【PHASE4-6】スキルチップ×G.C.T
――TIPS――
【スキルチップ】
PASを覚醒していないプレイヤーや、ゲーム戦士のさらなる戦略向上を目的にWGCが独自に開発したゲームサポートアイテム。
SDカードのような形をしており、DDギアのモジュール部分にイグニッションする事により、劣勢なゲームを逆転する能力を繰り出すことが出来る。
※ただし使用は各ゲームにつき、一人3回まで使用可。
――ゲームチェイサー・アリスの前に立ち塞がった対戦相手の新兵器!
DDGの管理機関『WGC』が開発したスキル発動ツール【スキルチップ】を発動させた門矢マリエ。これによりUN◯のスキップカードの如し、アリスのターンをすっ飛ばしてしまった! 現在アリスの持ち札は2枚、ターンのスキップはドミノ牌の消費を遅れさせる!
「いい気味〜☆ せっかくリードしてたのに順番飛ばされるなんて! 天々、追い打ち掛けちゃいなさい」
「は~い、徹底的に!」
次のターンはマリエの取り巻きである天々。天然そうな素振りとは裏腹に腹黒い性根が見えかかる小娘も、スキルチップを使用した!
◎――――――――――――――――――◎
・天々/スキルチップ『テイクドロー・3』発動
発動対象:アリス 手札2枚→5枚
◎――――――――――――――――――◎
(うわぁ、うっざぁぁぁぁ………!!)
これはエゲツないぞ! 消費する事が目的のドミノ牌を3枚余分にテイクアウトされたアリス。遅れた御歳暮、しかも嫌な相手からの奉仕ほど余計と思うものは無い!
しかもこれだけでは満足したりない地上モデルのドSぶりは執拗な仕打ちに拍車をかけた!
「朱雀、次よ」
「オッケー、三連目!」
続く朱雀が3回連続のスキルチップ発動!
◎――――――――――――――――――◎
・朱雀/スキルチップ『ターン・リバース』発動
ターンの順番・位置逆転!
ターン順:朱雀→天々→マリエ→アリス
◎――――――――――――――――――◎
(…………これ何時からUN◯になったの??)
ドミノに別のゲームを混ぜる勢いの『スキルチップ』、既存のゲームらに良く見るテンプレート要素をアイテムとして投入するだけでゲームはガラリと変わる。これは今までゲームチェイサーが挑んだゲームでPASを使う時にも言える事。
故にこのルールを採用して、それが当たり前の風潮を作り出している近未来のゲーム。アリスもこの展開は予想はしていたがUN◯みたいになるとは思わなかったでしょう。
―――結果、順番の逆転に従って牌を全部出し終えたのはマリエ。ルールに従い他の三人のプレイヤーの牌の目の足した数がマリエの点数となる。ラウンド1は21点、アリスのドローされた牌が痛手になった。これにはクレオパトラ三人衆、調子ノリノリの天狗状態だ!
(こんなラウンド、アンタ達にくれてやるわ。調子に乗った分は倍にして返すから見ていなさい!)
アリスは敗北したラウンドに引きずらず、気持ちを切り替えて次ラウンドに備える。逆襲の時近し……!
〘◇Now Lording◇〙
――さてギャラリーの様子も見てみましょう。孤軍奮闘戦うアリスを応援するは、ご存知ゲームチェイサー男三人衆と、アリスの後輩の海颯ちゃん。マリエ集団にしてやられてさぞ御立腹してると思われましたが……?
「やっぱり保険仕掛けてきたか、あの厚化粧共め 」
「スキルチップって最近提供された奴だろ。幾らするんだアレ? 」
「一つ5000円や」
「「地味に高……」」
ちょ、ちょっとちょっと! 男三人が原宿の表参道でしゃがみこんで、何をタッパーに詰めた肉巻きおにぎり食べてるんですか!!
「ヒート特性のイベリコ豚を使ったスタミナ肉巻きだぜ。そして語り部の分は無い」
要りませんッ! てか断言してる所が余計に失礼ですねアンタら。
「皆さん何でそんなに呑気にいられるんです!? ありさ先輩が圧倒されてるってのに!」
ほらほら海颯ちゃんにも言われてますよ!
