【PHASE1-6】炎を呼ぶヴァーチャル・ラリー
――――――――PLAY GAME――――――――
☆D・D・G 《デュアルディメンションゲーム》①☆
【エクストリーム・ラリーVX】
・ジャンル:テニスゲーム
・プレイヤーレベル:20
ルール
・2人のプレイヤーは「パドル」となって自ら上下動いて操作し、画面上を行き交う「ボール」を打ち合うこととなる。「パドル」が「ボール」に当たればボールは相手側に跳ね返っていき、パドルで相手コーナーに跳ね返すことができなかった場合は相手の得点となる。
・またラリー中にコート内でランダムに出現する『パワーパッチ』なるアイテムをボールが獲得する事で様々な効果が付加され、ゲームを加速させる。
☆ヒート側は5人勝ち抜き(一人3点)で勝利、小金井側はヒートに15点先取で勝利!
プレイ報酬(PvPの場合)
・勝利賞金 1000万円(仮)
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――渋谷・ハチ公前広場にてVRフィールドが出現。遂に地底の者を迫害した元凶・小金井が登場し、満を持してゲームに挑むは我らがヒート。
そしてゲーム外部では、理不尽なゲームを阻止せんと別行動でヒートをサポートするハリアー、アリス、ツッチーの姿が。
「やっぱりジョーカーさんの言った通りだったな。あの強欲マンがヒートの挑戦を拒んでも大金には目が無いって」
「……ねぇハリアー、あの500万どっから手に入れたの?」
「何でもジョーカーさんが俺達の為にコツコツ貯めた資金なんだってさ。20年分の貯金だとか」
「そない大事なもん掛け金に用意したんか!?」
「それだけジョーカーさんが本気なんだ。地上の奴らの勝手な振る舞いに一番怒ってるお方。だから俺達も真剣にやらないとな」
何と相手の思惑の裏を掻いて、強欲な相手の出汁にしようとジョーカーが自ら500万も卸してDDGの掛け金に用意していた。やる事が大胆と言うか大穴狙いと言いますか、その分対戦に挑むヒートに絶大な信頼を置く意味合いも持つのでしょうか……?
―――さぁ皆様お待たせしました! ゲームチェイサー・ファーストゲームの開幕であります!!
この語りを担当しています私Mr.Fは何実況を愛し、実況に命を賭けるナビゲーター。つまりはゲームの時が私の真骨頂であります。今まさに私のトーキングエンジンは絶好調! このままゲームへ直行しましょう!!
〘◇Now Lording◇〙
―――渋谷の夜空に仮想のドーム空間、その中に忽然と姿を現したゲーミングなレクタングル。長方形の双を成すサイドには二人のプレイヤー、遊戯が世界の全てを制すこの混沌の時代に、遊戯で戦う者の魂は熱く、時に冷酷にシビアな決闘に挑む訳であります。
“プレイヤー”と呼ぶには最早場違いなのか! ゲームに魂燃ゆる者、人は彼らを【ゲーム戦士】と呼ぶ!!
そんな戦士達が横暴な砂塵も漂うDDG・エクストリーム・ラリーVX、一方は出来すぎた戦いに退屈すら覚えるが、一方は未知なる超次元ゲームの初陣を飾る訳であります! さぁその勇士をしかと御覧じろ!!
都会の風と仮想の世界観を突き破って登場して参りました。レッドサイドはご存知焔陽唯斗、別名・灼熱のヒート! 地底空間からの必殺仕事人、炎のチャレンジャー!!
(あの地底のカスが500万の大金を持っていた事には驚いたが、なに私の奥の手を前にしてはその金も水泡に帰される。改造プログラム“GOLD”の前にひざまずくがいい……!!)
もう対戦相手の小金井には、八百長による罪悪感は無くなってしまったのか。金に全盲になった者に人情の欠片は残されていない。
それでも臆せず立ち向かおうとするヒートの勇気がより磨きが掛かる。先ずはファーストコンタクト、ゲーム一戦目です!!
〘GAME START〙
総額1000万円の大金を掛けた地獄のラリー、ヒート一人に対して対戦相手の小金井……ではなく、専属のボディガードが初手に出ております。
小金井側はプレイヤー五人での勝負、一人3点ずつの振り分けで合計15点。ヒートも15点までのライフで討ち取った者が勝利という特別ルールとなっております。
まさに孤独の五人斬りを成そうとしておりますヒート。しかし最初はボディガードのサーブ、小さくジャンプしてのパドルからドットボールが斜線描いてシュート!
――ビキッ、ポンッ☆
ここは冷静に慌てず軽やかな音を立ててのレシーブだヒート。返ってくるボールにボディガードはややふらつきながらも何とか打ち返す。この辺りで既に優柔不断が垣間見えているか?
「っかぁ〜下手くそ! あんなへっぴり腰でよく先陣を切れるよなぁ〜」
意地悪く煽りを入れてくるヒート、また向かってくるボールに合わせて自ら動かすパドルをキュッとブレーキを入れての際どいレシーブ。一変して細かくジグザグとした変化球で翻弄させ、ボディガードが不意な失点!
