【PHASE1-9】いつも魂に太陽を……!
――ゲームチェイサーは成敗はすれども、殺生はせず。炎々と燃え盛った火の海・炎の柱に包まれたVRフィールドは数分後に鎮火し、ゲームの勝敗にはヒートに軍配が上がった。
さて、肝心の小金井はどうなったかというと……
「ん、く……。私は、まだ生きているのか……?」
「当たり前だろバカ。ゲームは殺し合いじゃないし、お前を焼肉にしたって脂肪多くて食う気にならねぇよ」
厳しい冗談を吐きながらしかめっ面で手を差し伸べ、小金井を立たせるヒート。仕打ちには心底怒ってはいるが、罪を憎んで人を憎まず。そこの所は只の仕置人では無い所を見せた。
「フフフ……、私を生かした事を後悔するんだな下等人種。私にとって500万の損失など痛くも痒くも無いわ。金は幾らでもあるんだからな、調子に乗ってる地底の奴らの金をまた根こそぎ奪って―――」
「あー、それはもう無理かもな」
「何?」
ここでもう一度宣言しよう。―――ゲームチェイサーは情け御無用。
善人を泣かせた罪を二度も犯させる程、彼らは容赦をしない。それを証拠にハチ公前広場には無数のパトカーが止まっていた。そして一人の警部が警察手帳を差出しながら小金井の元へ。
「小金井利子郎だな。お前にDDGの不正アクセス操作、並びに小金井証券の顧客情報を窃盗、及び不正アクセス禁止法違反の容疑で逮捕状が届いている。署まで同行してもらおうか?」
「……………………はい????」
何と小金井の知らない内にDDGの不正操作がバレたこと、更に証券会社で利用している観客の個人情報を名簿業者に売却・漏洩させたというとんでもない悪事もバレていた!
「お前ホントに汚い奴だよな。お得意さんのIDをアクセス権ずさんなのをいい事に親の目を盗んで売却するくらい金に盲目でさ!」
「な、何を馬鹿な事を!? 何を根拠にそんな逮捕状が! 証拠は、証拠はあるのかね!?」
必死に抵抗しております小金井。だが証拠に関してもゲームチェイサーに抜かりなし。
「いやいやいやご苦労さんですわお巡りはん! 小金井証券の小金井のIDを引っ張り出して、顧客情報約117万人分を不正に取得し、うち約7万人の情報を名簿業者に売却した略歴、ちゃーんと小金井はんのプレイギアから暴いたったで!!」
「それと、お前が改造プログラムを使ってDDGをチートプレイさせた証拠も込でな。ザマァみろ!」
後から現れたハリアーとツッチー。ツッチーのパソコンに小金井のプレイギアを繋げ、証券のHP経由で小金井の情報を警察に逆漏洩させた。
更にDDGにて改造プログラム“GOLD”を使って不正操作をさせた証拠は、ボディガードを尾行した際にハリアーが操作する超小型ドローンのカメラでハッキングさせる決定的瞬間を掴んだ。二つの犯行を完全に掌握させたゲームチェイサー。
「貴様ら!? 何故私のプレイギアを持っているのだ!!?」
「ゲームの最中にお前のボディガードが懐からプレイギア取ったの見たぜ」
「何!!?」
それを聞いてギロッとボディガードを睨む小金井、当然彼らは誤解ですと首を横に振るばかりだが……、敵を欺き接近した者が居た事を忘れてはならない。ボディガードの背広をバッと脱いで正体を現したのは……
「メインヒロインのアリスでーす! あっかんべ~☆」
あざとく舌出して変装を解除したアリス。小金井が滑って頭を打っていた隙に彼女は懐からプレイギアを掠め盗り、ハリアー達にパスしたのだった。
「お前ら……!!! よくもこの私を嵌めてくれたな!!!!」
散々地底空間の人々を騙し取った輩のどの口がそれを言うのか。そんな恨み節も最早聞く耳を持たないヒートは止めの嫌味をぶちかます。
「地上には面白いもんが沢山あるのによ。金にしか目が無い奴が、弱い奴から奪い取ることしか考えなくなった。悲しい末路だよなぁ。―――年貢の納め時だぜ、これで名誉も信頼も貯金もガタ落ちだな……!!」
ヒートの近寄った顔から見せる悪魔の顔。人間が心の底から『ざまぁ』を表現する際に、出し抜いてやった快感から本性が出ると言いますが。ヒートらは散々蔑まれていた地底空間の人々を代表して、地上の者を思い切り地に叩き落せる時を心待ちにしていた。
―――強者に跪かれた屈辱を、積年の憂さを存分に晴らした瞬間だ…………!
