【PHASE3-5】初起動・ゲームチェイスツール
――TIPS――
【D・D・G〘デュアルディメンションゲーム〙ルール①】
〘ハンディキャップ制度〙
ゲーム戦士特有の異能力『PAS』の発動によるゲームバランスの変化に伴い、参加者はゲーム内の規定に沿った道具・アイテムを使用出来る。
※今回の『ハネツキサバイバー』はゲーム中一回のみ。
これらの使用はPAS能力者でも使用可。WGC認定アイテム、自家製等の規定は無いが、故意的にゲームを崩壊する恐れのある道具使用は禁止とする。
――今年の聖夜は如何お過ごしだったでしょうか?
クリスマスプレゼントのゲームで嗜む最中ですが、双空間ゲーム・DDGの時間ですよ!
もう幾つ寝たらお正月、しかしゲームは幾つ寝たって待ち切れない。お正月には凧上げて駒を回して遊びましょと言いますが、もう一つあそびを忘れちゃいませんかぁ〜!?
正月にお雑煮、羽子板に羽根! 落としたらスミ塗る羽根突きゲーム。VR空間にて20名のゲーム戦士が揃っております!
DDG・ハネツキサバイバー、間もなくスタートです!!
〘◇Now Lording◇〙
――阿・吽の仁王尊像が双極に立つ宝蔵門に見守られて、出現した半透明ドーム状のVRフィールドにゲーム戦士が集まっております。
まるで人々がスノードームの中に閉じ込められたような情景、俯瞰の空から観るならば1/64スケールの戦場が垣間見える事でしょう!
そして今回はゲームチェイサー四人全員がDDGに参加という事になりました。今までヒートだけの参加でしたが、ハリアー・アリス・ツッチーがここで初参戦。ヒートにとっては頼もしい仲間が加わった事になります!
「じゃ俺達の誰かに羽根が来た時には、出来る限り敵に回すこと、やむを得ない時は上に上げてラリーでいこう」
「そうだな」
「やーよ、あたし仲間からのパス外して顔にスミ塗られるの」
「スミならまだえぇやろ、ミスって何が待っとんのか検討付かんのがメッチャ怖いねん」
羽根突きに墨汁顔塗りは定番。しかし一癖二癖でも物足りない癖っ気満載のDDGはスミだけでは済まない予感が漂っております。ゲームチェイサーも警戒中だ。
「……………」
おっと、今回の対戦相手・金子。先程までツッチーに憎み口を叩いていた商いがゲームになると一転無言に入った。羽子板の調整をしているのでしょうか、面の手触りやら型を見ている様ですが……細工らしき様子は微塵にも見られません。
他のゲーム戦士達もピックアップしましょう。やはりというかアイテム使用可のルールに則って少しでも有利にしたいのか、羽子板も羽根突き用でなく飾り用で面も割増大きい板で挑もうとしております。これくらいのアイテム使用なら可愛い方ですが、それ以外の者達はどんな隠し玉を用意しているのか分かりません。
『ゲーム・スタンバイ……!』
さぁゲームスタート30秒前であります。アナウンスの掛け声と共に、参加者全員がフィールドの中央を核に円陣を組んで待機。ゲーム戦士のオクラホマミキサーか!? ………冗談はさて置いておまちどうさまでした、DDG開幕です!!
〘【ハネツキサバイバー】GAME START〙
年の瀬に羽子板が舞うハネツキサバイバースタートぉ!! ……しかし一つ何かが足りないようだ。
「…………あれぇ? 羽根は??」
アリスが指摘する。つまりは羽根突きする為に必要な羽根が何処にも見当たらない。それにつられて他のゲーム戦士達も辺りをキョロキョロ見渡すが、一人の参加者が空を見上げた途端蛮声張り上げて指差し叫んだ。
「―――親方ぁ!! 空から羽根が!!!」
いやここ親方居ませんよ。皆ティーンエージャーかフレッシュマンばかりですよ!
それを聞いて総員上を見上げるならば、ヒューーっと音を立てて錐揉み落下する羽根の姿が。その標的はヒートの真下!!
「ヒート、来てるぞ!」
ハリアーの掛け声から無意識にヒートはひょっとこの羽子板を大きく振りかぶってスマッシュの構え!
「あ〜〜らよっと!!」
――――カーンッッ
「あっ?!!」
空から降った羽根を勢い任せにスマッシュ一発! 斜め直球に降り注ぐ羽根にモブ扱いのゲーム戦士は為す術もない。破れかぶれに羽子板を降っても空振るだけ、万事休す。
『プレイヤー17、アウト!』
さて、リタイアしたゲーム戦士がDDG版羽根突きで羽根を落としたらどうなるか? その答え合わせ!
ボドドドドドドドド!!!
