仕切り直し
じいちゃんは、ゴホンと咳払いした。
「ま、それは追々な。……今回は、まだ橋の修理は出来ん。まずは星を集めにゃならんからな」
そう言って、暮れ始めた空を見た。
「星集めの基本は、夜。和明、起きていられるか……?」
尋ねられ、ボクは頷く。
……そこは、問題ない。
褒められたものではないけれど、紗奈が亡くなって、ボクの精神状態は不安定になった。
……そのせいで、なかなか寝付けない。ひどい時には、綺麗に昼夜逆転してしまった時もある。
……それは、紗奈を火葬した、あの時からだ。
「……っ」
ボクは思い出して、ゾクッと体を震わせる。
あの光景は、今でもトラウマになっている。
棺桶の中の紗奈は、まだ生きているように見えた。
……ただ眠っているような、そんな綺麗な姿の紗奈を棺桶に入れて、それから、……炎で──。
「ひぐ……っ」
思い出した途端、呼吸を奪われる……!
ガクガクと体が震え、止まらない。必死に両手でおさえた。
大丈夫……。大丈夫だから。
紗奈にはまた会えるだろ?
……また会えるんだ。
まだ、終わりじゃない──。
ボクは自分にそう言い聞かせ、ギュッと目をつぶった。
「……」
じいちゃんは、そんなボクを見下ろして、頭を撫でてくれた。
「……和明」
ボクは名を呼ばれ、ハッとする。
「な、なに……」
未だ震える体をおさえ、頭を上げる。
「……」
そんなボクをしばらく見て、じいちゃんは溜め息をついた。
「……いや。……俺のようには、なるなよ……」
「?」
なんの事か分からなかったけど、ボクは頷く。
「うん。……?」
「ひとまず家へ帰ろう。まだ時間が早い」
ぽんぽんと、ボクの頭を優しく叩く。
「うん」
そうしてボクたちは、その場を後にした……。




