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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第十二章 謝罪と決心
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言い出せない思い

「……お兄ちゃん」


 先に口を開いたのは、紗奈(さな)だった。


「ん?」

 ボクは紗奈(さな)を見る。



 紗奈(さな)はボクの胸に頭をくっつけていて、何かに耐えるように、ぎゅっとボクの服を掴んだ。


 その様子に、ボクは……少し、心配になる。



 もしかしたら、体調が悪くなった?


 ……一瞬そう思って首を振る。


 いや、そんなハズはない。紗奈(さな)はもう死んでしまったんだから……。



「……」

 紗奈(さな)はボクを見上げた。

 不安そうな顔だった。


紗奈(さな)……?」



紗奈(さな)、……お兄ちゃんが考えてること、知ってる、よ……?」

 消え入るように紗奈(さな)は言った。ボクはドキリとする。



 紗奈(さな)には、……まだ、知られたくなかった。


「……」

「だから、……だから、言って? お兄ちゃんの口から。紗奈(さな)、ちゃんと受け止めるから……」

 そう、紗奈(さな)は言った。




 ボクには考えていることがあった。


 じいちゃんから『無理をするな』って言われた事。それから、紗奈(さな)の死を悼んで泣く母さんの姿……。



 それから、今、死んでしまった妹に会っている自分。



 ボクが考えていることは、本当なら当たり前の事で、誰もが心静かに必死に耐えてきた事だった。特別な事じゃない。それは分かってる。

 でもそれは、せっかく紗奈(さな)とこうして会う事が出来るって分かったのに、そこから更に決別する事に他ならない。



 ……だから、決心がつかない。


 紗奈(さな)にもその方がいいと言われたけれど、確かにそうなんだけれど、本当に決心がついていないのは、ボクの方なんだ。


 ボクは……言えずにいる。

 ……この言葉は、重い……言葉だから……。



「……」

 ボクは黙り込んだ。




──『私も……その方が、本当はいいと思います』




「!?」

 突然聞こえたその声に、ボクは振り向く。


 ボクたちの他に、誰かいた!? ボクは焦る。けれどその声は、ひどく優しい声だった。


 ボクは目を見張る。


 振り向いたその先に、照れくさそうに頭を()くじいちゃんと、その横に、とても綺麗な若い女の人が立っていた。






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