【PHASE3-1】新たなる座標
――“商人”は何の為に商品を売るのか。金の為だと言わされればそれまでですが、商売を熟していく内に金より大事な事があるのではないのでしょうか?
今回のフェイズでは、土屋将司こと“ツッチー”のゲームを主とした商人魂が炸裂する!
そして新登場、DDGや難関ゲームをサポートする万能アイテム!! このアイテムが更にゲームを加速させます!!
では今回も張り切って参りましょう、ネクスト・フェイズ!!
――ここは地底空間・B1層/イーストTKエリア18の喫茶店『パラケルスス』。
地底空間で生き抜く人々達の憩いの場であると共に、地底空間の人々の自由を守るゲームチーム『ゲームチェイサー・E-FORCE』の本拠地である。
『パラケルスス』のマスターであり、ゲームチェイサーを束ねる司令塔の麻空丈一こと『ジョーカー』は、ヒート達によってDDGの勝利報酬で獲得した幻の秘宝【栄光の太陽】の欠片を調べていた。
「ヒート達が手に入れた栄光の太陽の欠片は二つ。しかもほんの一部分を手に入れただけに過ぎない。……欠片を全部集めるとしたら相当骨折る事になるな」
欠片をまじまじと見るなりブツブツと独り言を呟くジョーカー。同じくして彼の助手としてコンピュータ等などで調査を手伝う響波姉妹もまた、栄光の太陽について疑問を抱いていた。
「……ねぇジョーカーさん。この欠片って全部で幾つくらいあるの?」
「欠片は掌サイズでも、栄光の太陽の元の大きさ次第ではかなりの量だと思われます」
と、姉の天音ちゃんと妹の琴音が物申すならば。
「その“かなり”の大きさだ。聞いた話によれば栄光の太陽は全長50メートルはあるとして……欠片の大きさからみても200、300の量はくだらないだろうな」
「そんなに!?」
「それを皆必死になって探しているのですね」
本来の太陽の大きさは地球の109個分の大きさと言われているが、ゲームワールド発祥の栄光の太陽は電脳空間のデータから生まれたもの故かそれ程大きくは無い。ただそれを欠片として散らばったのであれば多数量は必須であろう。
しかもその欠片は現実世界のDDGだけでなく、閉鎖されたゲームワールドの何処かに隠されている可能性もある。DDGだけで全部獲得するのは不可能、となればゲームワールドの解禁も待たねばならない。何れにしても栄光の太陽を手にするには長い道のりである事は覚悟すべきであろう。
「だからこそ今やれる事を精一杯やるんだ。――次のDDGの出現場所は確定出来たか、琴音?」
「はい。場所はまたしても東京、今度は浅草の浅草寺ですね」
「彼処って年がら年中お祭りやってる所よね〜」
年がら年中と言っても9・10月はやってませんが、月が過ぎればまたお祭りがやるのは確かな浅草・浅草寺。この12月は最後の市として『歳の市(羽子板市)』がやる月だそうです。
「しかしまだ出現想定時刻が決まっていません。また確定次第報告致します」
「ありがとう琴音。さてそれまでヒート達に知らせなければ――」
〜♪〜♪〜♪
と、言った側から着信音。琴音のパソコンから通知されるビデオ通話アプリの着信だ。その通話相手を着信に出る前に確認すると……
「……げっ、大根刑事じゃん」
「また私達に因縁付けに来たんですか?」
「繋げてあげなさい。無視しても後々うるさいから」
懐の深いジョーカーでさえも煙たがれている様子。渋々と琴音が通話許可を意味するワンクリックをすれば、画面に現れたのは横に広がる警官帽に同化するかの如く横柄な態度の髭面男。刑事課・地底空間操作係の大根 大五郎刑事。名字がまんまアレなので皆からは【ダイコン刑事】と呼ばれている。
「何かあったんですか? ダイコン刑事」
『……まぁな。最近浅草を中心に盗難事件が続いていてな。しかもその盗難品をネットオークションに出品して高額転売してるって話だ。何か知ってる事は無いか?』
この時代でも転売ヤーは絶えないようですね。しかも人の物を奪って転売なんて以ての外! 皆さんはそんな阿漕な事はしてませんよね?
「セコい事件ね。でもあたし達には関係無い話じゃないし、何も知らないわよ?」
『果たしてそうかな? 麻空丈一、奴が何か企んでるんじゃないか? この前の渋谷や西新宿でのDDGは、お前達が指揮するゲーム戦士達が関わってる事は検討が付いてるんだぞ』
「そんな! ジョーカーさんもゲームチェイサーの皆も悪い事はしないわよ! 言い掛かりは止して!!」
このようにダイコン刑事は地底空間の人々の事をあまり宜しく思っていないようで。ゲームチェイサーの活躍も知ってはいたが、敗者たちが集う地底空間の者が地上でちょっかいを出す事が気に入らない性分なのです。
『まぁ何であれ、このダイコン刑事が居る限りはお前達地底生まれの輩に好き勝手はさせないからな。そのつもりでいることだ。ワハハハハハ!!』
と下衆な笑い声を上げながら通話は切断された。
「全くもう……、あんな嫌味なオッサン大ッ嫌い!」
「仕方ないよ姉さん。地底の人達は警察だけでなくても色んな人から白目で見られてるんだから」
「例えそうでも、私達は自分の心に誇りを持って生きる事だ。あの刑事のは毎度の事だから気にするな。“触らぬダイコンに祟りなし”だぞ」
「「さっすがジョーカーさん!」」
地底の窮屈な空間に暮らしていても誇り高き男・ジョーカー。地上からの批判差別に全く挫けず、心に高みを目指す者は器も桁違いであった。
―――カランコロン♪
呼び鈴の声が聞こえればそれは『パラケルスス』の来客の知らせ。急いでジョーカーは食器棚の奥の隠し部屋から現れて接客の準備。
「いらっしゃ……何だハリアーとアリスか」
「ちぃーっす」
「ねぇジョーカーさん、ヒートとツッチーここに来てなかった?」
どうやらハリアーとアリスは仲間の二人を探していた様子であった。
「いや来てないぞ? ……そういえば今日はツッチーの商いの日じゃ無かったか?」
「商い……あっ!」
「あんにゃろ、また小遣い稼ぎに商売か」
〘◇Now Lording◇〙
ハリアーとアリスは彼らが何処にいるか分かった所で、私もその場所は何処かと申すならば。
「―――さーて、エェかいお客様! ちょいとその足止めてうちの商品を寄って見て頂戴、買ってみてちゃぶ台! 本日のお目玉商品、テレビゲームの黎明期に燦然と輝くレトロゲーム様々と来たもんや、さぁ見たってや〜!!」
地底空間はB1層、“旧都の繁華街”として名高い『イーストエリアTK09』。丁度ここでフリーマーケットの催し最中に現れ、筋骨隆々の腕にハリセン一本持ちながらの軽妙な啖呵売を披露する男こそ、ゲームチェイサーのメンバーで土の精霊・ノームのPASを宿すナニワの商人、土屋将司こと『大地のツッチー』だ!!
さて、そんなツッチーがゲームチェイサーとして戦いながらも、商いを営む理由とは何か。新たなゲームに突き進む前にちょっとだけその模様を覗いてみる事にしましょう……!
〘◇To be continued...◇〙




