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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第五章 天津甕星《あまつみかぼし》
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有り得ない状況

 天津甕星(あまつ みかぼし)と名乗ったその人は、日本神話に出てくるような姿の人だった。


 さっき降ってきた、デカい金平糖みたいなのとそっくりの、白色とも銀色とも言えない不思議な色の髪と瞳。


 その髪は、耳の横でくるんと巻いていて、どう考えても、普通の人とは思えなかった。


 ボクは(おのの)く。



 夢見心地なじいちゃんの作り話が、また始まったとばかり思っていたのに、妙な現実味を帯びてくる。


 それでも頭の奥底で、どうにか常識のある状況に戻したい……! そう思う心もあって、ボクは言葉を失った。



「……」



 天津甕星(あまつ みかぼし)はそんなボクを見て、目を細めた。


 それに気づいたじいちゃんが、慌てたようにボクに頭を下げさせる。グッと頭を手で押さえつけられた。


 痛い、痛い……っ!



不肖(ふしょう)の孫ですが、お役に立てるとは存じます」

 じいちゃんは言った。




 ──『それは、心配していない』




 天津甕星(あまつ みかぼし)は、頭に響くような……それでも不思議と、心が落ち着くような、優しい低い声で、そう呟いた。



 ……え? なに?

 何させようとしてるの?



 ボクは青くなる。


 このまま黙ってたら、この変な人たちの餌食(えじき)になるんじゃないだろうか……?



 いや、それは困る!

 ボクは慌てて頭を上げ、じいちゃんに文句を言った。



「ちょっ、なに? なんなの? ボクは何かを《する》なんて一言も言ってないけど……!」


「こ、こら! 天津甕星(あまつ みかぼし)さまの御前だ。天津甕星(あまつ みかぼし)さまは、神様なのだぞ……!」


 じいちゃんが必死になって、ボクを(さと)す。



(神? 神とか関係ないし。信者でもあるまいし……!)

 押さえつけられて、ボクは唸る。




 ──『これこれ。無理強いはならぬぞ?』




「し、しかし……!」




 ──『無理もない。我は邪神ゆえ……』



 邪神!? ボクはギョッとなる。


「な、なにを言われますっ! ……こら和明(かずあき)! 謝れ」

 再び無理やり頭を下げられ、ボクは混乱する。


 邪神? 今、邪神と言わなかった……?


 ボクは少なからず興味を持って、顔を上げた。

「!」

 顔を上げると直ぐに、天津甕星(あまつ みかぼし)と、目が合う。


 不思議な、色……。


 飲み込まれそうなその瞳に、ボクは釘付けになる。

 すると天津甕星(あまつ みかぼし)は、ふわりと微笑んだ。





 ──『紗奈(さな)の《兄》、か……?』




「……っ!」

 紗奈(さな)……?



 なんでコイツは、紗奈(さな)とボクのことを知ってる? じいちゃんが話したんだろうか?



 ボクは天津甕星(あまつ みかぼし)を睨んだ。

 睨まれて天津甕星(あまつ みかぼし)は笑った。




 ──『人の生死は、我が手の内。

星となった者を、(われ)が知らぬわけがなかろ?』




「手の……うち……?」

 天津甕星(あまつ みかぼし)は頷く。




 ──『我は死者を星へと変える。

よって人は我を《邪神》と呼ぶ。』




 悲しそうに笑った。

「死者……? 星?」



 何が何だか分からなかった。


 じいちゃんが、ボクの肩に手を置いた。

天津甕星(あまつ みかぼし)さまは、星を統べる方。人が死ねば、その魂は星となる」

「……」



 いやいやいや、そんなわけないし。

 人は死んだらそれまでだ。星になるとか、非科学的なのにも程がある……!



 ……。

 そうは思ったけれど、紗奈(さな)の名を天津甕星(あまつ みかぼし)の口から聞いて、ボクの心は揺れ動く。




 紗奈(さな)



 もしかしたら、紗奈(さな)に会える……?

 もしかしたら、生き返る事が出来るんじゃ……。


 そんなハズはないのに、甘い期待が首をもたげる。




 ──『……そのようなことは、流石に出来ない』




「……っ」


 まるでボクの心の中を呼んだかのように、天津甕星(あまつ みかぼし)は悲しげに言った。




 ──『生き返らせるのは無理だが、会わせることは出来る』




「!?」


 天津甕星(あまつ みかぼし)の言葉に、ボクは目を見張った。








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