夜景
びゅうびゅうと、耳の横を空気が過ぎ去って行く。
ものすごい速度と気圧に、息を奪われた。
──死ぬ……!
そう思った時に、力が抜けた。
《死ぬ?》
「……」
……それもいいかも知れない。
と、ボクは思う。
死んだら、紗奈に会えるじゃないか……。
そう、思った。
そう思ったら、何も怖くなくなった。
「……」
死んだらすぐに、紗奈に会いに行こう。
そして、一緒に転生すればいい。
何を恐れることがある……?
ボクは気圧で涙目になった目を、ゆっくりと開ける。
──うわぁ……。すごい。
目の前一面、光の海だった。
白色の光が多い。
赤も結構見える。きっと、車のテールランプだろう。一列に並んでいる。
後は黄色や青。それから緑やピンクもある。お店のネオンだろうか?
「すご。……キレイ」
ボクは思わず呟いた。
あぁ、紗奈にも見せたかった。
こんな綺麗な風景を見せたら、紗奈はなんて言うだろう?
呑気にもボクは、そんな事を思う。
落ちる速度は、けして遅くはない。
あっという間に、地面は見えて来る。
……。
死を覚悟したボクには、気持ち的に余裕があった。
プールの飛び込みを思い出し、腹打ちだけはすまい。と心に決める。
かと言って、プールじゃあるまいし、頭から突っ込むとかもないよな?
「……」
ボクは体に力を入れ、足を体の下に持ってくる。
クルッ、……ガッ──!
「!」
足の裏に、地面が触れた感覚があった。
「……っ、」
痛くはなかったし、潰れる感覚もない。
けれど程よい圧迫感。
そうか、これが《加護》……?
「だったら……っ!」
ボクは力いっぱい地面を蹴った!
さっき、じいちゃんがしたように。
ヒュン──……。
「う、わぁー……!」
あっという間に、蹴った地面が遠のいた。
びゅうびゅうという風の音を聞きながら、ボクはじいちゃんの所まで飛び上がる。
まるで鳥にでもなったみたい……!
ボクが戻ってくると、じいちゃんは鼻で笑った。
「ふん。なかなか筋がいいな……」
つまらない……と言ったように、じいちゃんが呟く。
……いや、説明しろよ。突き落とす前に!
ギロッと睨んだが、そんなのに怯むじいちゃんじゃない事は、十分に理解してる。
「で、その次どうするの」
ボクはムスッとして尋ねる。
「お。やる気が出たか。良い良い」
うんうんと頷くじいちゃん。
それからボクは、じいちゃんの説明を聞いた。




