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【PHASE2-5】覚悟・勇士が太陽を手に入れる理由

「……何だよ()()って。あの太陽が何か呪いでも掛けてくんのかアリス?」


 秘宝“栄光の太陽”を手に入れる為に、ヒート達ゲームチェイサーの決意が固まった最中、その秘宝奪取を止めようとするアリス。興醒めするような言い方にしかめっ面で返すヒート。


「ヒートこそ何を呑気な事を言ってるのよ! 遊びじゃないのよ栄光の太陽を取りに行くのは!!」


 いつもお気楽なのはアリスの方なのだが、今度ばかりは真逆で必死な形相からその深刻さが伺えたヒート。


「……アリス、栄光の太陽の事で何かトラブルでもあったのか?」

 するとアリスは咄嗟に俯いた。という事はアリスの間で栄光の太陽に関わるトラウマがあったに違いない。その詳細は本人が直々に語った。


「……あたしの友達がね、DDGで幸運にも栄光の太陽の欠片を報酬で手に入れた事があって、それで私はこの秘宝の事を知ったのよ。……ところが、その手に入れた友人は翌日帰宅した途端に()()()()


「「「――――!!??」」」


 ゲームチェイサー全員がアリスのカミングアウトに血が凍るような悪寒が走った。


「栄光の太陽の欠片を獲得した事を妬んだ地上のチンピラ共に謀殺されたの! 地底の者が持つよりも自分の方が持つに相応しいとか理不尽な言い訳並べて、ただ欠片を持っただけで友人が刃物で切り刻まれて殺されたのよ!!」


 ……それは予想以上に深刻、かつ悪意のある悪夢であった。またしても地上と地底の確執によって人の欲望を左右する秘宝の強奪の為だけに、殺害まで手を染めてしまう世の中の非情さを思い知らされたのだから。


「だからお願い、あの欠片だけは集めるのは止めてヒート。そんな事したらヒート達も、皆もあの友達のように殺されちゃうんだよ……!?」


 アリスはヒートの身体にしがみついて懇願した。……しかし彼の出した答えは、首を横に振って『NO』と示すだけ。それには彼なりの理由があった。



「……俺の勘なんだけどさ、多分アリスの友達の他にも、栄光の太陽絡みで酷い目にあった奴は大勢いると思う。人知れずいつの間にか殺された奴らだって」

「そんな!」

「黙って聞けアリス。俺達がゲームチェイサーとしてチームを組んで戦おうとするのはな、そういった人の涙を拭ってあげる人になりたいからだ! お前の友人が殺されて、泣いたままで良いのか? 仕返ししてやりたいって思った事無いのか!?」

「で、でも……でも……!」


 どうすれば良いのか分からず狼狽えるアリス。そんな彼女に真っ直ぐ顔を上げて見つめるヒートの眼には、炎が滾っていた。


「俺達ゲームチェイサーは“人々の自由を守るゲーム勇士”だ。俺達のやる事が自分は深く傷付く事であっても、俺達はそれでも一生懸命この地底で生き抜いている人達を守りたいから、秘宝を使って“真の自由”を願うんだ。……アリスにも、その気持ちはあるか?」


「…………………」


 ―――アリスは真摯なヒートの眼を見て感慨に更けていた。ヒートは時々冗談も交じる性格をしていても、地底空間の人々の為に自ら戦陣に立って傲慢な者を成敗する意義は間違いなく本気であるとアリスも分かっていた。


 だからこそ信じたい、仲間の心意気を。自分も大切な人を失わせない為に何が出来るのかを……!



「………どうしても、地底で私達を優しくしてくれた人達を守りたいのね。ヒート達は」

「…………あぁ」

 そして導き出した、アリスの答えは。



「―――それなら私も手伝わせて! 皆で栄光の太陽を手に入れて、地底の皆にも笑顔を分けてあげよ!!」

「……そうこなくっちゃ!!」


 ヒートはアリスの背中をドンッと叩いて鼓舞した。地上でやられたトラウマに引きずっていた彼女を見透かしていたヒートは、改めてその覚悟を示したかったのだ。

 アリスもようやく吹っ切れた所で、本題はルシファーが持っていたカプセルメモリーに移った。


「……さてどうしたものか。カプセルの謎を解かないと再びルシファーは私達を襲ってくるだろう」

「でも中身は128分割のピクチャーパズルだしなぁ……、解こうと思っても相当骨折れるぜ」


 ジョーカーもヒート達もお手上げなこのパズル。解こうにも下手すれば手遅れな可能性すら見える状況に、救世主が現れた。


「……あたし、これ直ぐに解けるかも」


「アリスが!?」

「ホンマか? こんなピースの細かいとこもスライドするパズルを解けるんか?」


 ハリアーもツッチーも疑惑の目で見つめるが、それにも動じずアリスはメモリーを繋げたパソコンで解読を試みる。すると、1ピースを動かすだけでも一苦労なパズルをあっと言わせる間も無く既に半分は完成の情景が明らかになった。


「……俺思い出した。アリスって空間認識能力に結構長けてて、こんなパズルを解読するの得意だったっけ」

「てか元々アイツ()()()凄いからな」

「形も想像していくうちにパズルに長けたって理屈が……通るかどうかは知らんがな」


 ゲーム戦士は一長一短、個性の塊。アリスはメンタルには弱いが想像力はピカイチ。それ故にピクチャーパズルの暗号を僅か3分で解読したのだから驚いた!


「出来たよ!! 何かの景色と……日程時間かしら?」


 完成したピクチャーパズルからは記された情景と、何かを指し示す時間が書かれていた。



「―――――繋がった! これならルシファーとリベンジ出来る!!」



 ヒートがパチンと指を鳴らして閃いた様子。ピクチャーパズルから導き出した、ルシファーの動向は果たしてどんなものなのか。そして当の彼は今……。




「……………栄光の太陽は俺が手に入れる。この世で一番強いゲーム戦士は唯一人だけの称号だ――――!!」



 太陽は沈み、漆黒の闇夜を照らすネオンの光。――都会の摩天楼に悪魔の翼が羽ばたいた。



 〘◇To be continued...◇〙




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