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プロローグ〜敗北者の地にて〜

【GAME CHASER】

LORDING……CONNECTED!▽


――――All GAMEWARRIORS, behold! THIS IS GAMECHASER・E-FORCE!!

 

 ――――時は近未来・『超次元ゲーム時代』。ゲームを中心として世界が回る不思議な時代。


 とあるゲームに酔狂した科学者が、世界政府で開発していた現実世界とコンピュータネットワークを繋ぎ、人を転送させて世界を行き来するデータ装置『トランスホール』を強奪。

 それを地球規模の“メタバース”、即ち三次元仮想空間であるVRMMO『ゲームワールドオンライン』に埋め込んだ事により、現実と仮想空間を行き来する()()()の世界観が生まれた。


 退屈な世の中を変えたいという人々の意志が、画期的なゲームネットワークの誕生により新たな時代を呼んだのだ。


 ゲームワールドオンラインを管理する機関『WGC (ワールドゲームコーポレーション)』から供給されるゲームの成績や大会結果の記録が登録されるだけでなく、公共ギャンブルの一環でゲームで勝ち取った報酬や賞金を実際の収入として得ることが出来る。


 ゲームにクリアし、報酬を受け取り、新たなゲームを求めて世界を広げ、またゲームに挑んでいく。何時しか人々はゲームそのものが人生の糧となっていった。ゲームに勝ち続ける者にとっては極楽な世だが……、



 ――――()()()()()()()()()にとっては、“地獄”の世と化していた。



 〘◇Now Lording◇〙



 ――地底空間・アンダーグラウンド。

 そこは、決して太陽の光から遠ざかった暗がりの闇と冷え切った空間。それに伴った静寂に包まれた理想郷とは程遠き場所。



 地獄と呼ぶには浅いが、現実と呼ぶには深い。この地では超次元ゲーム時代に淘汰された者達が、同じ人間の手によって追放され、社会から遠ざかった不適合者の烙印を押されながら生活していた。


 ()()()()()()()だけで、敗北者の烙印を押されて地底に追放されていくのだ。


 こんな理不尽な世の中があって良いものか。地底に追いやられた者達は声を揃えて表明するも、敗北者にその権利すらも与えられなかった。……最早為す術もないのか、いや否。この理不尽な世を翻そうとする者は必ず現れる。そう信じる者がいる限り希望は消えない。



 その希望となり得る運命の刻は、超次元ゲーム西暦0030年の或る夜から始まっていた――!



 〘◇Now Lording◇〙


 ――朝も夜も関係なく、漆黒の闇の中に松明の炎だけが明るく灯す地底の道。

 そこから更に奥へ、奥へと向かう先に西洋の旧都を思わせるような無機質な灰色のレンガで覆われた街並み。


 街の家々に暖かな明かりがちらほら。かつて地上でゲームに挑むが敗北し、社会を追われた者達が移住するこの地底にもまだ生きる力、明日への希望は忘れてはいない証明であった。


 そんな街の入口に一人の男が何やらベビーカーのようなものを引いて現れた。カラカラと音を立てている様子に街の人々は次々とその気配に気付いた。


「――――あ、ジョーカーさん!!」


 知り合いと思われる青年が声を掛けた拍子に続々と街の皆が家から出て、街に入ろうとする男の帰りを迎えた。


 この男の名は麻空(あさそら)丈一(じょういち)(当時21歳)。地上に上がっての活動が出来る数少ないゲーム戦士の一人であった。


「……どうですか、地上の方は?」

 街の住民は恐る恐る地上の状況を丈一に訪ねた。


「……最悪だよ。己の欲望の為なら壁となるゲーム戦士達を根こそぎ排除する考えらしい。――こんな未来ある子供達の両親まで金だ経験値だ託けて引き離すんだから」


 彼が街に帰るなり何故にベビーカーに四人の乳児を連れてきたのか。大家族にしては年が若すぎる。即ちこの子達は()()であった。


「まさかこの子ら、ジョーカーさんの言ってた伝説の……」

「そう、炎・風・水・土の四大精霊の“PAS”を受け継がれた子供達。奴らに消されない内に私が保護した」


『PAS』とは、人間の精神に眠る闘志がゲームによって覚醒した時に身体を超越した能力が生まれる異能力の事。つまり『絶対に勝ちたい!』『負けられない』という意志が反応して普通ではあり得ない力をゲームの中だけ発揮すると研究で発表されていた。

 そして、丈一が保護した四人の子にも類稀なるPASの力が宿っていた。



「この子らは時代に淘汰されるべき存在ではない。この矛盾だらけの世の中を正すにはこの地底で育ち、人との関わりを大事にし、本当に正しい事を知っていく必要がある。だから私はこの子達を地底空間の()()として立派なゲーム戦士に育てるつもりだ」



 地上の者によって、四人の子の本当の両親が消息を絶った現実を何れは自分の手で知る事になるだろう。思いがけない過酷な運命も待ち受けるだろう。そんな予感を察した人々の中には可哀想と思いすすり泣く者もいた。


「こらこら、死んだ訳でも無いのに無駄な涙は流すものじゃない。寝てるがちゃんとこの子らも聞いてるんだぞ。ここは地上と比べて交流に濃い場所だ、皆の関わりもこの子達の力になる。私だけじゃなく皆で、この子達を育て上げよう」


 麻空丈一の元、そして地底空間に住む街の人々の助けも借りて、未来ある四人のゲーム戦士を育てる。この場に居た者達の誰もが反対する者はおらず、皆が一心同体となって理不尽な世と戦おうとしていた。


 そして彼らの意志に反応したのか、微かに四人の子の胸から炎、風、水、土色のPASの輝きが地底に迸った。


 ――――いつか、地底にも太陽の光が差し込む時が来たるまで。



「エレメンタルの力を持つ四人の勇士に、幸あれ…………!!!」

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