生きていた?
あ、あれ? 死んでなかったってオチ?
そこまで考えて、ボクは心の中で首を振った。
いや、それはない。
ボクは以前、聞いたことがある。
父さんの父さん。つまり、ボクのじいちゃん(目の前にいる曾祖父じゃなくて祖父)は、母親を知らない。
じいちゃん(祖父)が生まれてすぐ、母親(曾祖母)が亡くなったから、じいちゃん(祖父)は、じいちゃん(曾祖父)に育てられた。
だから今、じいちゃん(曾祖父)の言ってたお嫁さんが、ボクのひいばあちゃんの事なら、謝れるはずもないし本当は生きていて再び会った……なんて言うドラマチックな状況も有り得ない。
ボクは顔をしかめる。
「……」
そんなボクの不信感に気づかず、じいちゃんはタバコの煙を吐き出しながら、口を開く。
「俺は死のうと思ったんだ。……ここで」
ボクはゴクリと唾を飲み込む。
そんな話は、初めて聞いた。
恐らく、実の子であるじいちゃん(祖父)も、孫である父さんも知らないに違いない。
「こ……ここ、で……?」
ボクは言葉を絞り出す。
その時、本当に じいちゃんが死んでいたのなら、今の状況は少し変わっていたかも知れない。
じいちゃん(曾祖父)は男手ひとつで、じいちゃん(祖父)を育てたって言うから、じいちゃん(曾祖父)がいなかったら、じいちゃん(祖父)は親戚をタライ回しに……って、ああ! じいちゃん じいちゃんって、頭の中が五月蝿いっっっ!!!
……わけの分からないところで、ボクは混乱する。
つまりはじいちゃん……、今目の前にいるじいちゃんは、ばあちゃんに死なれて、自殺しようとした。
そうここでだ! ……それだけ抑えとこう。そこが重要だ。うん。
混乱しているボクを尻目に、じいちゃんはタバコを吹かす。
「そしたらここに、変なのがいた」
「へ……変なの……?」
じいちゃんは頷く。
すると──。
ヒュン──。
「!?」
何かが飛んできて、ボクの頬を掠めた!
「……え?」
チリ……とほっぺが痛む。
ボクは思わず頬に手を当てる。ほんの少し、鉄臭い。
ズサっ!
「……っ、」
重たいその音に、ボクは振り向いて青くなる。
ちょ、今あれ、ボクに当たろうとしたんだけど……。
それはキラキラ光る、でっかい金平糖みたいなやつで、地面に落ちると、ゴロゴロと転がった。
白色とも銀色とも分からない、複雑な色でそれは美しく輝く。
うわ、あっぶねぇー……。冷や汗をかく。
それ、頭に落ちてたら、今頃とんでもない事に……。
ボクはゴクリと唾を飲んだ。




