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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第二章 春の風
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紗奈のいない季節

 季節はいつの間にか、移り変わっていた。



 春の気配は、ほのかな匂いだけでなく、その陽射(ひざ)しや草木の様子、街の人の服装や(にぎ)わいで、(あふ)れかえっていて、ボクは目眩(めまい)を覚える。



 人が生きているってことが、眩しかった。

 ボクには眩しすぎた。




 紗奈(さな)が……、

 紗奈(さな)がいないのに、春になるなんて……!




 苦しくて、悲しくて、ボクは眉をひそめる。

 そんな時、じいちゃんがボクの肩を叩いた。




和明(かずあき)。あれを知っとるか?」



 ボクは、じいちゃんが(あご)でしゃくったその先を見る。


 そこには古ぼけた、小さな石橋が見える。

 ボクは頷く。



「……知ってる、よ」



 この橋は、紗奈(さな)が大好きだった石橋。《流星橋(りゅうせいばし)》だ。

 いつだったか、紗奈(さな)が笑って言ったっけ。




 ──この橋は、流れ星で出来てるの……!




 多分、それは、じいちゃんの入れ知恵だったんだって思う。じいちゃん……意外にロマンチストだから……。


 ボクは思い出して小さく笑う。



 久しぶりに笑ったボクを見て、じいちゃんは、機嫌を良くしたのかも知れない。


 紗奈(さな)と同じ事を言った。



「あの橋はな、流れ落ちた星を集めて、じいちゃんが造ったんだぞ」

 (ほこ)らしげにそう言った。





 …………は?

 ちょっと待って、今なんて言った?




 ボクは目を見張る。

 じいちゃんの言葉をゆっくり噛み締める。




 ──じいちゃんが、()()()……?


 流れ星で?




「……」

 遂にボケたか?

 と、ボクはじいちゃんを見る。


 ボクに見られ、じいちゃんはニヤリと笑う。



「なんだ? 和明(かずあき)。その顔は」

 くくくと喉の底で笑った。


 そして、ははぁと頷く。



「さては、疑っとるな? 本当にこれは俺が造ったんだぞ? こじんまりして、(おもむ)き深かろ?」


「……」



 何を言い出すんだ。このジジィ……。

 ボクは目を細める。



 ロマンチストだかメルヘンチックだか知らないけど、それは、あまりにもぶっ飛び過ぎなんじゃないの?

 木造の橋ならまだしも、これは石で出来ている。そう簡単に作れるものではないことは、見れば誰にだって分かる。


 なんなの? 落ち込んでるボクを元気づけようとか、そんな魂胆(こんたん)……?



「……」


 だけど、

 ……少し気が晴れていることに気づいた。



 少しだけ、心が軽い──。





 

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