【PHASE4-10】並び重ねるは美への花道
【GAME RESULT so Far】
・アリス 96点
・天々 57点
・朱雀 65点
・マリエ 93点
※アリス分身Bのターンによる手札ラスト一枚
セット直前に無効・消滅! 一体何が!?
――ゲームチェイサー・アリスの切り札、『ウンディーネ・ミラージュ』による分身連続プレイにより決着も確実か……と思った矢先。
最後のドミノ牌をセットした時、何処からか迸る閃光に牌が弾かれてまさかの消滅。これが決まれば得点ゲット・100点突破で勝利も見えた。だがそれを阻んだのは……門矢マリエのスキルチップであった!!!
◎――――――――――――――――――◎
・マリエ/スキルチップ
『ハンド・クラッシュ』発動
発動対象:アリス ドミノ牌セット無効・消滅
◎――――――――――――――――――◎
「嘘でしょ……」
アリス、最後の最後で挫かれた勝ち筋に顔は蒼白。更には遠くで見守っていたヒート達はおろか、最も信頼していた後輩の海颯までも愕然としていた。
「おバカさんねぇぇぇぇえ!!! 切り札は最後まで取っとくのが常套手段なのに、気を緩め過ぎたわね小娘えええええええ!!!!」
本性の化けの皮が剥がれきったマリエの譏りの一声。それにつられて朱雀も天々も同調するように嘲笑う。モデル軍団も以下同文。
罵詈雑言に混じえて、己の不甲斐無さに項垂れて唇の皮膚をぶち破らんばかりに噛みしめるアリス。何とか勝ち誇るクレオパトラ三人衆の嫌味ったらしい顔を見まいとゲームの状況を確認してみると。
(…………あっ)
悔しさから一変、拍子抜けて笑顔が綻ぶアリス。俯向いている為彼女らは気づいていないが、調子付いた嫌味は連鎖するように続く。
「やっぱり地底人は墜ちる所まで墜ちるのよ〜♪」
「雑誌に私達と表紙並んでいい気になってくれちゃって、生意気なのよ!」
「でもでも〜、『究極の美』を手に入れればアンタらに逆らう事なんか出来っこないし〜」
「私と」
「あたしと〜」
「そしてこの私のラスト牌セットで……」
「「「クレオパトラ三人衆、大・勝・――――」」」
「さっきからバカが何言ってるの? あたしが手札無くなった時点でもうゲーム終わってるんだけど」
盛り上がってるとこ水挿して申し訳ありませんがクレオパトラ三人衆の皆さん。もうゲーム結果出てますよ。
◎――――――――――――――――――◎
【GAME RESULT】
・アリス 100点
・天々 57点
・朱雀 65点
・マリエ 93点
☆WINNER ゲームチェイサー・アリス!
◎――――――――――――――――――◎
「…………………………………………………えっ」
『どういう事なの?』と言いたげなマリエさん一同。変わって私が説明しましょう。
セバストポリ同様、手札を全部出して上がったプレイヤーはそれ以外のプレイヤーの手札の値を点数に加えるが、ファイブアップは全ての手札の総点数を5で割った数が得点に加算してフェイズは終了となる。
つまり、先程マリエが仕掛けたスキルチップでアリスの最後の1枚を消滅させた時点でアリスの上がり。セットは出来なかったが、最後の精算得点が非常に運が良かった。
朱雀は〔0・4〕〔1・3〕の2枚、天々も同じく〔1・1〕〔0・3〕の2枚、そしてマリエの手札は〔3・4〕のみ1枚。本当に朱雀→天々→マリエの連携プレイで45点プラスさせてマリエに100点突破させる計画であった。
この三人の手札の値を全て足し算すると【20】! 更にそこから5で割り算すると……【4】!!
アリスの96点から加算されてジャスト100点獲得したって訳なのだよ!!!
「「「ガーーーーーーーン………」」」
ゲームもモデル業界も一番でなきゃ気が済まない愚かな思考が、大きな仇となったのだ。ここで皆様の心に代弁して私から一言述べましょう。
『ザマァみろ〜〜〜〜ッッッ!!!!』
「……最後の得点加算ルール、すっかり忘れてたは(放心)」
「ずっとファイブアップルールの高得点気にしてたから……」
「穴があったら入りたい……(半泣き)」
天国から地獄へ直落下している様は非常に分かりやすいクレオパトラ三人衆。落ち込んでるところ悪いですが、あともう一つやることがありますよ。
「あんたら三人に、DDGの【罰ゲームコール】発生してるわよ。ルール違反報告によるペナルティですって」
「罰ゲーム!? 何言ってるのよ私達は正々堂々とアンタ相手に――――」
「はい、これ証拠」
「「「げっ」」」
そこでアリスが取り出したのは、プレイギアから共有された画像写真。しかもモデル軍団の裏工作で三人の手札の状況を裏公開させていた犯行写真であった。提供は裏の裏で犯行を捉えたゲームチェイサーがお送りしました。
「罰ゲームって……一体何するつもりなのよ!?」
「それは多分、自分のコンプレックスに関わるんじゃないかしら? 面白いものが待ってるわよ〜♪」
意地悪く笑みを浮かべるアリス。DDGではルールに違反したプレイヤーには勝ち負け関係無く心身共に痛手となる“罰ゲーム”が待ち受けるという。その罰は悪質であればある程重さも比例するとか。それはともかく罰ゲーム執行!
