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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
第二章 春の風
10/49

手伝い


 ボクは、じいちゃんの言葉は無視して、石橋を見る。




 石橋は、紗奈(さな)が大好きだった。


 丘のシロツメ草と一緒で、《お星さまの橋》と言って、よく見に行きたがった。



 橋は石造りで、もうとても古い。

 だから立て札が立っている。《渡れません》って。



 だけどこの橋が、撤去(てっきょ)されないのには訳がある。

 なにも難しい話じゃない。ここが私有地だからだ。



 ボクたちの住む街は、それなりに大きな街だ。人口十万ほど……?

 詳しくは知らないけれど。



 ボクたちの住んでいる家の近くには、比較的緑が多い。けれど、そこから少し離れると繁華街になる。


 そこからは、そのほとんどがコンクリートに覆われた、プチコンクリートジャングル。

 緑と言えば、街路樹くらいしかない。




 そんな街のど真ん中に、この石橋はある。


 気持ち日本庭園のような雑木林に、この古ぼけた石橋がたった一つ。

 べつに川がある訳でもないのに、何故だか橋だけがポツリとある。


 それから小さな木のベンチがしつらえてあって、時々ここで休む人たちもいる。

 だけどここを訪れるのは、運動の為に歩いている人たちくらいで、こんなビルの合間にあるちっぽけな公園なんて、そんなに立ち寄る人はいない。



 そしてここ、流星橋は、うちの私有地だ。


 家を立てるほどのスペースもない。ただ座って休む程度の、とても小さな土地。


 周りにはニョキニョキと、ビルが(そび)え建つ。



 そんな、本当に文字通り、猫の額ほどのこの土地を、どうにか出来るわけもなく、じいちゃんは、地域の人たちにこの場所を解放している。



 父さんと母さんは、持ち主であるじいちゃんに、手放してはどうかと言っていた事がある。

 けれどガンとしてじいちゃんは、譲らない。《俺の目の黒いうちは……!》なんて古臭いことを言って、てんで話にならなかった。




 ボクはそんな事を、ぼんやりと思い出しながら、橋を見た。


「……」

 橋には緑色の(こけ)がこびりついていて、今にも崩れてしまいそうだ。


 ……子どもが乗って遊んだら、大変だと思う。



「橋……危なくない……?」

 ボクはポツリと言う。


「子どもが乗ったりでもしたら……」


 そこまで言って、黙る。

 急にまた、紗奈(さな)の事を思い出した。




 ──冬の丘に、登ってはダメ。




「……」


 だけど、紗奈(さな)は登った。

 登らなければ、今も生きていたかも知れない。


 ツ……と涙が流れた。




 ポンっ!



「……!」

 じいちゃんが、ボクの頭に手を乗せた。


 デカい手だった。

 ボクは涙を拭いて、ムッとする。


「重い! なにするの……!」

 ゴシゴシと顔を拭いて、見上げたじいちゃんは、ニヤリと笑う。




「じゃあ、()()()直せ……!」

 じいちゃんは、(えら)そうにもそう言った。



「…………は?」



 ボクは意味が分からず、そう返した。


 橋をこのボクが直す?

 ボクは子どもなんだぞ? そんなこと、出来るわけないだろ!?



 ボクは思った。




 この、クソじじい(・・・・・)って……!





挿絵(By みてみん)




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