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【PHASE4-9】慈しみが、水の精霊を喚ぶ

 【GAME RESULT so Far】

 ・アリス 46点

 ・天々 17点

 ・朱雀 30点

 ・マリエ 53点

 ターン順:朱雀→天々→マリエ→アリス

 

 ――高飛車女の強引マイウェイ、無理強いのドミノランウェイ炸裂だ!


 アリスの番を見計らって発動した魅惑の催眠カリスマオーラ、PAS【クレオパトラ】の黄金色波動が己の美を一番と信じるモデル軍団をも洗脳させる。

 その結果、今まで並べ重ねたドミノ道のダブル牌、横向きの牌を縦に置き換えての道路構築。道の末端に置かれた目の全数値を得点に出来るファイブアップルールにおいてこれは致命的な痛手となった!


(どうしよう、さっき分岐していたドミノ牌も真っ直ぐに位置変えられたら置ける牌が限られちゃう……!)


 アリスもこれには緊迫の意を示す。何故ならこのドミノの岐路からして置ける目は最末端の〔3〕のみ。かなり置ける牌が限られる。よってファイブアップの得点は現時点で2点。これを補おうにもアリスは不運にも置ける手札牌は〔3・4〕しかない。これでは5の倍数で加算される得点も獲得は絶望的だ!


「アッハハハハハ!! 無様ねぇ〜〜! ロクにポイントも得られないで終わっちゃうなんて。――ほらかわいい後輩ちゃん、私達のドミノランウェイを直しなさい」


「「「ハッ!」」」


 アリスの番が終えたと見るや否や、再びマリエのPAS催眠によって操られるモデル軍団。ダブル牌の配置を戻して末端ポイントを通常通り【35】にポジションチェンジしていった。歩行者天国の規制解禁か!?


 更にゲームは加速、天々が仕掛けた〔2・2〕のダブル牌から分岐されたドミノ道がクレオパトラ三人衆の牌置きの自由を物語る。置ける目は2・4、更に正面は4、右・左はそれぞれに2に置ける場所を選べる並木道。

 朱雀、天々の二人も得意げになって牌を回し、マリエも以下同文。アリスの番になれば再びPASの力でダブル牌を動かして得点を操作する。この繰り返し。終いにはこのような結果となった。


 ◎――――――――――――――――――◎

 ・アリス 51点

 ・天々 57点

 ・朱雀 65点

 ・マリエ 93点

 ◎――――――――――――――――――◎


「あともうちょっとで100てぇぇぇぇぇんッッ!!! 究極の美は私が貰ったわぁぁああああ!!!!」


 その余裕は調子に乗れば乗るほど歓喜も有頂天となるクレオパトラ三人衆。モデル軍団引っ張り出してあれだけやりたい放題されてはアリスは為す術もない。粋がって勝利を確信する高貴(笑)な連中ですが侮るなかれ、アリスの番はまだ残っている。


(今の盤上は分岐点が3つのまま。置ける目は2・3・6とある程度自由は効くし、今の末端総得点は【40点】。――――どっちにしても、ここで決めなきゃゲームは終わる……!!)


 “背水の陣”とは、まさにこの事でありましょう。アリスは残り49点をこの番で獲得しなければ、天々・朱雀の連携からして確実に100点突破は免れません。何しろPASによる列改ざんもあるのですから!



 ………しかし、この状況でどうやってこの1ターンで打破出来るのか。

 普通のプレイヤーなら最早これまで降参の意に白旗掲げるでしょうが、アリスは違う。ゲームに最後まで諦めない覚悟から沸き立つ、ゲーム戦士の魂がある。彼女のPASはズバリ、【水の精霊・ウンディーネ】。


 若い男に恋を芽生えると魂が宿ると言われる精霊に能力を授けられたアリス。二十年生きてきて恋もメダカも芽生えた事など皆無な彼女ですが、清き水に秘められたPASを放つのは今しかありません!


(何でここでプライベート振った?? 関係ないじゃん)

 失礼しました。


「……まだ諦める気にならないの。地底空間出身の分際で良くもまぁ懲りないのね。モデル業界にも、ゲームにも!」

 嫌味全開成分100%のマリエがほざくなら、返してみせましょアリスの説教!


「貴方こそ何をあたしや海颯に執拗に嫌がらせしてくるの? 悔しいけど顔も身形も綺麗な癖に、やってることが下衆いのよ! あたし達地底空間のモデルがそんなに気に食わないわけ!?」


「その通りよ。―――気に食わない通り越して目障りなのよ!! アンタら下々の立場が必死に抗って努力してる様を見るのがクッソ腹立つんだよ!!!!」


 遂に厚化粧の裏に隠された腹黒い本性! マリエの理性をもぶち破るその顔は、雑食にして食い荒すヤマンバの如し気迫だ!!


「弱者が一度堕ちた場所から再び這い上がれると思ったら大間違いよ!! 私がトップモデルとして頂点に君臨し続ける為には、アンタみたいに反抗してくる小娘を徹底的に叩き潰すに限るわ!!! 二度とその地から五体満足に上がれないくらいにね…………!!!!」


 傲慢極まりなし、底なし沼の美に溺れた女の腐りきった性根。それに対してアリスは怒りを通り越した何かが心の器に荒ぶり、それが間もなく開放されるPASのエネルギーへと変換していった……!!


