職場のオアシス
統治を任され半年程たった。
基本的に全て順調に回っている。というか回りすぎている。
まずはトランプ。これが一番ヤバイ。国王陛下と宰相閣下が夢中になったという事で貴族達がこぞってトランプを求めた。しかしトランプがとある新男爵の専売とわかるや否やパール街にちょいちょいトランプを求めて部下を使いによこす様になった。
真似をして作ろうとした商会もあったのだが、裏表紙の刻印とキングの王様を描くのは許可されてなく無断で使用したら極刑らしい。
そのため貴重な貴族達の趣向品として広まった。
までは良かったのだが国王陛下が先月、国王主催大富豪大会なるものを開催。賞金は平民が一生働いても届かない金額だったのと優勝者は小さい商会の次男坊だったことから、なんて夢のある競技だと一般人の中で大ブレーク!もうその頃にはコピー版やらが出回り始めたが、本気で取り組む人はやはり本物が欲しくなり注文が殺到。
トランプ職人はほぼ無休で働いてる。
ハミや鞍や馬も街に訪れる人がたまに買い求めてくる。前世でいう車だし?一般年収以上の値段に設定したがこちらもぼちぼち売れ始めた。ただ来た50頭のうち牝(女)馬を売ってしまっては生産できないので牡(男)馬だけ5頭程売れた。
半信半疑、ミルフィアさんに踊らされて始めて3人もかなり驚いていた。
だから言ったでしょー!来年にはその倍!再来年には更に倍倍チャンスですよー。
そんなこんなで順風満帆ではあるのだが
大量のお金や物が動くとやらなくちゃいけないのが事務仕事である。
契約書に目を通したり、収入支出の確認、見直し。
仕事を求めて移住してくる人の住宅の手配から、生活の保証。新店舗の開業等の協議から、人口増加に対するライフラインの整備などなど大忙しである。
領主になって領主邸に転居するか考えたが
ピッパちゃんが
「私はこんな大きな家は落ち着かないです。」
と言うので領主邸は完成にオフィス邸と化しているのだが、ここ一ヶ月、自分もピッパちゃんもミルフィアさんもまとも家に帰れず、ずっと寝泊まりしている。
自分の大キライなブラック企業が今ここに!?
何でこうなった!?どこで間違えた!?
異世界では悠々自適に楽しく過ごそうと決めてたのに。
今と前の世界との違いはユンケルがあるか無いか位である。
「さーて少し疲れてきたし外の空気でも吸ってくるかなぁ」
「シュンさん〜さっき休憩したばかりですよ~」
はい。。。
「ピッパちゃんお腹空かない?エルラさんの所でご飯食べにいかない。」
「さっき食べたばかりじゃないですか。この書類確認して貰えますか?」
はい。。。
。。
。
「···サウナ」
「え?なんか言いましたか?」
「もうーーーー限界!サウナサウナサウナ!こういう時はサウナ!」
「シュンさんが壊れた···でシュンさん、さうなって何ですか?」
「サウナというのは高温で熱された部屋の事で、疲れたサラリーマンはそこで限界まで汗をかき交感神経を刺激、その後水風呂、外気温で副交感神経に切り替え、それを3セット行う事によって乱れた自律神経を整う事が出来るんだ!とにかくサウナ!サウナはどこだー!」
とオタク真っ青な早口でピッパに捲し立てる様に説明する
「さらりーまん?コウカンシンケイ?もうシュンさんが壊れちゃいました!?」
「はっ!?ここは異世界かっ!?サウナがない···なければ作ればいいだけの事!」
凄い勢いで執務室を飛び出し掘っ立て小屋と薪ストーブと煙突、そしてサウナ用の石。あと檜で作った水風呂と休憩用の少し傾きのある椅子を用意する。あと男女で裸で入るのもアレなのでサウナイキタイのロゴ付のTシャツとハーフパンツも作る。いくら我を忘れてもそこの配慮は忘れない。サウナ好きはいつだって紳士である。
ちなみに前世では遠赤外線サウナが主流だが、どういう科学の上に成り立ってるかも分からんし、以前北海道へ旅行に行った時、KIKI知床ナチュラルリゾートであった薪サウナを思い出す。あの薪を焚べる音が何とも趣きがあって大好きだった。
「これが、さうな?ですか?」
「うん!ささっ二人ともこれに着替えて、入って!入ってっ!!」
ピッパちゃんとミルフィアさんを先程のTシャツとハーフパンツに着替えさせ、入る様に促す
「···じゃあお邪魔しまー、あっ!シュンさん熱いです!」
「サウナなんだから当然じゃん。2段にしたけど上はもっと熱いから最初は下の方がいいかな?ほら座りなよ!」
と二人を座らせる。ちなみに大きさは2段式で合計8人位入れるサイズである
「あ~これは〜凄い汗かけますね〜。ダイエット出来そうです〜」
とミルフィアさんはミルフィアさんなりに楽しんでいた。ピッパちゃんの方は自分の反対側の端の方に座っている
「どうしたの?ピッパもこっち来なよ?」
「いえ、ここでいいです。···汗くさいかも知れないし(小声)」
?
