【PHASE3-7】誇りが、土の精霊を喚ぶ
――さて肝心のゲームが気になる所ですが、何やらVRフィールド外にて変化があった様です。ちょっとこちらをご覧頂きましょう!
〘◇Now Lording◇〙
ゲーム戦士達が白熱のDDGを浅草寺・宝蔵門にて繰り広げている中、その奥の本堂の端にて張り込みらしき仕草をしている三人組が。
「―――大根さん、本当に現れるんすかぁ? 窃盗犯並びに転売ヤーなる奴ってのは」
「だからこーして張り込んでるんでしょう。ね、ダイコン刑事?」
「……良いか後輩共、刑事ってのは“忍耐”が必要不可欠なんだよ。犯人の数限りない情報源に可能性を掛けて、我々はその犯行現場を取り押さえる。刑事歴二十と五年! このダイコン刑事の第六感を信じたまえ!!」
言ってる事には道理に叶ってますが、その理論は昭和の香りがするのは気の所為でしょうか?
前回ジョーカー・響波姉妹からのリモートで因縁をつけに来た刑事課・地底空間捜査課一係の大根 大五郎刑事。今回は部下の二人も連れて刑事ドラマ専売特許の張り込み操作をこの浅草寺にて行っていた。浅草内で騒がせている連続窃盗犯の確保の為に。
そこで“ダイコン刑事”こと大根は信頼に置かれた部下は、生意気面の“チクワ刑事”こと知久 渉と、物腰柔らかな婦警経由の“コンニャク刑事”こと紺野みく。捜査課の同僚にして先輩後輩の仲で結束力が高いことから、署では【おでん3バカ組】と称されてるそうな。
こうして浅草寺・本堂の影に隠れて捜索をしてはいるが、奥の宝蔵門がやたらと喧しいことにダイコン刑事は苛立っていた。
「それにしても何なんだこの騒がしさは! 神聖な張り込み場に騒音を掻き立てるなど迷惑千万だ!」
浅草寺は張り込む為にあるんじゃありませんよ。
「先輩、どーやらあっちの方でDDGが出現してるそうですぜ」
「何ぃ? あの双空間ゲームを浅草寺でやってるのか、風情もへったくれもあったものじゃない」
ダイコン刑事はこの近未来に流されない程に頑固な性格かつレトロ思考の持ち主。最先端の双空間ゲーム・DDGのトレンドには付いては来れず、元々彼はゲーム自体あまり良くは思っていないようだ。
「……待てよ、ひょっとしたらここにゲームチェイサーの若造らが居るかもしれないな。よしここは奴らが変な気を起こさせないよう吾輩が取っちめてやろう」
「へい先輩! これであの窃盗犯なら一石二鳥だ」
「大丈夫かなぁ……」
思い立ったら何を仕出かすか分からない警視庁の3バカ一課。絶賛激闘中のDDGのVRフィールドに接近して見るならば、
「コラァ若造共ぉ! この偉大なる浅草寺の前での不埒な遊戯三昧見逃しちゃおかねぇ!! この私、警視庁・地底空間捜査課一係きっての名刑事、ダイコン刑事が、あ、成敗してくるわぁぁぁ!!!」
――――――シーーーーーーン。
江戸っ子気質に歌舞伎風に見栄を張っての顔見世興行。名字なだけに大根役者ぶりが目立ったのか、ゲーム戦士一同ガン無視。
「貴様らァァァァァ!! このダイコン刑事大先輩を無視するな!!!」
とチクワ刑事も激を飛ばすがノーリアクション。だってそうでしょう?
「ちょ、ちょっと……二人共、あれ……!!」
コンニャク刑事はいち早く注目の的となっているVRフィールドの全貌を見て驚愕の極地。
阿吽の仁王尊像を背にするは、仮想空間によって実現した雲よりも高き渓谷、石柱。霞を食っている仙人でも居そうな聖地にゲーム戦士が羽根突きをしてるではないか!!
「………そうか、ここは浅草寺でなく中国のどっかだったのか」
「「違いますって!!!」」
〘◇Now Lording◇〙
3バカトリオの漫才はさておいて、DDGではこの通り浅草寺の砂利道から一転、本当に中国にありそうな仙人渓谷にフィールド変換されていた。
「いけねぇや、さっきのフィールドチェンジで大半落ちてやんの」
ゲームのオリジナルルールによって、フィールド変換した途端に石柱に乗れなかったゲーム戦士達がコースアウトとみなされ失格。一気に生き残り人数は5名となり、ハリアー、アリス、ムチャブリの村良、そしてツッチーに金子と揃っている。
「随分減ったわね、前の話で生き残り16名って言ってたじゃない」
「いや何か尺の都合って言ってたらしい」
尺!? もしかして作者、アップアップなんですか!?