「………絵に書くような弱い者いじめ。あたしは何百、何千と受けてきたけど、吐き気するほど全部胸くそ悪い。当たり前でしょうよ、貶されて喜ぶドMなんか居ないもの」


 アリスはその憤りを右拳にギュッと込めて、身体の中央からPASの波動を充填していく。その波動色は水色。清き海のアクアブルーな魂がみるみるとその色合いを増していく………!!


「テメーの様相に託けていじめを助長する美人(仮)さん。いっぺん泥水で顔洗って汚い面を鏡で見てきなさい!! ―――PAS発動【ウンディーネ】!!!」


 ――招来せよ我が魂! 水面に映りし汚れなき水鏡の力が、ゲームチェイサー・アリスに力を与え給う!!


 ◎――――――――――――――――――◎

 ・プレイヤー1 水瀬ありさ(アリス)

 PAS【ウンディーネ】確認。

 ◎――――――――――――――――――◎


 キャットストリートに迸るアクアブルーのビッグウェーブ! その鼓動に一同は身構えて衝動に耐えつつ、瞑った眼を観改めると、不思議な展開が待っていた!!


「―――――え? 何か小娘が、()()()()()??」


 何をおっしゃいますかこんな時に! マリエ達がアリスが増えたとかおかしな事を言ってますが、この通りアリスさんは一人、二人、三人、四人…………え??


 アリスが合計10人!!! PASの力は分身まで可能にしてしまうのか!?


「これぞウンディーネ流遊奥義、【ウンディーネ・ミラージュ】!!」


 アリスのPASによって生成した大量の水。そして空気と太陽に触れる事で水とアリスの身体を反射して鏡の役割を果たし、それを実体化させてしまうというぶっ飛び能力を見せつけたアリス。しかもこの分身、本物の脳からリモートで操作して別々に操ることが出来る優れもの!


「だ……だから何よ! 小娘が束になった所でゲームに影響するとでも」

「そんなん言う前に、順番見てみたら?」


 マリエの反抗に一蹴するようにアリスは順番を表記したクリアウィンドウを注目に促す。とんでもない事になってます。


 ◎――――――――――――――――――◎

 ターン順:朱雀→天々→マリエ→アリス

 →アリス→アリス→アリス→アリス→アリス

 →アリス→アリス→アリス→アリス

 ◎――――――――――――――――――◎


「………………………………は???」


「あたしのPAS分身は、あたしの手札を維持してそのままゲームに参加する事が出来るの。十人分だから当分はアンタらの番は来ないわね」


「「「え゛え゛え゛え゛ええええ!!!???」」」


 ウンディーネ分身、緊急参戦!! PASの力で参加人数を増やし割り込んでクレオパトラ三人衆の番を順延させる作戦、前代未聞だ!!! 未曾有の事態!!!!


 しかもこの分身はアリスの手札と()()されてプレイが行える。即ち、現在彼女の手元にある3枚のドミノ牌をれんちゃんで出すことが出来る! しかも……!


「誰がそんな事させるか!! 後輩ちゃん皆様方、ドミノ牌を……」

「そっちがさせるかあああああああ!!!!」


 あっとここで!? クレオパトラモデル軍団、アリスのウンディーネ分身が乱闘状態!! ドミノ牌改ざんを阻止する分身、それに抗うモデル軍団が高級な衣装が引き裂かれるにも顧みず暴れている! キャットストリートのキャットファイトだ!!!


「何してるの天々、朱雀! あの地底モデルモドキを何とかしなさい!!」

「は、はい!!」


『じゃアンタはいかんのかい』と一瞬心に思いながらも加勢する天々と朱雀。それを阻むのは前に立ちはだかる長いノズルの“フリーズ・ガンナー”。


「まだあたしにはG.C.Tがあるのを忘れたかしら? 冷凍食品にされたくなきゃ戻りなさい!!」

「「うっ……!」」


 これが本当のフリーズ(止まれ)なんでしょうね。


 天々&朱雀を静止させ、分身によってモデル軍団の妨害も阻止。あとは己の手札に眠る牌を出すだけ……!


「出せる目は2・3・6! 出せる牌は……全部あたしの手札にある!!」

 アリス(本物)の手中に宿した3枚のドミノ牌、これより勝利への連鎖と共にゲームの結末が見える!!!


「1枚目、中央の2に〔2・4〕セット!」


 本物のアリスのターン終了、総得点は【42】。その手札を今度はモデルに4の字固めしている分身Aに共有!


「2枚目、右の3に〔3・6〕セット! 総得点45点ゲット!!」


 《アリス 96点》


 遂に目標100点までニアピンに迫ったアリス!! ラストの手札を今度はモデルに往復ビンタをかます分身Bに共有、からのラストプレイング!!!


「ラストッッ、左の6に〔6・1〕!!!」


 最後に再び5の倍数ボーナス、この時点で40点加算でフィニッシュ…………かと思われた、その時!!



 バシュン………ッッ!!!



「――――――――――――え?」



 最後のドミノ牌が、セット目前でマリエによる弾頭に弾かれて、まさかの消滅―――――!!!



 〘◇To be continued...◇〙

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