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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第七章 星守の仕事
26/49

夜景

 星集めは、すごく楽しかった。



 信じられないほどの身体能力を得て、ボクは誰も知らない雲の上を、縦横無尽(じゅうおうむじん)に駆け回る。

 それはとても気持ちが良くて、夢の中の出来事みたいだった。


 体がすごく軽くなって、鳥のように空を舞った。




 星集めをしている時だけは、《紗奈(さな)の死》……という呪縛から、解き放たれた。





 地面を強く蹴り、空へ翔ぶ……!

 風を切りながら、西へ東へと、流れ星を追いかけた。



 流れ星はキラキラと美しく、ボクを魅了する。


 夜の空は思っていたよりも暗くはなくて、優しくボクを包み込んでくれる。

 広い空を飛び回りながら、眼下を見下ろすのが、ボクは好きだった。




 まるで、シロツメ草の花畑みたいだ。




 紗奈(さな)と遊んだ花畑。


 優しい甘い香りのする芝生の上で、二人眠ってしまったことを思い出した。

 あの頃は楽しかった。


 大好きな紗奈(さな)と一緒に過ごしたあの時間は、ボクの大切な宝物だ。


 シュン、シュン──!




 飛び石のように雲を駆け抜けながら、ボクは星を追う。星はまるでボクから逃げるように、地上へと戻りたがり、ボクは取り落としてしまうこともあるんだ。


「あ! ダメだよ!」


 そんな時、ボクは慌てて捕まえに行く。

 捕まえに行きながら、ボクは思う。きっとこの星も、会いたい誰か(・・・・・・)に会いに行っているのかも知れない。


 そう思うと、会わせてやりたい気もする。



「ダメダメ! 悪霊になっちゃうんだぞ!」

 そう、自分に言い聞かせながら、ボクは星を集める。



「!」

 星を取り落とすだけじゃない。時にボクは、誤って雲を踏み外し、地上へと落ちることだってある。



 けれどそれも何かのゲームのように、その感覚とスリルを味わった。


 まるで自分が、飛行機にでもなったかのようにボクは旋回(せんかい)する。


 星守の仕事は楽しくて、面白くて、仕方がなかった。




──《無理はするなよ》




 じいちゃんはことある事に、そう言った。

 だからボクは笑いながら、決まってこう言った。



「大丈夫。紗奈(さな)に会うためだから!」



 その度に、じいちゃんは少し悲しそうな顔をする。



 悲しそうなじいちゃんを見るのは辛かった。

 多分、ボクが無理していると思って、心配しているんだと思ったから、出来るだけ元の生活に戻れるようにも努力した。



 元々、紗奈(さな)がいないことで気落ちしていたボクだったけれど、橋を直せたら紗奈(さな)に会えると思うと、気持ちがすごく楽になった。


 どんどん、肩の力が抜けていくのが分かる。



 しだいに目眩(めまい)と頭痛がなくなり、頭がスッキリとした。


 息苦しさがなくなると、少しの時間だったけれど、学校にも行けるようになった。



 日が暮れると決まって星集めに精を出したから、相変わらず昼夜逆転していたけれど、体を動かすからか、次第によく眠るようにもなってきた。


 星集めは順調だった。



 石橋がほのかに光だし、多分もう少しで修理が出来るというところまで()ぎ着けた……!



 ボクは浮かれる。

 こんなに早く、結果が現れるなんて……!



「そうだ! じいちゃんに見てもらおう! あとどのくらいか、じいちゃんなら分かるだろうから……!」



 そう思いながら、ボクはその日、ウキウキしながら家路に着いたんだ。




挿絵(By みてみん)








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