星集め
星守の仕事は、思っていたよりも、簡単だった。
要は落ちてくる星……流れ星を集めるんだ。
星は星でも、天体の星とは少し違う。
人の魂の星。
金平糖みたいにイガイガしていて、不思議な色を放つ、死者たちの魂。
「お! ほらひとつ流れた……!」
じいちゃんが言って、雲を駆ける。
すると驚く程に跳躍して、流れる星の近くまで来る。
「いいか、そしたらこの風呂敷を広げるんだ……!」
言ってじいちゃんは、風呂敷を投網のように投げた。端っこだけを持って。
「え? ……いや、それただの風呂敷じゃん。そんな簡単に、取れるわけ……!?」
風呂敷はただの風呂敷じゃなかった。
本当に投網のように大きく広がって、流れ星を捕まえた。
「……」
「ん? あ、これ? これも天津甕星からお預かりした、貴重な……痛っ! こら和明! 年寄りを蹴るとは、どう言う了見だ……!」
じいちゃんの話が終わる前に、ボクはじいちゃんのスネをつま先で小突く。
スネは痛いからね。少しつつくだけにしておいた。ボクって優しい。
「普通の風呂敷じゃなかったじゃん」
ボクは唸る。
「……だれが普通のと言った! 俺は風呂敷と言ったんだ! 間違ってないだろ!?」
じいちゃんは叫ぶ。
なにそれ……じいちゃん、それって、屁理屈って言うんだぞ!
「……」
ボクに睨まれて、じいちゃんは慌てる。
「と、とにかく、こうやって《星》を集めると、流星橋が輝き出す。
必要量が集まれば、再び天津甕星さまがお出でになるから、その時紗奈に会わせて貰えるだろう」
じいちゃんの言葉に、ボクの心は浮き足立つ。
「どのくらいで紗奈に会える……?」
「うーん。そうさなぁ……」
じいちゃんは、悩みながら呟いた。
「そう、かからんかもな……」
困ったようにそう言った。
ボクは喜んだ。
頑張ればすぐに紗奈に会える……!
そう思ったから。だから、じいちゃんが少し悲しそうな顔をした事に、ボクはこの時気づかなかったんだ。
ただただ、紗奈に再び会えるかもしれないって事だけが嬉しくて、いても立っても居られない。
「ボク、頑張るね! 早く紗奈に会えるように。そして会えたら、その時はちゃんと謝ろう……」
「そうだな。……頑張れよ」
じいちゃんは、穏やかにそう言って、笑った。