《小金井 0-1 ヒート》
鈍いブザー音が失点を知らせ、ヒートに先ずは先制点。余裕綽々で溢れる笑み。
点を入れた者がサーブ権を与えられるこのゲーム。一点入れた代わってヒートがサーブするターンだ。ここは……右の角に自ら移動してトリッキーなサーブを仕掛けるのか。
「……よっと!」
さぁここは斜度30度のワイドなサーブ、右往左往に横の壁にぶつかりながら迫る敵サイド、まさにボールの反復横跳び、ズワイガニ戦法か? ボーダーラインを超えて敵陣地にボールが侵入……っとここで!?
〘【Q】-QUICK-〙
―――ギュンッッ
「げっ!!?」
あーっとここで不意を突かれてのゴールイン、ヒートのサービスエースだ!!!
《小金井 0-2 ヒート》
これは一瞬の出来事でありました!! ブルーサイド・小金井ボディガードの陣に入った瞬間、アイテム表記が出た途端にボールの速度が急激に加速した!
これが最新型テニスゲームの真骨頂『パワーパッチ』の威力! ランダムに出現するアイテムが予測不可能なゲームと化した!!
「こりゃ面白ぇ! ジョーカーのおじちゃん、さっきのパワーパッチは何だったんだ?」
と、ゲーム最中に地底と無線で繋がっているジョーカーに呑気に話しかけておりますヒート。
『あれは【Q】、つまりボールの速度を急激に上げるパワーパッチだ。その他にも4種類のパッチがフィールドの何処かに隠されてボールやプレイヤーに影響を及ぼす。軌道を読むだけが攻略じゃないぞ』
「オーケーオーケー、玉でも槍でも掛かって来いってんだ!」
地底からセコンド役を買って出ておりますジョーカー、その応援に乗ってヒートも俄然やる気が出ております!
―――さぁ、初陣に乗りに乗っておりますヒート。DDGという地底に無い未知のゲームを楽しむ心が、無敵の強さを物語っている事でしょう!
ゲーム内にランダムに隠されたパワーパッチ。【Q-クイック-】の他に、真逆にボールを遅くする【S-スロー-】、ボールを3つに分身して翻弄させる【D-ディヴィジョン-】、パドルの幅を広げる【W-ワイド-】とテニスゲームがまるでアルカ◯イドと融合したかのような化学反応を巻き起こしております!!
(アイテムで混乱するのは仕方ないが、基本的にはテニスゲームのやり方と同じだ。ボールの向かってくる角度を見極め、位置が決まったらフラフラせずに待って打ち返す。攻めるときはパドルの打つ箇所を変えればボールの角度も変わる。特にパドルの1/3や1/2辺りを打てば変化球も可能だ。
とにかく焦らなければ……束になろうとも絶対に勝てる!!)
この玄人な戦法が功を奏したかヒート、ここまで何と失点ゼロで四人勝ち抜きという快挙を達成しました!!
灼熱のヒート、炎の魂を持つ男に似合わず冷静沈着な戦略がパーフェクトゲーム達成の要なのか。コートの中で不敵に微笑むポーカーフェイス。ホット&クール、まさに冬場の人間自販機であります!!
「こ、小金井様……」
「駄目です! アイツに全く歯が立ちません!!」
四人のボディガードらが為す術もなく泣きを見せる様は、傍観する地上の観客にも不安を煽り立てた。残るは小金井一人、あと3点失えば敗北は免れない。しかし……
「狼狽えるな、観客も戸惑っているではないか。この窮地でこそ戦いが映えるというものさ。ここは私に任せたまえ!」
強気の様相、そんな小金井の反応に贔屓する観客達の不安は一気に払拭された。そして小金井はボディガードの耳を借りて……
「 」
「はっ」
例の改造コードプログラム“GOLD”をゲーム内に仕掛けに一人のボディガードが捌けた。だがヒートはそんな不審な動きをも見逃さなかった。
「……皆、そろそろ面白くなってきた頃だぜ? そっちもそろそろ始めてくれ!」
『―――任せとけヒート!』
裏と表、二つの場面で交錯するDDG。その様子を知ってか知らずか、いよいよ局面は最終戦・小金井VSヒートの大将戦に持ち込まれた!
《小金井 0-12 ヒート》
「今のうち小切手の用意しとけよ小金井。そんで『地底の方々から金ぼったくってすんませんでしたぁ★☆』って皆の前で土下座で謝っときな今からでも!」
「………減らず口はそこまでだ、下等人種!!!」
―――ビキッ
小金井からのサーブ、平凡で代わり映えの無いサーブに余裕で返す準備も整うヒート。ボールがパドルに接近した……その時!!
――――スッ、ブーーーッ
「!!!!?」
《小金井 1-12 ヒート》
(((ニヤリ……!)))
―――未曾有の出来事!! 小金井の放ったサーブが、ヒートのパドルをすり抜けてそのままゴールに直行! しかしこのような技やパワーパッチはゲーム上存在しない!!
(…………それが、テメーのイカサマか…………!!!)
小金井が開発した改造コードプログラム“GOLD”、ここに始動! ヒートを翻弄するチートプレイはまだ序の口に過ぎなかった―――!!
〘◇Go to NEXT PHASE...!◇〙