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【PHASE5-6】サプライシステムと策略の黒幕

 ――富士スピードウェイでの大激走、依然として先頭は150メートル離れた大差で突き進むスーパースポーツバイクのゲームチェイサー・ハリアー。だがしかし!



 ◎――――――――――――――――――◎

 【ヴァーチャル・サプライシステム】

 ゴール前付近にて『モノリスウォール』出現!

 ◎――――――――――――――――――◎


「―――――!」


 突如ゴール地点手前に出現した巨大連壁、遺跡群等で意味深に聳え立つ岩である“モノリス”を象徴する障害物が時速300キロで激走するハリアーのバイクの前に出現! 距離としては約150メートル、当然ハリアーもこの出現に気付いてはいますがこの速度と距離、それに連々と立ち塞がる壁を突破するには細やかなハンドリングと瞬発力が物を言うが……?


「―――てやんでぃ、トロクセぇ妨害しやがって!」


 ハリアーの愛車『サウザンドストーム1000HSX』の高速スラローム走行、不規則に設置されて奥行きも何処に立っているか分からないモノリスをも屈せず突っ込んでいく。

 本来バイクでのスラローム走行は『減速→回避→加速』の順序で一時はスピードを落とさねば事故に繋がるテクニックだが、その事故に対する操縦者の()()()を超えて、そのスピードをも自分のものと化したマシンはどうなるか?



 ―――ギュィィィイイイイイイイッッッ


 アクセルワークによって膨らむ筈のカーブの角度が、屈折するようにジグザグにカットされ、まるでモノリスの合間に糸を縫うように駆け抜けていく! このカーブ、嵐転じて“イナズマ”を巻き起こした!!


 かくして、モノリス群の妨害は辛くも突破。後続の暴走族軍団が接近した頃には、モノリスは消滅していった。



『“ゲーム上の事故”に見せていかねばいけない。後々警察やらがうるさいからな。だがハリアーめ、通常のバイクスラロームでも接触事故を起こすと云われるモノリス群を減速せずに突破するとは。―――地底空間出身の()()()()()()()()()所持者と言われるだけある』


 暴走族内で交わした無線の会話。ここで分かった事は、彼らは勧誘を意地でも断るハリアーに対し、生死を問わない妨害に徹すること。

 そしてハリアー自身が、地底空間出身にしてF1出場に欠かせない“スーパーライセンス”という最上級グレードのライセンスを所持している事である。


 しかし社会から淘汰された者の居場所である地底空間で育ったハリアーが、何故国が認める国際ライセンスを持つようになったのか。それは追々話すとしても、彼をここまで成り上がらせたのには相当な執念があってこそだろう。



 そう言ってる間に、裏プレイヤー集団はさらなる妨害に徹する!


 ◎――――――――――――――――――◎

 【ヴァーチャル・サプライシステム】

 TGRコーナーにて『クリスタルロード』出現!

 ◎――――――――――――――――――◎


 長い直線のメインストリートロードを終えた先に待つ第一コーナー『TGRコーナー』。

 後続車が前の車を追い越す絶好のチャンスである“オーバーテイク”の見所がこのコーナーであるが、大差で距離を開けるハリアーがTGRへと差し掛かったその時、第二のサプライシステムが発現。


 結晶のごとく透き通った路面『クリスタルロード』によって、TGRロードは水分を多く含んだ凍結道路と化した!!


「慌てんな、凍結した路面は急ブレーキしたら終わりだぜ」


 オーバーテイクのカーブも何のその。無理なブレーキは掛けず、滑らかな弧を描いてスーパースポーツバイクはスリップせず凍結されたクリスタルロードも突破。


 しかし、先程のモノリスと違って凍結ロードは未だ効果を持続している。これでは後続の暴走族軍に無益なスリップ事故を引き起こすだけだが……?


(ブレーキを掛けるどころか、車輪が流れる音がしない……!?)


 ハリアー特有の地獄耳で後方の様子を伺うが、エンジン音は高鳴れど、タイヤが路を走るための摩擦の音がせず。ただ風のように靭やかに流れる音がエンジンと重なって聞こえてきた。

 改めて後方車の様子をバックミラーで確認するや否や、頭の鷲尾(わしお)を含めた軍勢らのマシンタイヤを凝視すれば、F1やGTマシンのタイヤが路面に接触していない!


