石橋直し
「よし! じゃあ、直してもらおうか、石橋を……!」
……。
だから、なんで石橋なの。星守じゃないの? 星守。
どうやって星を集めるのか教えてくれなくちゃ……。
ボクは余程、変な顔をしたんだと思う。
じいちゃんは、そんなボクを見るなり笑った。
「だから、言っただろうが? この《流星橋》は、流れ星を集めて作ったんだと……」
……そう、だった。
確かにじいちゃんは、そんな事も言っていた。
ボクは居心地が悪い。
「う……。でも、どうやって? てか、この橋ってそんなモノで出来てたの? 堕ちた星って……要は死体だろ? ちょっと怖いんだけど……」
地に堕ちたら、負の感情を吸って悪いモノとなる……それを拾って集めて固めて《橋》にする……?
それって、やっちゃってもいいの……?
「ははぁ。さては信じとらんな? この場所はな、あの世とこの世を繋ぐ場所なんだよ」
じいちゃんが言う。
「え。なにそれ、ここってそんな場所なの?」
街中のど真ん中に、あの世に繋がる橋とか、ちょっとゾッとする。
「そのままだと、良くないモノのたまり場になるけどな。こうして橋を造り、循環させれば、なんの問題もない。それに《星》は死体じゃない。人の《想い》の塊なのだよ。あの世とこの世を人の想いで繋ぐ……と思えば、いい感じだろう?」
「……」
じいちゃんはそう言ったけど、ボクはちょっと解せない。
「《橋》……じゃなく、鎮魂の碑とか、そんなのがいいんじゃ……?」
橋だと、魑魅魍魎がザワザワやって来そうな感じがする。
ボクがそう言うと、じいちゃんは目ん玉が飛び出るほど目をひん剥いて、叫んだ。
「お前は、バカか……!?」
……いや、バカって。
「石碑なぞここに置いたら、あの世との道を塞ぐ事になる! そんなことしてみろ! あの世の亡者どもが逆に怒って、暴れはじめるぞ……!」
言って身を震わせる。
「絶対、絶対に、この石橋を崩してはならん……!」
鼻息荒く話すじいちゃんが、少し怖い。ここは素直に従った方が身のためだ。
「わ、……分かった……」
ボクは後ずさる。
「いいや、分かっとらん! 俺が死んだら、この橋を崩そうとか、そう思ってるのを知っとるぞ!」
じいちゃんは唸る。
……あぁ、あれだ。父さんと母さんが話してたヤツ。
「だがな、俺は天津甕星さまに出会ったその頃よりずっと、この橋を守って来たんだぞ! 俺の目の黒いうちは、まだまだ現役だ……!! お前たちの好きにはさせん……!」
いや、どこのジジィだよ。
ボクは半ば呆れながら、うんうんと首を縦に振る。
「分かった。……分かったってば……!」
ボクは唸る。
……もういい加減にしてくれ。
そもそも目の黒いうちって……じいちゃん、もう結構、目の色白濁してきてるじゃんか……。
医者に注意されても不摂生するから……。
ボクは顔を歪めた。




