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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第八章 真実
27/49

事件

 家に帰ったら、大騒ぎになっていた。


「あ! 和明(かずあき)さんっ!

 こんな夜中に、どこへ行ってたの!!」


 母さんがヒステリックに叫んだ。



 うわぁ。やばい。

 家族にバレることまでは、考えてなかった……。



 ボクは慌てて言い訳を考える。まさか《星守をしています》なんて、言えるわけがない。


 言ったとしても、信じないだろうし……。どうしよう。ここは素直にひたすら謝ってしまえ!

 ボクはそう思った。

 橋の完成はもう間近だ。今更やめるわけにもいかない。


 あと少し、あと少しで紗奈(さな)に会える……!



「ご、ごめん。ちょっと眠れなくて……体を動かせば眠れるかと──」

 《眠れるかと思って》……ボクが言おうとしたその言葉は、母さんの声に掻き消された。



「い、いいから……それはいいから、早く支度しなさい……っ!」


 転がる舌をどうにか動かしながら、母さんが叫ぶ。

「母さん……?」



「おじいちゃんが……! おじいちゃんが、倒れたのよ……っ」

「え……!」



 ……ハンマーで、頭を殴られたような感覚がした。

 じいちゃん? じいちゃんがなんで……!?



「あ! 和明(かずあき)さ……っ!!」


 ボクは、母さんが止めるのも聞かず、じいちゃんの部屋に走った。



 じいちゃんの部屋は、母屋(おもや)から繋がる渡り廊下を渡った先の、離れにあった。



 もともとそこが、子どもの頃からのじいちゃんの部屋だったらしい。



 例のシロツメ草の丘に面したその離れは、日当たりが良くて、紗奈(さな)も大好きだった場所だ。


 こっそり入り込んで、眠り込んでいた事もある。



 体の弱いはずの紗奈(さな)が消えた! とあの時は大騒ぎになって、今日みたいに母さんが叫んでいた。


 いつもは冷静な母さんだけど、突発的な事件には弱い。




 紗奈(さな)が亡くなった時に、母さんが比較的冷静だったのは、ずっと前から覚悟していた事だったからかも知れない。




 今回も母さんが動揺している──。




 その事実に、ボクは嫌な予感しかしない。


 ドキドキと、全身の毛が逆立つような、その嫌な感覚に、軽い吐き気を覚えた。





 ──ガッ! ガッ……。




 立て付けの悪い、部屋の引き戸を開けた。


「じいちゃん……! ……っ」


 ボクは叫ぶ!

 けれどそこには、じいちゃんはいなかった。




「かず……和明(かずあき)さ……ん。

 おじいちゃんは、病院にもう、搬送(はんそう)されたの……、血を……血を吐いて……っ」


 母さんが真っ青な顔で、そう言った。

「血……」



 ボクは静かに部屋を見回した。

 じいちゃんの部屋には、何も無かった。




 いつもなら、この時間にじいちゃんは眠ってるはずだ。だから、布団が敷いてないのは不自然だった。



「……」



 ……多分、寝ている時に吐血したに違いない。

 畳に……畳の隙間に、赤黒い血の跡が見えた。



 拭き取った跡がある。

 だけど畳の隙間までは、取り除けなかったのに違いない。微かにこびりついたその血液が、ことの次第を教えてくれた。



「……っ、」

 目の前が真っ暗になった。


 だから言ったんだ! タバコをやめろって……っ!






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