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【PHASE3-9】燃えよ商魂

 ――さぁ本日を持ちまして2021年最後のゲーム!!


 DDG・ハネツキサバイバー、生き残ったゲーム戦士はたった二人! ゲームチェイサー・ツッチーと成金主義者・金子との一騎討ち、更には琥珀と四大精霊ノームのPASとの激突が予想されます。舞台は足場抜きの大海原!!


 さぁ今度こそ参りましょう、今年のラストバウト!! ――――羽根、投下!!!


「「しゃああああああああ!!!!!」」


 さぁ琥珀と石箱の空中武勇戦だ!! 自由落下する羽根を先に付くのはツッチー、足場の狭い石ブロックを巧みに使っての剛腕活かしてラリーを繰り出す。そして金子は狙いは正確、かつ琥珀のクリアな足場を有に使いツッチーのスマッシュを返していく!


「どうした!? 足が覚束無いじゃんかよぉ!!」

「じゃかぁしい! そっちもツルツルの琥珀板で滑らんのかいなワレぇ!!」


 怒り心頭に発する暴言攻防戦、しかしブロックと板とで石ブロックの方が足の踏みどころが狭く観ているこっちまで心の臓に悪い所が御座いますが、筋骨隆々の上半身に反して軽やかな身のこなしのツッチー。複数の石ブロックをホップステップにジャンプし、右往左往に飛び交う羽根を打ち返していく!


「お前さん、商売修行してた時に親方によぅ言われたよな? “お客に買ってもらう品を粗末に使うな”って、今やってこうしてワテが必死こいて造ったG・C・Tの羽を壊しよった! んな商人にワテは品を買うて欲しいとは思わへんのじゃ!!」

「うるせぇ!! 品は時過ぎりゃ壊れるのが宿命みたいなもんだろうが!!!」


 商人同士の説教問答、口は動かしながらも羽根は交互にラリーを繰り返していく。意外とコントロールが際どいぞ両者!

 だが交互に羽根を撃ち返しては埒が明かない、そろそろ変動をつけないと泥仕合になりかねないぞ!


(―――! 俺の琥珀PASが、消滅していく……!!)


 ゲーム戦士が覚醒するPASの能力は永久に続くものではない。その能力を長時間発動していくと同時に、ゲーム戦士自らの精神力・体力を著しく消耗していく。

 金子はツッチーの説教によって心を揺るがされてPASの力を維持しずらくなっていた。それを証拠に足場にしている琥珀板が徐々に消えていく。


「クソッッ……、あんな地底人エセ関西野郎がァァァァァァ………!!!」


 焦燥する金子、そして卑下する地底空間のツッチーに苛立ちながら高く舞い上がった羽根に上段に羽子板を構えて、必殺の一撃を繰り出す!


 ―――カァァァァァン!!!


 降り注ぐ羽根流星、直球にツッチー目掛けて突っ込んでいく!!


「危なッッ!?」

 顔面に当たりそうな所を羽子板でガード、跳ね返った羽根は上に上がって追撃にツッチーは羽子板を構えるが……


「させるかッッ!!」

 金子、残り僅かのPASの力で琥珀鋭牙を発生させ足場としていた石ブロックを破壊!! 最早一つしか足場が残されていないブロックに留まるツッチーだが羽子板の距離が届かない!!


「………………クソッッ!!!」


 あっとどうした血迷ったか!!? 羽根が落ちてくるまでにツッチー自らが海原を飛び込んでいった!!!


「あばよボケ商人があああああああ!!!!」


 転落するツッチーに勝利の確信を印象付ける憎み口! ……だが侮ることなかれ、落ちていくツッチーの眼はまだ諦めの意は微塵も残っていない!!

 ツッチーの胸元から解き放たれる黄土色のPAS波動!! 海原目掛けて能力を放つ!!!


「ノーム流・遊奥義! 『海波断(かいはだん)・グランドクライシス』!!」


 ―――その時、我々はPASの真髄を見たり!!!


 仮想空間の大海原に亀裂が迸り、海の壁を裂いて底の陸を出してツッチーはそれを足場にしていった!! 前代未聞だ!!! 近未来のモーセか!!!?

