祭りのあと
「ほんとにごめんなさい……」
「いいって」
驚いてとびおきた白雪姫に、王子が棺を破壊しながらタックルをかます、というむちゃくちゃな結末で大爆笑をさらったきあら達は、体育館から撤退していた。きあらは王子の衣装のまま、椅子に座って項垂れている。
漣は、隣の椅子で、弥生に化粧を落としてもらっていた。コールドクリームで丁寧にドーランを落とし、つけまつげを取り去っている。
「まあ、緊張したら、人間おかしなこともしちまうよな。気にすんなよ」
「でも……」
「俺は気にしてないから」
きあらは更に項垂れる。気にしてないの?
許可もとらずにキスしてきた、と嫌われるのもつらいが、まったく気にしてもらえないのも哀しい。きあらは膝を抱える。
「弥生、これ悪いな、踏んじまって」
「いいですよ。ゴムを変えればまたつかえます。古くなってたから、変えようと思ってましたし」
「みんな、ごめん!」
巧がとびこんできた。顔色があまりよくない。亮平がにこやかに云う。
「巧、大丈夫だよ。それよりも、深月は?」
「ああ、入院だって」
「え?!」
亮平が叫び、きあらはぱっと顔を上げる。巧は頭を掻いている。
「熱中症みたいって。ご家族が来たから、任せて帰ってきたんだ」
「そうか……大丈夫なのかな、橋村さん。心配だね」
「本当だよ。深月、つらいなら僕にいってくれればいいのに。でも、すぐによくなるって」
巧はまるで深月の家族みたいなことをいい、とりあえずは舞台が終わった安心感と、深月が無事らしいと云うほっとした気持ちでいっぱいの生徒達は、それにくすくす笑った。