ゆとりもって入れる様にそこそこ大きくしたのにそんな端っこ行かなくても。。。
バチッバチッと薪を焚べる音を聞きつつ数分後
「私もう限界ですっ!」
と汗をかいたピッパちゃんが部屋を出ようとするが、その腕をガッと掴む
「···まだだ、ピッパちゃん。もう少しでいいから我慢してみよう。限界の先に天国がある!」
「シュンさん目が怖いです···分かりました。後少しですよ?後汗付いちゃうんで手を離して下さい。。。」
「ごめんごめん」
と手を離す
「あらあら〜仲良しですね~」
とウフフと笑うミルフィアさん
1分後
「よし!出よう!」
と言うとピッパちゃんは飛び出る様に外に出る。続いてミルフィアと自分もサ室を後にする。
さーここからがサウナのメインディッシュ!水風呂だ!
サウナは水風呂に入る為の準備運動。全ては水風呂の為に、と自分のサウナ師匠が言っていた。
説明しようとしたら先にミルフィアが、え~い!と水風呂に飛び込んだ
「シュンさん〜水のお風呂〜気持ちいいです〜」
さすがミルフィアさん全てを理解して水風呂に飛び込むとは。前世では色々とマナー違反だがここは異世界!自分も続いて水風呂に飛び込む!
バッシャーン!
これこれ!気持ち良すぎ!
前世では汗を流してから入らないとスーパーマナー違反だが一回やって見たかったんだよ!あぁ!気持ちいい!
「···冷たそう。本当に大丈夫なんですか?」
と水風呂の前でピッパちゃんが躊躇する。
「分かる、分かるよ。自分も最初はそんなもの入ったら心臓止まってしまう。って思ってたから。けどね、最初だけ、最初だけだから頑張ってみな?」
「分かりました···ひゃっ!冷たい!」
と言いながら逃げようとするピッパちゃんの腕を再びガッと掴む
「はい!我慢!はい!ドボーン!」
とピッパちゃんを水風呂に引っ張り込む
「もう!なにするんですかっ!······あ、なんか気持ちいいかも···」
「でしょー!水風呂の中で静かにしてれば身体の周りに熱の羽衣が出来て水風呂もいやすくなるんだ。」
と言って1分程入った後上り二人に作った椅子を用意する
「ささっ二人ともこの椅子に座ってリラックスしてみな?」
と言って二人を座らせる
。。。
。。
。
「シュンさん。私、浮いてるかもしれない···それにいつもより空気がスースーして美味しい···」
「こんなフワフワしたの初めてですね~。つま先からじんわり温かくなってきました〜これ気持ちいいです〜」
ふふふ。分かってくれたか。これがととのうだよ。
満足気に二人を見ていると
「気持ちいいですけど、シュンさんサウナの事になると少し怖いです。」
とピッパちゃんに怒られる。
あらあらうふふと笑うミルフィアさん
ピッパちゃんの乗馬もそうだけど、人は好きなものになると我を忘れちゃうよね。
しょうがない!好きなんだから!
さーて仕事頑張りますかぁ!
サウナに関しては、シュンの間違った知識が多々あります。ルールと自分の身体に合わせた楽しいサウナライフをっ!




