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【PHASE5-8】最強のサプライシステム

 ――レース中に揺るがされる親友の裏切りに、見据えていたゴールが霞むゲームチェイサー・ハリアー。

 そしてそれに追い打ちを掛けるように敵軍勢、裏プレイヤー暴走族に装着させられたロケットパーツ、『ロケットターボ』により超加速状態に陥った多種多様の暴走マシン達。


 先程まで大差を付けていた筈のハリアーのスーパースポーツが、気の動転やらも合わさった所でジェット暴走族に抜かれてしまった!


「ッッくしょう! こんな所で凹んでる場合じゃないって時に!!」


 心が揺らぎ続けている時に後続マシンに次々と抜かれるという屈辱的ダブルパンチ。これには常にニヒルで装っているハリアーも焦燥する程に平静を保てず、コーナリングも思うように曲がれていない。負の連鎖が彼を容赦無く襲う!


『―――どうした? いつも僕のスクーターお構いなしにぶっ飛ばすお前が何を鈍足決めているんだ。今更相手に気遣いでもしてるつもりか!?』


 連鎖には連鎖か、ハリアーを焦燥させている張本人の鳶野がDDギアの無線を用いて精神攻撃に拍車をかける。



「……鳶野、何故俺っちをこうまでして裏プレイヤーに入らせようとくるかは聞かねぇけどさ、理不尽に力で捻じ伏せる事が“正義”だと言うんなら……そいつぁ致命的に間違ってるぞ!」

『ほざくな! それはお前がレースでトップに立ったときに言う台詞だ。サプライシステムを与えてくれる()()も無しに勝てると思うな!』


「―――!」


 正論をぶつけようとしたハリアーであったが、それ以前に暴挙を越える立場でなく、逆に反論されてしまった。それどころか仲間の概念までぶつけられては、ハリアーにとっては逆効果。何故なら、


(俺っちがヒート達を振り切って単独で行ったばかりに、こんな………!!)


 友人である鳶野の危機を知ったハリアーは、ヒートの加勢を拒んでたった一人で乗り込んだ事が仇になった。しかも救うはずだった親友がこの共謀の発端者であって、自らを陥れようとしている彼の様相に、ハリアーは落胆を通り越して己の不甲斐なさに唇を噛みしめる。


『落ち込んでる暇あったら後ろ観てみろ、追い抜かれるぞ』

「後ろ? …………オイ、マジか!」


 ハリアーの後方に迫りくる暴走流星群! 裏プレイヤー暴走族のロケット集団が、再び彼の背後から爆音掲げて差をどんどん縮めていく。このままでは更に勝利が遠退いてしまう!


「冗談じゃねぇ! 周回遅れなんざレーサーの恥だ!!」


 国際A級ライセンスを持つハリアーにとってはこの上ない屈辱にもなる“周回遅れ”。これには流石の彼も落ち込む場合ではなく、がむしゃらにアクセルを吹かして加速する。だが精神の乱れでコース外にはみ出るやら、マシンとの調和を測れず思うようにスピードが出ない。


 それでなくても『ロケットターボ』を装着されたマシンの時速500キロ以上の高速スピードでは非情にもスーパースポーツの差を問答無用に縮めていく。まさに感情無機質のリニア新幹線だ!!


「さっさとその鈍亀を追い抜かせ!!」


 鳶野の指令が無線経由で同胞の耳に届いた。ハリアーのバイクの後ろへマークし、スリップストリームを利用して今にもこの一番星が再び抜かされようとした………その時だった。



『はーい、そこの暴走車両止まりなさーい! さもなくば――――』


 ◎――――――――――――――――――◎

 【ヴァーチャル・サプライシステム】

 100Rコーナー付近に『バリアーウォール』発生!

 ◎――――――――――――――――――◎


 ヴィィィィィィイッ


「「「!!!!!」」」



 ――――ガシャァァァァァァアアアアアアン!!!



「裏プレイヤー相手でも怪我だけじゃ済まさねぇぞ、過激派野郎ども!!」

『―――――――ヒート!!!』


 それは、何者かの腑抜けた警告から起こった一瞬の出来事であった。


 ハリアーのバイクから僅か20メートルと迫った最中、コースの行き道を阻む半透明なバリアーのような壁が、バイクの背後から突如出現。それも発生から10メートルも満たない距離で裏プレイヤー族のマシンが回避することは到底不可能。

 ハリアーを除いた裏プレイヤーのレーサー全員がバリアーに衝突。殆どのマシンが大破、或いはレーサーの負傷によって続行不可となり失格した者も出た。



 ―――――それも全て、情け御無用のゲームチェイサー・ヒート達だからやれた事だ!!