「作者曰く“とてもじゃないけど大晦日まで間に合うには参加者削ぐしか無かった”、だって」
年の瀬まで無茶しないでくださいよ作者さん。
「まぁ作者のご都合展開で助かったぜ。お前等悪名高いゲームチェイサーたる面々が三人立ちはだかってるんだ。潰すにはもってこいのシチュだな」
「“悪名高い”は余計だぜ金子の兄ちゃん」
「あんたなんかに栄光の太陽は渡さないわよ!」
「 」
今回もゲームチェイサーは幻の秘宝“栄光の太陽”を手にする為にDDGに挑む訳なんですが、金子に至っては別の動機があった。
「栄光の太陽? あんな秘宝なんかお前等貧乏人にくれてやるよ。俺が求めてるのは大金のみ! 金と名誉で罷り通る世の中で必要なものは手に入れないとな」
「チェッ、結局お前もカネ目当てか」
「他に欲しい物とか無いのかしら」
「村良もいるよー!!」
ゲームを挑む者、その目的は報酬金を取る者に名誉を勝ち取る者と十人十色。とにかく金子の場合は一攫千金勝ち取る他に目的は無いのだ。
「そういう事だ。俺もしょっぱいネット商売やってるだけじゃ物足りないんでね。賞金30万稼いで証券に入る為の貯金でもしてやるよ」
「銭ゲバめ……」
「絶対勝ち取ってやるぅ……!」
「むらよ」
「「「うっさいッッッ、今主要キャラとお話し中!!!!!」」」
とばっちりを受けた“ムチャブリの村良”。一応先に言っておきますが彼は一発キャラでは御座いません。
――――さぁ言ってる側から羽根降下、サヴァイヴした5人のデスマッチの開始だ!!
「じゃ、ゲームチェイサーの前に先ずはお前から潰してやるよ!!」
おっとここはキャラ立てに協力してくれるのか金子、大跳躍して羽根の定位置にある石柱に移動した、と思いきや……おおっ!?
―――バシュッッ
更にド高いハイジャンプ! 何と石柱の上には先程村良が置いた『ジャンピングボード』が置いてあった。それを金子が有効活用してのジャンピングサーブ!!
「おおっ、俺のジャンピングボードを使ってくれたのか〜!」
喜んでいる場合ではないぞ村良。羽根の標的はお前自身だ!
「はっはっ、そうは問屋でジャンク品卸さずだ!!」
カーーンッッ
それはリサイクルショップがやる事です。って、意外にポテンシャル高いぞ村良!
空中豪速羽根をすかさずジャストミート、水平起動に変えた羽根が向かった先は………
「え、ちょ、マ」
――――スカッ
不意に取られて空振りしたのは、ゲームチェイサー・アリス! ヒートに続いて彼女も失格だ! そして降り注ぐは情け御無用・墨汁の雨!!
「いやぁ〜〜ん!! お気に入りのスカートがーー!!!」
オシャレ意識の高いアリスにとって、墨汁の罰ゲームはまさに生き地獄。マジ泣きで観ているこっちも可哀想になる程にリタイアで強制転送。
「すまんな娘よ、こんな真似はしたくなかったがこれもゲームの定めと諦めてくれ……!」
流石の村良も良心の呵責に胸を手に当て懺悔のポーズ。クソ真面目が満ち満ちております。
――――残るは4名。しかし皆様は気付いていますでしょうか? この佳境にてまだ口を閉ざしている者が居る事を。
「………どうした土屋ぁ? 俺のPASが出た途端に黙り込みやがって、シラケさせんじゃねぇよ!」
と高圧的に煽りを入れております金子。琥珀即ちアンバーストーンのPASが発動してから、土屋ことゲームチェイサー・ツッチーは真摯の表情のまま構えているだけ。すると、その重い口をようやく開き呟いた。
「…………曇ってんな。そのPAS、お前の琥珀」
「あぁ?」
「琥珀ってのはよ、昔は黄金と双をなす宝石として“太陽の化身”と崇められてたんや。それくらい希少な宝石を、金に眼ぇ眩んで私欲の為に利用するなんざ恥ずかしい事この上ないわな」
ここはツッチー、商売のみならず高額な宝石の価値を見分ける力があるのか。己の異能力を宝石を例えてその傍若ぶりを指摘した。
「何だぁ……? 黙ってて口を開けばズケズケと俺の魂に文句か? 鑑定士ぶってんじゃねぇぞ地底人が!!」
「鑑定士、そうなんちゃうで。ワテには分かってまうねん、本当の価値のある宝って奴を!!」
するとツッチーの胸奥から宿る黄土色のPASの波動が迸る。 その形は四大精霊の一人、土のエレメントを司る小さな妖精・ノームであった!
「土よ肥やせ、大地よ揺るがせ!! 地に眠りし大秘宝は我が手にあれ!!! ――PAS発動・【ノーム】!!』
――――招来せよ、我が魂!! 土の下にも数百年、地底に眠る鉱脈・秘宝の番人はミニマムな小人。土の精霊・ノームのゲーム戦士魂!!
◎――――――――――――――――――◎
・プレイヤー4 土屋将司
PAS【ノーム】確認。
◎――――――――――――――――――◎
ゴゴゴゴゴゴ………!!
おおっとこれはどうした!? フィールド変換でも無いのに大地が揺らいでいる! 一体VRフィールドに何が起ころうとしているのか!!?
「………調子乗りすぎやで金子。ワテの魂がお冠やがな。責任はゲームで賠償せなアカンな……!!」
〘◇To be continued...◇〙