『パニッシュメント・タイム』
――――ゴゴゴゴゴゴゴ………
「な、なんの音!?」
その音はズバリ、VRのホールから突如空から発生した大量の水。それが滝のごとくクレオパトラ三人衆の頭上にて降り注いだ!!
「「「きゃああ―――――――――――!!!!」」」
小娘共の悲鳴をも打ち消すほどの滝の流れはまさに洪水。用意周到に折りたたみ傘を持っていたアリスは何の被害もなく、ずぶ濡れになった三人の無様な格好にプークスクス☆と笑ってるではないか。
しかもこの滝水、ただの水と思ったら大間違い。
「……? さっきの水、何か良い香りしなかった?」
「みかんみたいな柑橘類の匂い」
「それに水というより油に近かったような……」
「それ、アンタらの化粧だけでなくヘアカラーも服の生地色も落としてくれるクレンジングオイルよ! つまり三人ともすっぴん……!」
「「「!!!!!」」」
この事実を知った途端、クレオパトラ三人衆の血の気が引いた。手鏡を取り出して恐る恐る自分の顔を観た時には、彼女の精神はもうこの世には無かった。だってそうでしょう。
金髪のカラーが剥げた黒髪には白髪が目視され、頬にはシミにたるみ。更にはブランド服の色合いもポリエステル繊維に溶け込んで着心地は最悪。例えるなら20代から三十年歳食った龍宮城状態に近い。
遠目で見るならまだ耐えれますが、近くに寄れば寄るほど日頃の行いが悪いせいか、妬み嫉みが詰まった感覚に苛まれそうでオ゛ロ゛ロ゛ロ゛ロ゛ロ゛ロ゛
「私を見て吐くなーーーーー!!!!」
「こんな仕打ち、マミーにもされたこと無いのにッッ!!」
「もうお家帰るううううううう!!!」
絶望と悲哀に包まれたクレンジング……じゃなかった、クレオパトラ三人衆。必死に顔やら服やらを隠し、挙句の果てにはモデル集団の壁に覆いながらVRフィールドを退場したのでした。
「あれじゃ一分経たない内に週刊誌にスキャンダルされるわね。性根通り汚い顔だった〜!」
対して心も顔も綺麗なアリスさん。ゲームでも実際にでも倍返し出来て清々した模様。
改めて『ドミノ・ストリート』を逆転勝利した水瀬ありさこと、ゲームチェイサー・アリス! 勝者には例の報酬を!!
◇――――――――――――――――――◇
【ドミノ・ストリート】勝利!
・勝利金額20万円獲得!!
・報酬【究極の美】獲得!!
◇――――――――――――――――――◇
「さて……『究極の美』って一体何なのかしら?」
と、アリスが辺りをキョロキョロ見渡してもそれらしきものは見つからない。と思いきや、プレイギアからの報酬メールには続きがあった。
◇――――――――――――――――――◇
※【究極の美】報酬の受け取り場所は、
ドミノ牌のルートを通った初期地にあります。
◇――――――――――――――――――◇
「って事は、また最初の道に戻るってこと?」
ゲームスタート前には何も無かったキャットストリートの通り。そこに『究極の美』なるものは存在するのか。アリスは激戦によって並べ重ねたドミノ牌を遡るように辿る事に。
〘◇Now Lording◇〙
――キャットストリートこと『旧渋谷川遊歩道路』に張り巡らせたドミノ牌、後半分岐した道筋で寄り道しながらも、表参道の直線をクロスした地下道を潜ればそこは裏原宿通りに繋がる一直線のドミノ道。
牌の道を辿る先々、両端には有名ブランドの店たちがアリスの健闘を称えるかのように並び立っていた。
(ゲームに夢中で気付かなかったけど、あたしが裏原宿に初めて寄って、彼処のお店であたしが地底育ちである事なんか気にもせずに店長がおすすめの服薦めてくれたっけ。あのときは嬉しかったなぁ……地上で初めて優しくしてくれた場所だもの)
アリスも辿るうちに、モデルになりたての頃の自分を思い返して染み染みとこの静かな遊歩道の風景を愉しむ。薄暗がりな地底育ちの彼女にとって原宿は憧れの地であり、理想の自分を創り上げる第一歩を踏み出した地であった。
だが今のように気丈に振る舞う彼女も順風満帆な日々を送れた訳ではない。クレオパトラ三人衆のように苛め抜かれ、差別に蔑まれた事も数え切れないことがあった。
それでも彼女がこうして地上のモデル集団に屈せずDDGに勝利した影には、地底空間のモデル事務所『マーメイド』の恩師、雨宮事務長に報いたいと思う一心があったから。
そして遠方で激戦を見守った後輩モデルの海颯も、そのアリスの根性から心を動かされようとしていた。
