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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第十章 雪降る夜に
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望む者

 そんなボクの心のやましい気持ちを、神さまである天津甕星(あまつみかぼし)に見透かされたような気がして、居心地が悪い。



「……」

 ボクは下を向く。


 天津甕星(あまつ みかぼし)は、苦笑した。




──『そんなことはない。本当に助かった。

 (われ)では、星は救えぬから……』




天津甕星(あまつ みかぼし)は、そう優しく言った。


「え……?」

 ボクは驚く。


天津甕星(あまつ みかぼし)……さま……でも、救えないのですか?」

 そう尋ねてみた。



 じいちゃんとボクに、驚くほどの加護を与えてくれたのに、神さまだけでは星が救えない……なんてこと、あるんだろうか? とても、そんな風には思えなかった。


 たけど天津甕星(あまつ みかぼし)さまは、ゆっくり頷いた。




──『我が触れると、星は生まれ変わる』




 は?



 ボクは目を丸くする。


「え? 生まれ変わる? 消えないのですか? 寿命を終え、堕ちた星が??」



 星は、寿命を終えると地に堕ちる。


 そう言ったのは、天津甕星(あまつ みかぼし)さまだ。


 神さまが触れることで、再び生まれ変わることが出来るのなら、喜ばしいことなんじゃないだろうか?

 ボクは考える。



 ……じゃあ、ここにいるじいちゃんも……?




 星となって、地へ堕ちて行こうとした、じいちゃんをボクは見た。

 (かたわ)らには、ばあちゃんの星が輝く。



 そもそもばあちゃんは、堕ちゆく星ではなかった。じいちゃんに合わせて、少し早く堕ちたように見えた。



 いくつもの落ち()く星たちを見てきたから、ボクには分かる。

 ばあちゃんには、まだ星としての寿命があったのに、じいちゃんと共に逝くことを選んだんだ。


 じいちゃんの寿命が終わってしまうから。だから転生を望まなかった。



 でも、天津甕星(あまつ みかぼし)さまが触れれば、二人は再び転生出来る……!


「だったら──!」

 ボクは希望を持って、天津甕星(あまつみかぼし)さまを見た!



 けれど甕星(みかぼし)さまは、そんなボクを見て悲しそうに微笑んだ。




──『魂にも、安らぎの最期は、必要なのだよ』




 と。




──『さぁ、和明(かずあき)

 そんな事より、お前の願いを叶えよう。

 ……《会いたい者》は、誰だ?』




 天津甕星(あまつ みかぼし)さまはそうやって話を()らすと、優しくボクに問いかける。


 けれどそれは愚問だ。

 甕星(みかぼし)さまは、ボクの会いたい人を知っているはずなのだから……。




──『いやいや、そうとは限らぬであろう?』




 天津甕星(あまつ みかぼし)さまは笑う。




──『そなたの曾祖父と曾祖母もいるのだぞ? ましてや、見ることのなかった母もいるのだぞ? 本当に、紗奈(さな)で良いのか?』




 なにそれ。


 まるで童話の『金の斧 銀の斧』みたいなセリフに、ボクは笑う。


 ボクが取り落としたのは、紗奈(さな)だ。じいちゃんでも、ばあちゃんでもない。

 そして、母さんでもない。



 母さん──。


 何度も会いたいと、そう願った。だけどボクは、謝らなくちゃいけない。

 死なせてしまった、ボクの大切な妹に……。



 じいちゃんやばあちゃん、それから見た事のない実の母さんの、どっちが金の斧で、どっちが銀の斧かは知らないけれど、ボクは、ボク自身が取り落とした、小さなその存在に会いたい。


 どうしても、謝らなくちゃいけないんだ!

 ボクは決心して口を開く。


「ボクの望みは変わらない。ボクが会いたいのは、紗奈(さな)ひとりだけ……」




──『そうか』




 天津甕星(あまつみかぼし)さまは、優しく笑う。すると、(かすみ)のように姿を消した。





 パァァァ……!






「!」




 天津甕星(あまつみかぼし)さまが、姿を消すと共に、流星橋が光り輝いた。



「!」

 ボロボロだった橋は綺麗に修復され、不思議なあの銀色に輝いた。


 紗奈(さな)の好きな、川のない、意味のない小さな橋。その上に、小さな人影が現れる。




「! 紗奈(さな)……!」




 ボクは呼び掛けた。




挿絵(By みてみん)



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