雪降る日に。
妹が死んだ。
ボクが……ボクが、悪かったんだ。
ボクが勝手なことをしたばっかりに……。
悔やんでも悔やみ切れない。
どんなに後悔しても反省しても、失った命は戻っては来ない。
あの微笑みは、もう二度と見ることは出来ない──!
妹の紗奈は、体が弱かった。
いつも一人部屋にこもって、ずっと寝込んでた。
ボクが遊びに行くと、ぼんやりしたその顔にパッと赤みが差して、ドキッとするほど華やかな笑顔になる。
ボクはその笑顔が大好きで、つい何度も見に行ってしまうんだ。
素直に、《笑顔が好きだよ》って言えなくて、言い訳がましく、今日の出来事とか、外で摘んだ花だとかを見繕ってきて、会う口実にしていた。
あの日……冬の寒いあの日も、《外へ行こう!》っていうお誘いの言葉も、ただ単なる会う為だけの口実で、本当に外へ行ける……なんて思っていなかった。
だけど誘いに行ってみれば、紗奈の体調はすこぶる良くて、ベッドから起きて、ボクを迎えてくれたんだ。
ボクは嬉しくなった。ただの口実だった『外へ行こう!』が現実味を帯びてくる。
誘っても、《無理だ》と言われると思ったのに、紗奈は飛び跳ねて喜んだ。
可愛らしいその微笑みに、ボクはどうしても、紗奈と雪が見たくなる。
外は、昨日から降り積もった真っ白な雪が、キラキラと朝日を浴びて、輝いていた。
まっさらな雪景色の中で、紗奈と二人っきり! なんて楽しそうなんだろう……!
だからボクは、絶対に紗奈と外で遊ぼうって思ってしまったんだ。
……実際のところ、たとえその日がすごく良い天気だったとしても、体の弱い紗奈には、過酷な状況だったかも知れない。
けれど、紗奈のその屈託のない微笑みと、冬にしては暖かだったその日の気候に絆されて、ボクは紗奈を連れ出すことにした。
……あの時は、母さんや父さんにも、ちゃんと許可をもらった。《少しだけだぞ》っていう制約はあったけれど。
だから……。
だからボクは、大丈夫だって思ったんだ。
少しだけなら、紗奈と雪遊び出来るんだって、ボクはとても嬉しかった。
あの日紗奈はとても喜んでくれて、ボク達はさっそく二人で雪山を作った。
雪は少し湿り気を帯びていて、何かを形作るのには、ちょうどいい固さだ。
ボクたちは、小さな雪うさぎや雪だるまを作り合って、笑い合った。
ボクたちの家の近くには、小高い丘があった。
ボクと妹は、そこで良く遊んだ。
春になると、丘いっぱいにシロツメ草の花が咲く。
あったかい芝生の上に寝転んで空を見上げると、シロツメ草の優しい香りがした。
妹は、そのシロツメ草が大好きで、ボクによく、かんむりを作ってくれた。
二人で四つ葉のクローバーを、探しっこしたことだってある。
驚くほどたくさん見つけて、きっと紗奈の病気だって、すぐに治してくれるよって話してた。