 これを別の表現で例えるなら“浮動的”、もっと言えば“フローティング”状態だ!


「オイ、それもまた“サプライシステム”ってヤツか!?」

『その通り! レースの恩恵は我々族に味方しているのだ!!』



 ―――その時、鷲尾の豪語にハリアーは違和感を感じていた。


 今回のD.D.G【ヴァーチャル・フォーミュラX】の要となっているシステム『ヴァーチャル・サプライシステム』。本日三度に渡って著しい変化をレース場で展開していったシステムなのだが、それら全てが裏プレイヤー族に味方している。


 そもそもハリアーは、そのサプライシステムがどんな実状かは理解していない。

 マ◯カのようにアイテムボックスで実現化しているかと思ったが、コースを一周してみてもそれらしきものはなし。マシンに搭載されているかと思えばそれもなし。


 ではどうやって裏プレイヤー族を味方するようなサプライシステムを三度も発動させたか?

 ハリアーは既に20メートル付近まで接近した後方の鷲尾に対して、こう考察した。



「もしかしてそのサプライシステム………コース内じゃなくて、()()()()で獲得するものじゃないのか?」

『何故そう思った?』


「【ヴァーチャル・サプライシステム】を表記するクリアーウィンドウだ。さっきのモノリスと凍結クリスタルロードの時は俺っちにも視えるように表記されたが、お前らのフローティングされたタイヤもサプライシステムだったら、何で俺っちにそれが表記されない?」


 それが確信を得た理由としても、これだけでは決定打にはなりにくい。続けてハリアーは抗議する。


「フローティング以外のサプライシステムは()()()()、つまりレース場で展開されるから俺っちにもその情報が表記された。

 だがお前らの付けているフローティングタイヤは、お前らだけ付加された効果、即ちそれは【味方を対象にするメリット効果】だからお前ら族だけが表記される仕組みになってんだろ?」


 ハリアーも他のゲームチェイサーに引けを取らない推察力を持つ。ゲームのログを示すクリアーウィンドウの表記がサプライシステムの真相の皮を剥ぎ始めた。これには鷲尾とて否定し続けても見苦しいだけ。潔く真相を明かした。


「………バレちゃ仕方ない。お前のお察し通り、俺ら族は()()()()から獲得したサプライシステムで浮上効果を得たんだ」


 ◎――――――――――――――――――◎

 【ヴァーチャル・サプライシステム】

 裏プレイヤー族全員『フローティングタイヤ』

 付加! 路面の影響を受けなくなる!!

 ◎――――――――――――――――――◎


 これがサプライシステムの真相。潔くそれを明かした鷲尾が言うということは嘘ではなさそうだ。……だがこれだけでは話の論点から解決はしていない。


「そうだぜ、サプライシステムの正体は教えてやったが、お前は何を知りたがってんだ?」


「俺っちが聞きたいのは、コース外でサプライシステムを取った奴が誰かって事だよ!!」



 ………そう言われてみれば確かに不可解な点が一つあった。裏プレイヤー族総員がこのヴァーチャルレースに参加しているのであれば、誰がサプライシステムを獲得してハリアーの妨害と族の援護に加わっているのか?


「頭を名乗ってるお前が先陣切って相手してるんであれば、それを利用してる()()()ってのが居るはずだ。どこのどいつだ、その加担してるヤツは!?」


『―――――それは、君が一番知っていることだろう?』


 この瞬間、ハリアーのフルメット経由で装着していたイヤホンから流れた細々とした声が聞こえた途端、彼はその耳を疑った。


 その声は野太かった鷲尾の声でもない。そしてハリアーにとっては聞き慣れた声。小心的でビクビク震えているような感覚から一転して、良からぬ事を企んで吹っ切れた感覚へと寝返った感覚に陥った彼はコース外のギャラリーを見渡す。



 コース中間地点『ADVANコース』のカーブ付近、それによる砂埃を避けるフェンスにてたった一人、傍観する者をハリアーの眼が捉えた。



 ―――華奢な身体に水色カラーの髪を携えたその男。ハリアーの親友にして、裏プレイヤー共の片棒を担ぐ者。



「……………………鳶野(とびの)?」



 鳶野翔太(とびのしょうた)、お前は一体何故、地上を恨む者の意を担いだのか!?



 〘◇To be continued...◇〙


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