「成程、レースをサポートするアイテムはコース内じゃなくて“外”ってか? 強がりなヤツを陥れるにはもってこいのD.D.Gだな。これで単独行動は危ないって身を持って分かっただろ、ハリアー!?」

『………あぁ悪かったよ! ホンっとにお前ら無しじゃ生きていけねぇよ俺っちは! あんがとよーー!!』



 仲間の窮地をヒートがサプライシステムを獲得して救ったは良いが、余計な皮肉りにはハリアーも素直になれず、ヤケクソ気味に感謝をDDギアの無線で交わした。

 本人に関わることは、仲間を巻き添えにしたくないばかりに単独行動を取りがちのハリアー。そんな短所も分かった上でヒート達はこのD.D.Gに駆け付けてくれた。それが彼にとって凄く嬉しかったのだ。


「お前らか、風見を唆して義賊紛いなチームを作ってD.D.Gに挑む愚鈍者は!」

 裏プレイヤーに引き入れようとする鳶野のプランを潰されかけて苛立つ鳶野。共謀の主犯者とゲームチェイサーが初めてコンタクトを取る。


「唆してんのはアンタの方でしょ?」

「ハリアーはな、自分の意志でゲームチェイサーに入ったんやで。そしてその決断に一切後悔なんかしてへん!」

 メンバーのアリスもツッチーも、ハリアーにちょっかいを出す鳶野に沸々と怒りを沸き立てて物申す。そしてヒートも……!


「一つだけ、ハリアーの()()()の俺からお前に言っておくぜ」

「………何だ?」


「テメーのひん曲がった正義を、他の人に意地でも押し付けようとするお前のような奴は“親友”とは言わない。【めんどくせー男】って言うんだよ、この上なく!!」


「―――――――――ふざけるな!!!!」


 ヒートの煽りは冷静沈着であった鳶野をも逆上させる。遮二無二襲いかかろうとする鳶野の奇襲をヒートはヒラリと交わし、その隙にアリスとツッチーは周囲に散らばったコース外のサプライシステムのデータ取得に専念した。


「おのれぇ、サプライシステム取得に三人がかりとは卑怯な!」

「卑怯? それはこの小説の2部分前に遡ってから、改めて言い直しな!」


 読み直しは読者の判断にお任せします。


 なにはともあれ、アリスとツッチーの援護によってサプライシステムデータは、ゲームチェイサー各々のプレイギアで獲得。あとは疾走するハリアーへと共有すれば彼に力を与えられるが、


「ハリアー、今まで奴等にどれだけ巻かれた?」

『さっきお前が壁貼らなかったら周回遅れになるとこだったぜ!』


 つまり、全長が4キロ半もなる富士スピードウェイのコースを一周遅れ間際で留まっているハリアー。今まさに彼のスーパースポーツバイクはアクセル全開コーナリング極限ショートカット状態で休む暇などありはしない。


「一応取ったヤツにスピードアップ出来るデータもあるけど、4キロも離れちゃ意味が無いな」


 更にヒート達が獲得したサプライシステムには加速データがあるが、一定時間しか持たないデータでは修復は難しい。

 だが壁間際で大クラッシュしたお陰で、裏プレイヤー族は全員疾走不可の状態。巻き込まれたレーサーの中で重傷によって強制失格になった者もいたが、数名は何とか走れる状態。しかし再起に時間が掛かる。


「そうはさせるか!」


 だがそれを抗うのは鳶野。温存したサプライシステムの起動により、何と大破した筈のマシン達があれよあれよと言う間に修復しているではないか!


 ◎――――――――――――――――――◎

 【ヴァーチャル・サプライシステム】

 裏プレイヤー族のマシンに『リペアーボンド』

 発動! 破損したマシンを完全修復!!

 ◎――――――――――――――――――◎


「さっさと走れボンクラ共!! またB2層の暗がりに叩き戻されたいか!!」


 苛立つ鳶野が裏プレイヤー相手に荒っぽい口調で檄を飛ばす。これにはイキっていた裏プレイヤー達もカチンと来るが、今はマシン走らすことに専念する。


「ヤバいぞ。人数は減ったが、まだ走れる気力があるようだ」

「また追い越されちゃうわよ!」

「何か、大差でも逆転できるサプライなんちゃらがあれば……」


 巻き返しに焦るゲームチェイサー。しかし更なる援軍が、彼に知恵を与えてくれた。司令室にて待機しているジョーカーからの無線だ!


『ヒート、このD.D.Gには、マシンを()()()にスピードを変える最強のサプライシステムがあると聞いた! それを獲得すればハリアーの逆転があり得るかもしれん!』


「最強のサプライシステム!? それって何処にあるんだよおじちゃん!」



『ゲームの概念からして、考えられる筋は一つ。――この富士スピードウェイに隠された“幻のコース”が最有力なヒントだ!』


 “幻のコース”、五十数年に渡るレース場である富士スピードウェイに廃止されたコースが存在するというのでしょうか!?

 まもなくレースは20周のうち15周を走破。即ち終盤戦に差し掛かろうとした所で、ハリアーの魂に異変が……!



(絶対に諦めないぞ、俺っちが本当に信頼してる奴の期待に応えてやんなきゃ、“旋風のハリアー”の名が廃るぜ!!)



 ハリアーの魂に眠る、四大精霊のうち“風”を司る精霊の意思が荒ぶろうとしていた。嵐の前の静けさ、所以か……!?



 〘◇To be continued...◇〙

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