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星守《ほしもり》  作者: YUQARI
序章 後悔
1/49

雪降る日に。

 

 妹が死んだ。



 ボクが……ボクが、悪かったんだ。

 ボクが勝手なことをしたばっかりに……。


 悔やんでも悔やみ切れない。

 どんなに後悔しても反省しても、失った命は戻っては来ない。


 あの微笑みは、もう二度と見ることは出来ない──!




 妹の紗奈(さな)は、体が弱かった。

 いつも一人部屋にこもって、ずっと寝込んでた。


 ボクが遊びに行くと、ぼんやりしたその顔にパッと赤みが差して、ドキッとするほど華やかな笑顔になる。


 ボクはその笑顔が大好きで、つい何度も見に行ってしまうんだ。


 素直に、《笑顔が好きだよ》って言えなくて、言い訳がましく、今日の出来事とか、外で()んだ花だとかを見繕(みつくろ)ってきて、会う口実にしていた。



 あの日……冬の寒いあの日も、《外へ行こう!》っていうお(さそ)いの言葉も、ただ単なる会う為だけの口実で、本当に外へ行ける……なんて思っていなかった。


 だけど誘いに行ってみれば、紗奈(さな)の体調はすこぶる良くて、ベッドから起きて、ボクを迎えてくれたんだ。


 ボクは嬉しくなった。ただの口実だった『外へ行こう!』が現実味を帯びてくる。


 誘っても、《無理だ》と言われると思ったのに、紗奈(さな)は飛び跳ねて喜んだ。


 可愛らしいその微笑みに、ボクはどうしても、紗奈(さな)と雪が見たくなる。


 外は、昨日から降り積もった真っ白な雪が、キラキラと朝日を浴びて、輝いていた。

 まっさらな雪景色の中で、紗奈(さな)と二人っきり! なんて楽しそうなんだろう……!


 だからボクは、絶対に紗奈(さな)と外で遊ぼうって思ってしまったんだ。


 

 ……実際のところ、たとえその日がすごく良い天気だったとしても、体の弱い紗奈(さな)には、過酷(かこく)な状況だったかも知れない。


 けれど、紗奈(さな)のその屈託(くったく)のない微笑みと、冬にしては暖かだったその日の気候に(ほだ)されて、ボクは紗奈(さな)を連れ出すことにした。



 ……あの時は、母さんや父さんにも、ちゃんと許可をもらった。《少しだけだぞ》っていう制約はあったけれど。



 だから……。


 だからボクは、大丈夫だって思ったんだ。


 少しだけなら、紗奈(さな)と雪遊び出来るんだって、ボクはとても嬉しかった。


 あの日紗奈(さな)はとても喜んでくれて、ボク達はさっそく二人で雪山を作った。




 雪は少し湿り気を帯びていて、何かを形作るのには、ちょうどいい固さだ。


 ボクたちは、小さな雪うさぎや雪だるまを作り合って、笑い合った。




 ボクたちの家の近くには、小高い丘があった。

 ボクと妹は、そこで良く遊んだ。



 春になると、丘いっぱいにシロツメ草の花が咲く。


 あったかい芝生の上に寝転んで空を見上げると、シロツメ草の優しい香りがした。



 妹は、そのシロツメ草が大好きで、ボクによく、かんむりを作ってくれた。


 二人で四つ葉のクローバーを、探しっこしたことだってある。

 驚くほどたくさん見つけて、きっと紗奈(さな)の病気だって、すぐに治してくれるよって話してた。




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