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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第一章 紗奈の死因。
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沈黙


 紗奈(さな)の死因は、溺死(できし)でも凍死(とうし)でもなかった。



 お医者さんが言うには、単純に発作が起きて、池に落ちる前に死んでいたんだって……。


 そう、母さんが話してくれた。




 ボクは、


 ボクは、納得いかなかった……。



「……」


「……だから、お前が責任を感じることはないんだ」

 父さんは言った。



「そうよ。もともと紗奈(さな)は体が弱かったの。あの歳まで生きていられたのは、本当に奇跡(きせき)に近いことなのだって、主治医(しゅじい)のお医者さまも(おっしゃ)っていたのだし……。和明(かずあき)さんが(そば)にいてくれて、あの子も幸せだったと思うの……」


 母さんもポツリと言った。




「……」


紗奈(さな)がいなくなって(さび)しいのは分かる。お前たちは仲が良かったから……。だが、お前は生きてるんだ。死者を(いた)み過ぎれば、紗奈(さな)成仏(じょうぶつ)出来ない。紗奈(さな)の為にも、早く元気になってくれ……」


 父さんはそう言って、顔を(そむ)けた。




「……」


 ボクは黙ったままで、何も言わなかった。

 言えなかった。



 そんな風に、簡単に割り切れなかったから……。





 ボクが……ボクが外へ連れ出さなかったら、紗奈(さな)はまだ生きていたかも知れないんだ……!


 あの時、追いかけ回さなかったら……。




 あの時……あの時……と思い返せば、何もかもが自分が悪いような気がして、紗奈(さな)にとって、いいお兄ちゃんになろうと頑張っていたこと全てが、本当は悪いことだったんじゃないかって、そう思えてならなかった。



 紗奈(さな)の為には、ボクはいない方が良かったんだ……。




 ……そう思うと、心が折れた。



 どんなに悔やんでも、紗奈(さな)は戻ってこない。

 ボクが悪かったのだと、そう必死になって言っても、誰もそれを認めない。



 (つぐな)いたいと思っても、そんな機会も与えられない。


 与えられたところで、到底(とうてい)償い切れない──!







 ──ボクは、その日から人と話すのをやめた。








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