 スクっと着地したツッチー、まだ羽根は自由落下をしている所。それにターゲットを絞って渾身の構えで羽子板に羽根をロックオン!!



「ダァァァァァァアアアアアアア!!!!!!!」


 海底の陸に打ち上がった羽根ロケット、その勢いは金子の足場を守る琥珀板を()()!!!


「!!??」

 そしてこの衝撃で金子のPASの力が尽きて、琥珀板は完全に足場を失い急転直下だ!!



「チクショオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ」

 金子羽孔、仮想大海に着水!! そのまま羽根も海に沈んだ!!!


 ◎――――――――――――――――――◎

 ・プレイヤー17 金子羽孔 リタイア!


【ハネツキサバイバー:勝者】

 プレイヤー4 土屋将司

 ◎――――――――――――――――――◎


 ―――これで全てが終わりました!! 2021年最後のゲーム、勝者はゲームチェイサー・土屋将司!!!



 〘◇Now Lording◇〙


 浅草寺の宝蔵門、張り巡らされたVRフィールドはゲーム終了と共に消滅していった。

 周囲にはリタイアで墨をぶっ掛けられたゲーム戦士達がお手洗いや水場で洗っている者もいれば、自分が真っ黒けなのも気にせずにゲームの様子を見守る者もいた。ゲームチェイサーの三人はその後者にあたる。


「やったな、ツッチー! 流石破天荒の商いだな」

「……あの、誰が誰や? 三人共真っ黒やんけ」


 ヒート・ハリアーはともかくもアリスまでも彼が心配で見守っていたようだ。何はともあれゲームチェイサーは無事にDDGに三連覇。あとは報酬と、願わくば栄光の太陽も手に入れば万々歳。……と行きたかったのだが。


「コラァ小童共ぉ〜!! 大人しく御縄に頂戴しろぉーーー!!!」

 と蛮声張り上げ突っ込んでくるは、ダイコン刑事率いる『おでん3バカ組』だ! 勢い任せにゲームチェイサー達を拘束していく。


「な、何? 何だ!!?」

「あたし達が何したってのよ!?」


「しらばっくれるんじゃない!! お前らが浅草を中心に連続窃盗を引き起こし、その盗難品を高額転売した張本人なんだろ!?」

「何を根拠に言ってんだよ!!?」

「地底空間の住民は大体曰く付きなんだよ!!」


 何という無茶苦茶な! 地底空間出身であるだけで犯人と疑われるゲームチェイサー。名誉毀損(めいよきそん)待ったなしな展開でも余計な手出しが出来ないヒート達。それに待ったを掛けたのは意外な男であった。


「待て。コイツらが犯人な訳ないだろバカか?」

 何と、金子羽孔であった。


「何ををを!? どう見たって全身真っ黒けにしてたら明らかに“クロ”な輩だろうに!」

 それは墨によるものなのですがそれは。


「窃盗の真犯人の証拠は、確かに地底空間の者。だがその出身地は『B2層』、しかも地上の転売ヤーとグルになってる知能犯。二人で行っている犯行がコイツら四人な訳無いだろ。それに……もうすぐ()()だろうな」

「―――潮時?」


 とその時、ダイコン刑事達の無線から声が。



『―――現場から報告、現場から報告。浅草・伝法院通りにて【かすみ取りのサック】を確保。総員直ちに現場に急行せよ』


「…………はい???」

「はぁ?!!」

「あわわわ……、早く現場に行くぞぉぉぉぉ!!!」


 危うくゲームチェイサーを誤逮捕する所だったおでん3バカ組。急激に血の気が引いて真っ青になった三人は誤魔化すように一目散に消えていった。


「何だったんだアイツ」

「それよりも金子が俺達を、ってか?」

「何でワテらを助けたん?」

 と、ゲームチェイサー男三人衆申すならば。


「…………ゲームしてた時に親方の言葉を思い出してな。商いをやる時に一番大事なのは、“商品のそれぞれに宿る心を大事にしろ”って事をな」

「……何や、忘れた訳ちゃうかったんか」


「お前に海に落とされて頭冷やしたわ。もう一度商いの基本を見直す。―――借りを返す意味で土屋、次は必ず金は頂くからな。覚悟しとけよ!!」


 捨て台詞を吐きながら、金子はゲームチェイサー達の前を立ち去った。

 すると、それを待ち構えたかのようにDDGの勝利報酬のリザルト画面がVR空間の残骸に出現した。


 ◇――――――――――――――――――◇

【ハネツキサバイバー】勝利!

