【PHASE3-4】驚天動地・羽根突きサバイバル
――12月18日・午後12時の一分前。浅草寺・宝蔵門前にてVRフィールド出現!!
空間内には総員20名のゲーム戦士、多人数による双空間ゲーム・DDGの戦いの火蓋が切られようとしていた!
「オイオイ……、宝蔵門の仁王様らが睨んでる中でDDGかよ! バチ当たるんじゃねぇか……?」
宝蔵門、又の名を『仁王門』と呼ばれる壮大な門の両端には阿・吽の金剛力士が配されている『仁王尊』の像が。身体健全、災厄除、虫封じに疱瘡除の守護神であり、寺の仏敵を追い払う役割を果たす双神。
そんな門の前でVRフィールドが発生し、名誉と欲に駆られた者によるゲームを行うとなれば、さぞ阿吽の二方も困惑されるかと思いますが……、それをもそっちのけで戦うのが人間の性なんでしょうかね?
「へっ、神なんか怖れていてゲームが出来るか。もうすぐ出現するぜ」
仁王尊の前でも強気は金子。今回は彼を核にまた良からぬ展開が待ち受けていそうですが……、それは本題に入るまでのお楽しみに。さぁDDG出現・カウントダウン!
――――3、2、1……ゼロ! 時刻は12時丁度。VRフィールドにアナウンスが鳴り響く。
『浅草寺・宝蔵門にて、【ハネツキサバイバー】が出現しました!』
ゴゴゴゴゴゴ………
「な、何だ?!」
「揺れてない!?」
突如ヒート達DDG参加者に激しい地鳴りが襲う。地震か、と思いきやそれはVRフィールド内で起こした演出に過ぎず他の場所ではなんの変化も無し。
そんな天地も揺るがす仮想空間、VRフィールドに接した宝蔵門の前で揺れる大地に亀裂が走り、巨大な何かが這い上がって来たではないか。その正体は壁とも見まごう程に聳え立つ板!!
「………………羽子板???」
はいヒートさん御名答! ズバリその板こそ5メートル級の大型羽子板。今回のDDGのアイデンティティを示す大看板、羽子板の絵には宝蔵門顔負けの仁王尊、阿・吽の金剛力士が怒気満ちた顔でゲーム戦士を威嚇している!
ゲーム、羽子板。してそこから連想するのは……
「さっきゲーム名で言ってただろ、【ハネツキサバイバー】。その名の通り羽根突きのDDGバージョンだ!」
――――――――PLAY GAME――――――――
☆D・D・G 《デュアルディメンションゲーム》③☆
【ハネツキサバイバー】
・ジャンル:多人数サバイバーゲーム
・プレイヤーレベル:19
ルール
・正月号例の羽根突きを多人数形式で行う。
・このゲームの特徴的な所は【突発的にフィールドが変化する】【強化アイテム・PASの使用制限無し】
・プレイヤーの一人が羽根を地に落とした時点でリタイア。参加者の中でたった一人だけ生き残った者が勝者となる。
プレイ報酬
・賞金30万円
※1%の確率でレア報酬も追加獲得可
―――――――――――――――――――――――――
現実とVRの双空間で為すDDGはただ羽根突きをするだけでは終わらせない。今は土砂のまみれたダートな地面がバーチャルリアリティの力で予測も出来ないフィールドで羽根突きをしなければならないのだ。
当然ヒートらゲームチェイサーにとっては未知の世界、DDギアの無線からパラケルスス経由でオペレートするジョーカーがアドバイス役だ。
『DDGのフィールド変換は主に普通じゃありえないような場所に変換する事が多い。火山とか宇宙空間とか、本物さながらなエフェクトで翻弄してくだろう。……まぁそれで死ぬ事は無いからガムシャラになるのも手だな』
「それで死なれたら作者からゲームチェイサー打ち切られるぞ……」
それだけは本当に止めてください。
「それとルールには【強化アイテム・PASの使用制限無し】って書いてあるけど、アイテムって何だよ?」
とハリアーが疑問に持つならばジョーカーさんの御返事は、
「それはDDGの“ハンディキャップ制度”だ。ハリアー達みたいにPASを使える者の真逆に全く能力を使えない者の為に公式・自家製等とにかくゲームに有利なアイテムの使用を許可させたんだ」
実はこれらDDG、殆どのゲームが能力もアイテムも使用出来るという寛容深いルールになっていると同時に、CPUを細工するといったチートプレイや不正行為以外は何でもありな無法地帯と例えても良いでしょう。
「じゃ渋谷で戦った小金井のバカはルールの解釈を履き間違えたって事か」
そういう事です。DDGのVRフィールドに司るCPUから直接チートデータを埋め込んだ行為は真っ赤な不正行為。逮捕された時にDDGのデータ改造も罪に加わったんだそうな。
―――さて今回の対戦相手の一人、金子は不正を犯さない事を願いたいものです!
「……何だよやる前から疑ってるのか?」
「それはお前さんの心構え次第やで。ワテはやらないって信じとるけどな」
相手の方から憎まれ口を叩かれようが非難しないのがツッチーはおろかゲームチェイサーの長所。地底空間の差別を何度も見てきた彼らにとって、同じ穴の狢になるような器に成り下がる気は無いのですから。
「そりゃどーも……、だが四人とも手ぶらでどうやってゲームするんだ?」
「……あ? 何言うてんねん、羽子板は――」
「馬鹿か、羽子板はてめーらで用意するんだよ。DDGもそこまで優しかねーぞ」
「「「「……………嘘ん」」」」
これは迂闊だった。最先端技術とはいえ、ゲームのアイテムは供給されても参加者に羽子板を配る程の親切仕様では無かった。戦いは常に非情と冷徹の境にあるのか。
今すぐ仲見世まで行って羽子板買うか、いやいやそれじゃ間に合わない。エライコッチャと慌てふためくヒート達であったが……
「……あ、ちょい待ち。確かワテの商い七つ道具に羽子板があったような……」
「え! マジ!?」
これは何という偶然か。通常の三倍の厚さがあるツッチー印のビジネス用アタッシュケースから、古びた羽根突き用羽子板がご丁寧に4つ揃っていた。
「何ていうご都合展開なの……」
「これが作者パワーか」
「ちゃうわ。この羽子板をワテの仕事道具に保管してたのを思い出したんや。何の時やったかな……」
昔話は一旦置いて、奇跡的に羽子板があった事にラッキーと思いつつヒート達は羽子板を装備して改めてDDGへ。ハリアーは歌舞伎役者、アリスは和風美人、ツッチーはタレントの絵柄をした羽子板を持っている。そしてヒートは……
「…………ちょっと、何で俺んだけひょっとこの絵なわけ?」
「しゃーないやろ。残りもんにゃ福があるんや我慢せぇや」
それ言い訳になってないような……とツッコミを入れたくなりますが、無事にゲームチェイサー四人もDDGの参加権を獲得した。
果たしてこのゲームの中に“栄光の太陽”の欠片は隠されているのでしょうか。そしてこのゲーム戦士の聖地を汚す者は本当に居るのでしょうか……?
(――――そのまま羽子板無しで尻尾巻いて帰れば良かったのによ、馬鹿が………!!)
その真相は、戦いの中で明らかになる―――!!
〘◇To be continued...◇〙