天から降り注ぐ黒い滝、墨汁のナイアガラ! ブラックウォーターフォールがリタイアしたゲーム戦士の頭上へ集中豪雨だ!!
墨汁によって全身真っ黒、影の化身とも見まごう姿になったゲーム戦士。クリーニング代も高く付きそうだ。そのままVRフィールドの外へと強制転送されていった。
これを見た他のゲーム戦士達は唖然。口をポカーンと開けるなり背筋がゾッとするなり様々なリアクションが伺える。
「…………これ塗るとかの話じゃないじゃん。ぶっ掛けられてんじゃん墨汁」
「あたし絶ッッ対嫌!!! あんな真っ黒けにされるの」
ハリアーもアリスも文句タラタラ。ヒートが最初のサービスエースを取ったが、このように羽根は天から舞い降りて何処から飛んでくるか分からない。――そして第二戦目!
ヒューッと飛んでく羽根を目視すべく、全員が上を見上げて確認……と、思いきや!?
「その羽根貰ったああああああああ!!!!」
19名の軍勢より飛び出した一人の男が羽子板構えて大跳躍! バッタ人間かマサイ族か!? 人間離れした大ジャンプで羽子板を空中レシーブ!! その軌道はハリアーに向かって急発進!!!
「危なッッ!?」
ハリアーの瞬発力は伊達じゃない、間一髪カツンと良い音を奏でてレシーブを返した!
しかしそこで慌てたのが名もなきモブゲーム戦士、慣れない羽子板に羽根を当てる事すら困難なゲームに素振っては見たものの空振り。こちらも墨汁の滝の餌食となり、二人目のリタイア。
「お、オイアイツ……“ムチャブリの村良”じゃねぇか!?」
「まじかよアイツも参戦してるのか、面倒くさい事になるぞ……」
他のゲーム戦士達も先程の大ジャンプ野郎に警戒しております。地上では名のあるゲーム戦士、クソ真面目な性格に倣って体育会系、角刈り頭の真っ赤なジャージにピンときたら“ムチャブリの村良”。村良稜(21)だ!
「ぬぬっ! この俺の空中レシーブを良くぞ返したな、中々やるのではないかクールガイの兄さん!!」
クールガイとは、先程村良の攻撃をギリギリ撃ち返したハリアーの事ですが、彼の暑苦しい性格にハリアーはタジタジ。
「そりゃどーも……、さっきのジャンプはお前のアイテムか?」
ハリアーが指摘するは、村良の近くにいつの間にかセットしてあったジャンプ台。早くもハンディキャップ制度の恩恵が。
「いかにも! WGC印の強力なバネで最大5メートルのジャンプが可能な『ジャンピングボード』だ! 俺だけでなくお前も、誰でも使って良いぞーー!!」
(てめーのアイテムを相手に使わせるんかい)
良くも悪くも本当にクソ真面目な村良に翻弄されるも、このようにアイテムは突発的に使われる事を理解したゲームチェイサー。ゲーム戦士の最後の切り札、PASの発動を温存しつつ生き残れるか。
―――その時、ゲームチェイサーのDDギアの無線よりジョーカーからの通信が入った。
『皆、目には目を歯には歯をだ。こっちもアイテムを使って優勢に立とう!』
「え!? アイテムなんて何処にあるんだよ?」
ヒートもいきなりの事で困惑しております。肝心のアイテムは何処ぞと尋ねるならば。
『実はツッチーと私達とで極秘に制作した、DDGに使用可能な万能アイテム【G・C・T 《ゲームチェイスツール》】を用意しておいた!』
「「「………じーしーてぃー???」」」
ツッチー以外は何の事かさっぱり分からんの状態。しかし触れないのも申し訳ないので、プレイギアを開くとジョーカー宛の送信メール。そのメールの送付プログラムに《G・C・T》のデータが。
「ハリアー、さっきのジャンピングボードに対抗して【G・C・T No.001】をタップするんや。そしたらカプセルが出てくるから軽ーく投げてアイテムを出しぃな」
「お、おぅ……」
ハリアーはツッチーの言われるままにプレイギアのメールからプログラムを転送させ、携帯画面より出現したのは真っ赤なカプセル。そのカプセルがピキピキと亀裂が走った途端……
―――PON!!
カプセルから出てきたのは、クリムゾンカラーの双翼にバックパックがセットになった中型ジェットパックだ!!
「本邦初公開! 本日のG・C・T、『ヴァルキュリアジェット』!!」
双空間ゲームの羽根付きに、ジェットパックまで出現してテンヤワンヤの大騒ぎ! 今回のゲームは予測不可能!!
果たしてこの勝負、ちゃんと年内までに決着、お正月前まで間に合うことが出来るでしょうか!?
――いざいかん、年末年始で仕事に忙しい作者のkazuに幸あれッッ!!
余計なお世話じゃ!!!! by kazu
〘◇To be continued...◇〙




