風呂敷
辺りは暗くなり、キラキラと無数の星たちが輝く頃、ボクとじいちゃんは再び《流星橋》へとやって来た。
繁華街の真ん中に位置するハズの流星橋だったけれど、意外に人通りは少ない。
ビルに囲まれては居るものの、その全てがどこかのオフィスだからだろうか?
ビルから漏れる光で、辺りは明るかったけれど、歩く人たちはほとんど見かけなかった。
見掛けたとしても、家路を急いでいるのだろう。足早に通り過ぎていく。
じいちゃんは橋の近くにある、小さな祠を開けた。
「!」
観音開きになっている、その扉を開けると、中に小さな箱がある。
じいちゃんはその箱の中から、風呂敷のような紺色の布を取り出した。
「……それは、なに?」
ボクは恐る恐る尋ねる。
なにかすごいアイテムかも知れない。ボクはドキドキする。
日本の神様が関わる仕事なら、そんな物があってもおかしくない。
「……」
じいちゃんはボクを見る。
「……」
ボクもじいちゃんを見る。
するとじいちゃんは口を開いた。
「風呂敷だな」
「……は? 風呂敷?」
ボクは素っ頓狂な声を上げる。
じいちゃんは頷いて、布を広げた。
「風呂敷だぞ」
もう一度言う。
ボクはそれを触る。
「あー。うん。風呂敷だ。間違いない」
ふふ……と、じいちゃんが笑った。
「何か特別なものだと思っただろ……?」
ニヤニヤと笑うその顔が忌々しい……。
「き、聞いただけだろ……! で? どうすんの? その風呂敷……!」
半ばヤケになって尋ねる。
ちょっと厨二病的な発想をしてしまった事に、ボクは恥ずかしさを隠せない。
じいちゃんは嬉しそうに笑って、『後で分かる』……と、それだけ言った。そしてその風呂敷を小さく畳むと、上着のポケットに押し込んだ。