「……あのな、まだゲーム始まってばかりなのに焦ってちゃ、勝利の女神様々も愛想尽かしちゃうぜ」
「そーゆー事。焦るならゲームの終盤になってからするんだ。現にアリスはゲームに集中してるだろ?」
ヒートとハリアーが遠隔ドローンで映したモニターのアリスの状況を指差すところ、確かに彼女に焦る様子は全く見られない。
「おそらくあのバブラーもどきらがスキルチップ使って粋がってるのを承知で第一ラウンドを譲ったんやろ。となると、次ラウンドで……」
と、ツッチーがアリスの行動を予測していた時に丁度DDギアのモジュールから無線音が入った。
『ツッチー、次のラウンドでG.C.Tを使わせて! コードは【002】!』
「―――あぃよぉ。出来立ての新作、存分に暴れてやんな!」
そう言うとツッチーは自前のノートパソコンを使ってG.C.Tのカプセルを彼女のプレイギアへ転送させた。
「……何で、先輩も皆さんもそんなに余裕なの……?」
海颯は虐められた傷心から心にゆとりを無くし、日々切羽詰まった生活を過ごしていた分、ゲームチェイサー達の余裕な心構えに困惑していた。
しかしその問いに答えを出したのは、肉巻きおにぎりを海颯に差し出すヒートであった。
「―――アリスも、俺達も、散々虐め抜かれたからな! 叩きのめされた心の年季が違うのよ!」
そう言われても海颯には理解し難いものであった。その代わり差し出された肉巻きおにぎりは拒否せず受け取り、口に頬張れば甘じょっぱいタレが効いて張り詰めた神経をも綻ぶ海颯。
「…………美味しい」
〘◇Now Lording◇〙
―――遠方のツッチーからの転送により、プレイギア経由でG.C.Tのカプセルが届いたアリス。丁度ラウンド2開始直前まで間に合った。互いにドミノ牌を7枚引いて新たなゲームの幕が上がる………のだが。
「あれ、並べたドミノはそのままなの?」
「どうやら置いたドミノは消えないで現状維持するようね。つまり初手は好きな牌が置けないって事ね」
マリエの言う通り、ラウンド1で置いたドミノ牌はそのままにして次ラウンドへと続行する仕組みとなっていた。現在裏原宿の通りに一直線、或いは行き止まりで屈折しながらまた真っ直ぐ進むドミノ牌の列は、留まる事を知らない。
しかも最初のターンは前ラウンドでマリエが上がった為、アリスが初手に入る結果となった。
「ツイてないわね〜、廻り廻って不利になるなんて!」
「スキルチップ効果は絶大ですわ!」
「やーい地底の果てまでビリッケツ!!」
調子付いたクレオパトラ三人衆のヤジが飛ぶ飛ぶ、ヘイトがぶっ飛ぶ! だがそれでもアリスは平然と受け流し、例のG.C.Tのカプセルを取り出した。
「……アンタらね、初手から調子乗ってるとホンッットに痛い目遭わすわよ。カプセルはそれの序章よ」
「やれるものならやってみなさいよ鈍才モデル!!」
口の張り合いだけの争いでは埒が明かない。しびれを切らしたアリスは取り出したG.C.Tカプセルを軽く投げる。
―――PON!!
カプセルから出てきたのは、ブルークリアの塗装で施された高圧洗浄機のようなタンク付きハンドガンだ!
「本日のG.C.T、『フリーズ・ガンナー』!!」
――説明しよう! 【G.C.T No.002/フリーズ・ガンナー】、それはハンドガンから放出する絶対零度ガスによって、数秒も立たずに当てたものを凍結させる強力冷凍銃である! ……でもこれがドミノに何の影響をもたらすのでしょう?
「それを公開する前に、まずはドミノ牌を置くわ」
おっとフリーズ・ガンナーの性能は一旦お預けか。アリスは手札から〔0-4〕の牌を西側にセット。これで置けるのは〔0〕と東側の〔6〕だ。
「さぁ、アンタ達の番よ」
「……なぁによ、結局そのアイテムは使わないの?」
正しくは“様子見”をしているアリス。次は朱雀の番だが、アリスのアイテムが飾りと思ったのか勢いに任せて第2のスキルチップを発動させる。
◎――――――――――――――――――◎
・朱雀/スキルチップ『ダブル・シュート』発動
このターン、ドミノ牌を2回出す事が出来る。
◎――――――――――――――――――◎
(丁度東側に〔6〕があるから、私の手札に〔6-2〕からの〔2-5〕で連続で出せますわ。これで今度は私がリード―――)
朱雀が連結した2枚のドミノ牌を出そうとした、次の瞬間……!!
――ブシュウウウウウウウッッッ
東末端〔1-6〕牌、凍結!! これにより朱雀が出す筈だった〔6-2〕が繋がらない!!!
「え……!? 嘘おおおおおおおお!!!?」
「だから言ったでしょう。調子乗ってると痛い目に遭うって……!!」
これはアリスの巧妙な駆け引きに勝った! 朱雀のお調子の乗り具合が良い餌となり、スキルチップまでも消費させ、連結させる筈だった牌の凍結により〔0〕の牌しか出せなくなった。この賭けは朱雀のみならず、天々・マリエにまでも響き、手札を引いてパスする羽目になった!
「な、なんてことしてくれるのよ!!!」
「私の牌も全然出せないじゃない!!」
「そのじーしーてぃーっての、違法なんじゃないの!?」
クレオパトラ三人衆、一斉に文句を垂れるなら、黙らせてみせようホトトギス。
「残念、適法よ。G.C.Tはアイテムの自由が効くDDGの為に、アンタらの暴挙をぶっ潰す為に作られたサポートアイテム!! 分かったらそのリップ塗りたての口を閉じて! でないとアンタ達も凍らすわよ!!!」
アリスさん、物凄く怒ってます! 後輩を執拗に虐め続けた怒りを爆発する勢い、PASの波動も波紋を呼び合っております!!
(――――舐めた真似しやがって、小娘が)
そして、マリエも………!!!
〘◇To be continued...◇〙