 ・勝利金額30万円獲得!!

 ・レア報酬【羽子板デラックス】獲得!!

 ◇――――――――――――――――――◇


「なんだ、レア報酬は栄光の太陽じゃなかったのか」

「でも“羽子板デラックス”だってよ」

「……………もしかして、あれ?」


 アリスが若干青ざめながら指を指す方向を一同振り向けば、そこには高さ20メートル程を誇る阿吽の仁王尊の迫力ある絵が書かれた巨大羽子板が。



「「「「…………………………………………………」」」」


 おそらくゲームチェイサーの皆さんは、『こんなでっけぇ羽子板地底に置けるんかいな』と思っている事でしょう。



 〘◇Now Lording◇〙


 ―――結局、金子羽孔は連続窃盗・ネットでの高額転売の犯人では無かった。非売品やプレミアな商品は彼本人がちゃんと契約を交わした上で古物商をしているもので、高かったが規定の販売額もスレスレでセーフ。請け負った時点で品の質は良くなかっただけの事であり、何も違反している所は無かった。金には汚いが。

 だが金子もこのゲームで多少は頭を冷やしたようで、質の改善やら定額の見直しやらと反省の色は徐々に見えたようだ。


 さて、ツッチーの活躍によりまたもやDDGを制したゲームチェイサー。あの巨大羽子板は何処に置くことになったのかと云うと……?



「………地底(ココ)に持ってきたって訳か」


 地底空間・B1層の喫茶店『パラケルスス』に帰還したゲームチェイサー。仁王尊の巨大羽子板を喫茶店の縁起物飾りにせっせと持っていった所、天井に支える程に厄除け祈願増々、かつB1層のつっかえ棒と化していた。


「まぁ、災厄除けと思えば随分縁起が良い事だろうな」

「でもちょっと怖〜い」

「恐縮ってこの事を言うんですね……」

 ジョーカーも、天音ちゃん、琴音も羽子板の威迫に若干ビビりながらもそんなに悪い気はしない様子であった。


「……なぁツッチー、このデカ羽子板にも“心”が宿ってんのか?」

「当たり前やがな、羽子板にもレトロゲーにも真心込めて創られた物には全て心がある。商売の親方の口癖やった。――ワテはそれらの心に汲んで、真心込めて商売をするつもりや。金子なんざに負ける気せぇへん!」


「やれやれ、また厄介なライバルが増えちまったって事か」


『悪魔の翼のルシファー』、『琥珀商の金子』と次々にゲームチェイサーの行く手を阻むゲーム戦士達。

 栄光の太陽の欠片を集めて、真の自由を手に入れる彼らの旅は始まったばかり。果たして新年は一体どんなゲームが、どんなライバルがゲームチェイサーを待ち構えるのでしょうか!?



 ――いざいかん、2022年も本作を宜しくを込めて。地底空間より這い上がりし自由のゲーム勇士・ゲームチェイサー、君達に幸あれ!!!



 〘◇PHASE3 THE END◇〙

▶▶▶▶ NEXT GAME CHASERS▽


地底空間出身にしてファッションモデルとして活躍しているゲームチェイサー・アリス。

火花バチバチのモデル業界で戦い抜く彼女の前にまたしてもDDGが、今度は東京・原宿にて出現!!



 ★この小説を読んで『ゲームウォーリアーも良いけど、ゲームチェイサーも面白いじゃん!』と思った皆様。是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!!


 更には後書きと広告より下の評価ボタンで情け御無用に『★★★★★』の五つ星を付けて、物語を盛り上げましょう!!

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