御来光
ドブネズミは白い空間へ入り込んだ。
無性に寒気がすると、身体を身震いさせる。
通気孔から入ってきたがここにはなにもない。
尖った鼻をヒクヒクさせていると、突然目の前に仏像が現れた。
いわゆる御来光というやつだが、ドブネズミにはなんのことだかわからなかった。
まず凝視する。仏は相好を歪めることも崩すことも無く、ただ黄金比を守っている。
次に匂いを嗅ぐ。
仏からは微かに陽光と月夜の寒空の匂いがした。
最後にドブネズミは仏像に齧り付いた。
その瞬間にドブネズミの身体に閃光が走った。
悟ったのか当たったのかは定かではないが、ドブネズミはその一欠片を飲み下すと、また通気孔から出ていった。
白い空間には、ドブネズミのかじり跡が付いた仏像が佇んでいた。