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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第十三章 別れ……。
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シロツメ草の指輪

 ふわり……と風が吹いた。

 春の……けれどまだ少し、冷気を含んだ風だった。



 ボクは堪らなくなって、紗奈(さな)を抱き寄せた。


紗奈(さな)が嫌いだから、そんな事言ってるんじゃない。

 本当は、ずっと一緒にいたい。

 ボクも……ボクだって、じいちゃんみたいに、紗奈(さな)に会いに来られたら、どんなにいいかって思ってるんだ……」


 だけどそれは出来ない。



 ボクの目の端で、じいちゃんが変な顔をした。

 それを(ひじ)で、ばあちゃんがどつく。



「……」

 ボクは悲しくなる。


 何が正しいのか、分からない。



 傍にいたいって思って、傍にいるのは悪いことなのだろうか?


 じいちゃんたちを見ていると、それも間違っていない事のようにも思う。

 だったら、紗奈(さな)の傍にボクがいてもいいじゃないか……!




 だけど、紗奈(さな)は首を振った。

 悲しそうに、ボクに微笑んだ。



紗奈(さな)だって、お兄ちゃんといたいと思うよ?

  だけどそれは違うの。お兄ちゃんの考えを聞いて、それが紗奈(さな)と同じ考えで、……紗奈(さな)は良かった……って思ったの……」


「……紗奈(さな)



紗奈(さな)もお兄ちゃんと一緒にいたい。

 まだ何度でも会いたい。……だけどそれは、ママにもお父さんにも、同じように思ってる」


 ……でも、それは叶わない……。

 紗奈(さな)は悲しそうに呟いた。



「会いたいって、そう思ってても、みんなに会えるわけじゃない。……だって、私は()()()()()()()んだから……」


「……」



 風が吹いた。


 少し強い風で、持ってきていたシロツメ草の花が、コロコロと転がった。



 紗奈(さな)は、その一つをつまみ上げる。

 そして、ふふふと笑った。



「お兄ちゃんが持ってきてくれたの?」


「あ。……うん。忘れてた。

 それ……紗奈(さな)が好きだった花だから」

 言ってボクも花を拾う。



「本当は、かんむりにしようと思ったんだ。……だけどボク、作り方を知らなくて……」


「お兄ちゃん……不器用だから。貸して……」

 紗奈(さな)は笑いながら、ボクの花を受け取った。



「かんむりはね、茎を長く切らなくちゃ出来ないの。……コレはちょっと短すぎ」


 そう言いながら、紗奈(さな)は笑って、二つの花を結びつける。


「それに、たくさん花がいるの。ここにあるのも沢山だけど……ちょっと足りない。……だから……」


 コロン……と、紗奈(さな)は指輪を作った。



「ほら。コレも可愛いでしょ?」

 ニッコリと笑った。

 指輪よりも、紗奈(さな)の方が可愛いとボクは思った。




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