど
皿を受け取ったものの困惑した表情でこちらを見てきたので
「ザキオさんの言う通りです!ささっ食べて食べて!今日は無礼講です!」
と言うと皿に乗ったオーク肉を食べ始める
「お、美味しいっ!」
「こんな美味しいお肉は初めてです!」
「シュン男爵ありがとうございます!」
「俺、この街に来て本当に良かった。。。」
などと嬉しそうにお肉を食べてくれた。
「本当にバーベキューやって良かったなぁ」
と主賓席に戻りみんなが楽しそうにお肉を食べてる姿を見てそんな感想を述べる。
「これがシュンさんが作った街ですよ。シュンさんがみんなを大切にしてるからみんなシュンの事が、この街が大好きなんです。バーベキューとか関係ないありません。」
と優しい声でピッパちゃんが僕に声をかけてくれた。
その言葉が凄い嬉しくて
「ピッパちゃん、あのさ。」
「はい?」
「今度デートしない?」
「「「「えぇーーー!?」」」」
とさっきまでお肉に夢中だった住民達が一斉に箸を止めこちらに注目する。
「え?えー!?どうしたんですか!急に!」
「いや、なんか一緒にどこか行きたいなぁと思ってさ。日頃の感謝もあるし。どうかな?」
あわあわと混乱し、俯いた後
「私でよければ喜んで!」
と笑顔で頷いてくれた
ぴぅい!ぴぅい!などとこの日一番の大歓声が巻き起こる。
お前らパリピすぎでしょ。いいじゃん!パリピ上等!
と用意しておいたギターを手に取りノリノリの音楽を掻き鳴らす。
それに合せて踊りだすみんな。
そのまま深夜までこの時間を満喫するのであった。




