堕ちる気持ち
じいちゃんは亡くなった。
全ては、流れるように進んで行った。
人が死ぬと、こうも淡々と時は進んでいくのかと、ボクはぼんやりとその光景を見ていた。
それからまた、ボクは昼夜逆転の生活を戻る。
もう誰もボクに話し掛けて来ない。お互い、話し掛ける気力すらなかった。
どんよりと空気が重く垂れ沈む……。
結局その日は昼間に眠ってしまったから、夜に眠れなくなった。
もちろん、学校も休んだ。
はぁ……もう、勉強はついていけないかも。
そんな風に諦めた。
眠れない間は、星集めをした。
じいちゃんから譲り受けた、星守の仕事。
空高く雲の上に立つと、眼下に広がる景色は、泣きたくなるほど綺麗で、それでいて冷たかった。
……きっと、あのひとつひとつの光の中で、みんな笑っているんだろうなって思った。
そしてその人たちは、ポッカリ空いたボクのこの気持ちの事なんて知りもしない。
あったかくて、そして冷たい風景……。
だけどそれは、嫌いじゃない。
干渉しない優しさもあるんだって事を、ボクは知っている。
人は悲しみに、静かに耐えることも大切だし、耐えきれないその時に、涙を流す勇気も必要だと思う。
助けてって手を伸ばしたり、支え合ったり……。
色んな想いがあっての、この景色。
悲しくも愛しい、静かな風景。
「ボクは、やっぱり ズルい……」
ぽつりと呟く。
ボクは、ズルい──。
母さんも父さんも、紗奈の死を悼んでいた。
見せなかっただけで、苦しんでた。ボクだけじゃなかった。
……だけどボクは、紗奈に会う。
星守の仕事をこなして、その報酬として、ボクは紗奈に会える。
それが、ズルいと思った。
そう思うと、心が傷んだ。