「―――ここね。これが究極の美……?」
辿り着いたドミノ牌最初地点。アリスが置いた〔0-6〕の牌の上には、いつの間にか小さな石碑が置かれていた。この石碑こそが『究極の美』と呼ばれる代物。不思議な魔力を得たり、精霊的なものが現れるのでもなく、ただ石碑に彫られた字が記されただけであった。
「……………!!」
その文字を読んだアリス、咄嗟にプレイギアで着信を入れてヒート達に連絡を取る。
「ヒート、あんたの近くに海颯が居るんだよね? 直ぐに初期地まで来て!」
急に呼び出しをくらったヒート達、何のことか分からぬまま石碑の元へ連れてかれた海颯。
「あの、ありささん……? 一体何を……」
「この石碑の字、読んでみて」
言われるがままに石碑に刻まれた文字を黙読する海颯。そこにはある有名ファッションデザイナーの名言が刻まれていた。
【“美しさは、あなたがあなたらしくいると決めた時に始まる”―ココ・シャネル―】
フランスの世界的ファッションデザイナー、ココ・シャネルが放った名言。彼女の人生も過酷なものであったが、常に流行の波に乗りかつ気高きままに己の美を追求した結果、今尚美女達の記憶を残すファッションブランドを創り上げた偉人。原宿にもそのブランド店が多数ある。
アリス、海颯はこの言葉に感銘を受けたのだった。
「……ねぇ海颯。シャネルの香水とか、カメリアとかジュエリーって着けたことある?」
「香水なら……、No.5の優雅な香りは一瞬でも自分がトップモデルになったつもりになりました」
「それってさ、この言葉が物語ってるんじゃない?」
「………“あなたがあなたらしく”」
「さっきのクレオパトラバカとかに蔑まれたり、嫌味言われたり、嫌がらせさせられたりするのってさ、自分より綺麗な人への妬みだと思うの。それで優越感魅せたいが為に、編集部におべっか使って契約なんか結んでるなんてザラにある事だし。そんなの本当の美って言えるのかしら?」
「ありささん……」
「海颯は、海颯のままでいいの! 心が豊かな人程可愛い人なんて居ないんだから!!」
―――シャネルの信念と、それを受け継いだアリスの心押し。尊敬する二人の言葉に後押しされた海颯は先程までの小心な気持ちを打ち破るように、シャンとした顔で決意を固めた。
「……ありささん、やってみます。自分が誇れる自分を見つけるために私もモデルを続けます! 私達が地底空間初のトップモデラーになりましょうよ!!」
「そうこなくっちゃ! 差別も偏見も逆らい続けて、私が新境地を創っちゃお!!」
ピカ―――――ッ!!!
「「?」」
彼女達の決意が、シャネルの石碑に反応したのでしょうか。石碑全体に光が迸り、そこから出現したのは何と黄金の欠片! まさか、これは……!?
◇――――――――――――――――――◇
・レア報酬【栄光の太陽の欠片】獲得!!
◇――――――――――――――――――◇
大いなる秘宝“栄光の太陽”の欠片、三個目がゲームの隠し報酬に隠されていたのだった!!
「こいつぁ驚いたなぁ! シャネル様の遺産か?」
「バカ、欠片集める趣味はねぇだろ」
「綺麗事になってまうが、アリスの美意識が栄光の太陽を呼び起こしたかも知れへんな」
とヒート達ゲームチェイサー一同が冗談をかます中で、アリスも思いの丈を呟いた。
「あたし達なら“かけがえのない人間”になれるかしら。――ねぇ、シャネル姉様?」
時代と偏見の波に逆らい、泳ぎ続けるは己の美しさの為に。何時しか地底空間の若き美女が、地上に君臨するトップモデルとなる為に。今は殻に籠もった卵、孵って育てよ美の翼!
――いざいかん、逆境に抗う若きシンデレラ達よ。アリス、海颯、君達に幸あれッッ!!!
〘◇PHASE3 THE END◇〙
▶▶▶▶ NEXT GAME CHASERS▽
地底空間随一のレーサー、ゲームチェイサー・ハリアー。
彼の友人から贈られた一通のメールから、暴走軍団達のデスマッチレースに巻き込まれる!
次なる舞台は静岡・富士スピードウェイ!!
★この小説を読んで『ゲームウォーリアーも良いけど、ゲームチェイサーも面白いじゃん!』と思った皆様。是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!!
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