表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第十二章 謝罪と決心
36/49

謝りたかったこと

  そう、だった……。忘れるところだった。



 しばらく紗奈(さな)との再会を喜んでいたボクだけど、ハッと我に返った。大切なことを忘れてた……!


 ボクは焦る。



 ……紗奈(さな)に会えたことが嬉しくて、危うく忘れるところだった……。




──紗奈(さな)に会いたかった、本当の理由。




 これを忘れたら、ボクは本当に、一生後悔するに違いない……。



「……」


 ボクは、紗奈(さな)のおでこに、自分のおでこをくっつけると、軽く目をつぶり、それから息を吐いた。



 今からが、本番だ。


 伝えなければいけないことを、これからちゃんと伝えるぞ……。


 ボクはそう決心すると、紗奈(さな)に、囁くように呟いた。




紗奈(さな)。ボクはずっと、紗奈(さな)に謝りたかったんだ」


「……謝る……?」



 ボクは(うなづ)きながら、ゆっくりと目を開く。

 紗奈(さな)は黒く大きなその瞳を見開いて、不思議そうにこっちを見上げているのが見えた。



「……」

 ……あぁ。なんでこんなに、可愛いんだろう?



 ボクは言葉を失いそうになりながら、必死に、紗奈(さな)へ想いを伝えた。



「そう。謝りたかったんだ。ずっと……」


 ボクは、そう切り出した……。



「あの日……、紗奈(さな)が死んでしまったあの日。

 ボクは紗奈(さな)を連れ回してしまっただろ? 連れ回さなければ、紗奈(さな)はまだ生きていたかも知れない。

 ……だから紗奈(さな)、ボクは君に謝りたかったんだ。紗奈(さな)……ごめん。ごめんね? ……本当は、あの時キツかったんだろ?

 それなのにボクは、そんな事にも気づけず、紗奈(さな)を寒い雪の中、連れ回してしまった。

 それに大きい声で怒鳴ってしまったし、池にも落としてしまった。……池はひどく冷たくて、寒かったろう?

 ……本当にごめん。ごめんなさい……。ずっと後悔してたんだ。あの日が紗奈(さな)に会える最後の日になるなんて、思ってもみなかった……」


 言ってボクはあたためるかのように、紗奈(さな)の頬を、震える両手で包み込む。


 今は春で、あたたかだけど、あの日のことを思い出すと紗奈(さな)を温めずにはいられない。



 あたためたら、……生き返ってくれる……そんな風に思ったのかも知れない。


 ……そんなこと、出来るはずもないのに。



 あぁボクはきっと、紗奈(さな)に謝りながら、謝ることでその事実を消したいんだと思った。


 その事実を消したら、紗奈(さな)が生き返ってくれる……そんな事を期待して。


 ……そんなこと、出来るはずもないのに……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