沈黙
紗奈の死因は、溺死でも凍死でもなかった。
お医者さんが言うには、単純に発作が起きて、池に落ちる前に死んでいたんだって……。
そう、母さんが話してくれた。
ボクは、
ボクは、納得いかなかった……。
「……」
「……だから、お前が責任を感じることはないんだ」
父さんは言った。
「そうよ。もともと紗奈は体が弱かったの。あの歳まで生きていられたのは、本当に奇跡に近いことなのだって、主治医のお医者さまも仰っていたのだし……。和明さんが傍にいてくれて、あの子も幸せだったと思うの……」
母さんもポツリと言った。
「……」
「紗奈がいなくなって寂しいのは分かる。お前たちは仲が良かったから……。だが、お前は生きてるんだ。死者を悼み過ぎれば、紗奈も成仏出来ない。紗奈の為にも、早く元気になってくれ……」
父さんはそう言って、顔を背けた。
「……」
ボクは黙ったままで、何も言わなかった。
言えなかった。
そんな風に、簡単に割り切れなかったから……。
ボクが……ボクが外へ連れ出さなかったら、紗奈はまだ生きていたかも知れないんだ……!
あの時、追いかけ回さなかったら……。
あの時……あの時……と思い返せば、何もかもが自分が悪いような気がして、紗奈にとって、いいお兄ちゃんになろうと頑張っていたこと全てが、本当は悪いことだったんじゃないかって、そう思えてならなかった。
紗奈の為には、ボクはいない方が良かったんだ……。
……そう思うと、心が折れた。
どんなに悔やんでも、紗奈は戻ってこない。
ボクが悪かったのだと、そう必死になって言っても、誰もそれを認めない。
償いたいと思っても、そんな機会も与えられない。
与えられたところで、到底償い切れない──!
──ボクは、その日から人と話すのをやめた。