【PHASE2-6】深夜の街に双炎が舞う
――TIPS――
『制覇遊戯勇士ゲーム・チェイサー』はフィクションですが、実在する名所や地域は出来る限り忠実に基づいて執筆しております。
情報源は更新当時のものを扱っており、時代経過によって変化する場合も御座いますのでご了承下さい。
――ここは地上・東京は新宿。
既に空は漆黒の夜、闇に包まれる都会ではその闇を紛らわし賑わいを魅せるかのようにビルや店のネオンで活気を齎す習性があるのだろうか。
しかし夜も深ければ店終い。その光も徐々に輝きを消して都会に一時の眠りに付く。現在時刻はまもなく深夜0時、その十分前に回ろうとした所だ。
そんな深夜の都会の闇に浸透させて、黒ずくめの服の男がまたしても音もなくヒタヒタと彷徨い歩く。―――“悪魔の翼のルシファー”が、地上にまで這い上がってきた。
(……『東京・新宿区西新宿1丁目』、ここか)
ルシファーが何かに導かれて辿り着いた座標。それは新宿駅西口の前に聳え立つ何棟もの電化製品やメディア製品がジャンル毎に並ぶ大型電器店の地であった。
かつてはここに高速バスターミナルも存在したのだが、今は新しいバスターミナルを別の場所に集約してからはその役目を終えている。
西新宿1丁目も今は街灯とコンビニといった24時間営業の店の灯りのみが照らされるだけ。
ルシファーは唯独り西新宿の中央通りの真ん中を歩くが、黄色い看板の目立つビルの下でポツンと人の気配があるのを感じた。
近づいてみるとその人物は―――――ゲームチェイサーのヒートであった。
「……どうしたよ、お使いの用にしては暗すぎねぇか。街並みも、お前自身も」
「ヒート……!!?」
何故ヒートがこの新宿で、自分の動向を先に読んでいたのか。ルシファーは予想外な展開に冷徹な顔が一驚して崩れた。
「黄色い看板の店な、俺達ゲーム戦士にとっちゃ良い店だぜ。カードもボードゲームも皆揃ってる。だが開くのは昼間からだ」
しかし今はヒートの茶化しに付き合うつもりは無い。ルシファーはまた例の黒炎を出そうと右手を広げて構えたが、ヒートがそれを止めた。
「まぁ待ちなよ。殺るなら俺の話聞いてからでも遅くねぇだろ?」
ヒートは終始余裕の表情であった。そのまま彼は赤いジャケットの懐から今回のキーアイテム・カプセルメモリを取り出した。
「……それが何なのか分かったのか」
「苦労したぜ、カプセルの中の128分割ピクチャーパズルを解読して分かったんだよ。絵の答えはこの西新宿1丁目の景色とパスワード、それに『DDG開放時間 AM12:00』と書かれた暗号だって事を」
アリスの攻略によって導き出したメモリの絵の暗号。統括するとこれらの暗号は、西新宿で展開されるであろう『D・D・G』のVR空間発生時刻を示す地図のようなものであった。それがどうしてカプセル内に隠されて居たのかというと、
「DDGの中には確定報酬なるゲームも存在するらしい。それらは公の場では公開されず、極秘のルートでUSBメモリに記されているか、金で買収されるかでしか手に入らない。それをお前が持っていて、“栄光の太陽”を渇望する奴の事だ。――――このゲームの確定報酬は、アレなんだろ?」
「……………」
ルシファーは無言のまま、黙秘を通すだけであった。だがそれも無駄に終わる。何故ならもう間もなくメモリに記された時刻が近づいているからだ……!
「深夜0時、十秒前。パスワードは『2S15M23B16』……っと!」
パスワードをプレイギアから入力したヒートは手元に持っていた『DDギア』、つまりDDGに参加するためのヘッドセットを頭部に装着した。
そしてヘッドホンから例のアナウンスが流れた。
『――――西新宿1丁目にて、【バトルストリート・ドッジ】が出現しました! 参加プレイヤーは2名、2分後にゲームが開始します!!』
参加プレイヤーとは他ならぬヒートとルシファーの事。DDギアを装着していない者には何の変哲のない深夜の街に見えるが、ギアのバイザー越しから見える景色では夜の街を繰り出しそうな程にネオンギラギラのストリートが展開されていた!!
――――――――PLAY GAME――――――――
☆D・D・G 《デュアルディメンションゲーム》②☆
【バトルストリート・ドッジ】
・ジャンル:アクションゲーム
・プレイヤーレベル:25
ルール
・2人のプレイヤーによって行われるストリート型ドッジボール。街に置かれた複数の『バトルボール』を獲得し、相手にヒットすれば勝利。
・またNPCである『ゲーミングネーター』なるアンドロイドも出現し、撃破すると特殊なバトルボールといったアイテムを獲得出来る。
プレイ報酬(PvPの場合)
・栄光の太陽の欠片(確定)
―――――――――――――――――――――――――
「ビンゴ! やっぱり栄光の太陽の欠片が報酬になってたか!!」
「うっ……!」
ルシファーも次第に冷静さを失いつつあった。本来ルシファーだけがDDGに参加できたのならば、NPCの勝ち抜き勝負設定で済む筈だったが、ヒートの参戦によって自動的にPvP型にルールが変更された。これはルシファーの計算違いであったのだ。
「それと、お前とゲームする前にもう一つ忘れてる事があるぜ」
「……何をだ?」
「ゲームが舞台ならば、俺もPASが使える事を――――!!!」
招来せよ我が魂! 既にヒートの胸には真っ赤な炎が。炎の精霊・サラマンダーの魂が覚醒していた――!!
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【サラマンダー】確認。
◎――――――――――――――――――◎
「このゲームでケリを付けようぜ。俺のサラマンダーの炎、お前の悪魔に魂を売っ払った黒炎、どっちが強いか!? ―――遠慮はしねぇぜルシファー!!」
「………………ほざくなッッ!!!!」
ゴォォォオオオオオオオ!!!!!
二人の間に交差した赤と黒の双炎。それが深夜の新宿にて繰り広げるDDG開幕の合図となった―――!
〘◇To be continued...◇〙