「ぢぐじょ゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
〘◇Now Lording◇〙
―――地底空間・喫茶店『パラケルスス』
「『小金井証券、社長御曹司によるDDG不正操作・顧客情報売却発覚。小金井利子郎容疑者を逮捕、起訴の予定。損害賠償額として約100億にのぼり、世間では破産申請の噂も』……か。ご愁傷さまだな」
任務を終えて、一息付きながら速報で入ったニュースを一読するジョーカー。並びに傷も回復した蛍原や響波姉妹も一緒にヒート達の活躍を見守り、勝利した事により大いに喜んだ。
「良かったね蛍原さん! ヒート達が仇を取ってくれたよ!」
「それに200万円の掛け金の支払いもしなくて済みます」
「いやぁ本当に! あの小金井の鼻を明かすだけでなく、金まで奪い返してくれるなんて。これも皆のお陰だ、ありがとう!!」
「掛け金報酬の1000万円は我々と折半する事になっている。だから蛍原さんは500万円、家族の為に使ってあげなさい」
「……えぇ、えぇ! 是非そうさせて頂きます!!」
ジョーカーからの暖かな奉仕が、喜び余って嬉し涙に変わる蛍原。地底の温情が胸に染みた。
「ゲームチェイサー・E-FORCEか……、本当に頼もしいチームだ! 帰ってきたら存分にお礼しなくちゃ」
するとジョーカーは、地上のヒートから無線連絡を受け取ると軽く頷き話したあとその連絡を切った。
「それなら暫くここで休むといい。彼らはまだ地上に居るつもりらしい。太陽を見ていたいって連絡が来てたぞ」
「太陽……?」
〘◇Now Lording◇〙
――再び舞台は地上・渋谷。
時刻はまもなく午前の6時。冬も近づく木枯らしの風が身に染みる中、地上では既に勤務の為に出歩く者達が。そして渋谷の高層ビルの屋上にはヒート、ハリアー、アリス、ツッチーの四人が、東の空に登る光を拝む為に今か今かと待ち構えていた。
―――地平線の彼方より、登る朝日の黄金の光……!
「やっぱり、本物の太陽は気持ちいいなぁ……!」
「「「ミートゥー☆☆☆」」」
地底空間では地下故に太陽を拝める事が出来ない代わりに、人工太陽によって紫外線や日夜の区別を確保する習性があった。
しかし太古より生きとし生けるものに希望を与えていく太陽は、たとえ人工物で賄おうとも決して本物には敵わない暖かな光がある。
凍てつく心を溶かし、一生懸命に生きる人々の元気を与え、一時期精神不安定になっていた作者の情緒も安定させた太陽に勝る宝は無し。
いつか自分達も、毎日本物の太陽を拝められる地上に返り咲く為に。ゲームチェイサーとして、ゲーム戦士として明日も戦う決意を新たにするのだった!
――そして、ヒートの手にはDDGで手にしたであろう、太陽に似た黄金の輝きを持つ欠片が。
これが後にゲームチェイサーにとって過酷な運命を引き起こす事を、四人は知る由もない。それはさておき。
「……ちょっと地上のカフェ寄ってから帰るか!」
「俺ハンバーガーのが良いんだけど」
「ねぇねぇカフェならシェイクあるのが良い!」
「ワテは定食でもたらふく平らげたい気分やわぁ」
――――情熱ガイに風来坊野郎、水鏡ガールに大地の商人。四人のエレメンタル魂が一つとなりて、混沌の世を正す自由の力が覚醒する! 地底空間の必殺仕事人、彼らが向かう先は光か闇か!?
いざいかん、自由の四勇士・ゲームチェイサー! 君達に幸あれ!!
〘◇PHASE1 THE END◇〙
▶▶▶▶ NEXT GAME CHASERS▽
初陣のDDGに勝利したヒート達は報酬の1000万円と、黄金の欠片を手にする。その欠片は全国各地でゲーム戦士達が血眼になって探しているという幻の秘宝『栄光の太陽』であった!
それを狙おうとする黒い影、それは地底空間の更に下の層・B2層に位置する“裏プレイヤー”がヒート達に襲いかかる!!
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