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淡々三国志  作者: ンバ
蜀書第七、法正伝
86/603

八、法正の最期、劉備の敗北、諸葛亮の歎息

8.

先主立為漢中王,以正為尚書令、護軍將軍。明年卒,時年四十五。先主為之流涕者累日。謚曰翼侯。賜子邈爵關內侯,官至奉車都尉、漢陽太守。諸葛亮與正,雖好尚不同,以公義相取。亮每奇正智術。先主旣即尊號,將東征孫權以復關羽之耻,羣臣多諫,一不從。章武二年,大軍敗績,還住白帝。亮歎曰:「法孝直若在,則能制主上,令不東行;就復東行,必不傾危矣。」


(訳)

先主が漢中王に立てられると

法正は尚書令、護軍將軍に任じられた。


明年(220)卒した、

時に四十五歳であった。


先主は彼のため、日をかさねて涙を流した。

翼侯とおくりなされ、

子の法邈ほうばくに関内侯の爵位を賜わり、

官位は奉車都尉・漢陽太守まで至った。


諸葛亮と法正は

好尚は同じでは無かったけれども

公義の場は互いに補い合った。

諸葛亮は常に法正の権謀術数を尊重していた。


先主が尊号(皇帝位)にくと

東の孫権を征伐して

関羽の恥に報復しようとした。

群臣の多くは諫めたものの

一向に従わなかった。


章武二年(223)、

大軍は敗北を重ねて白帝へ帰還した。


諸葛亮は歎息して言った。


「法孝直が若し健在であれば、

主上を制する事が出来て

東征はさせなかったであろう。


例え東征していても、きっと

危機に陥らせなかったであろうに」


(註釈)

定軍山でキレキレの計略を披露した翌年、

蜀最高の謀略家が、あまりにも

あっさりと逝ってしまいました。


漫画「蒼天航路」では

曹操に勝つため、法正は寝る間も惜しんで

十全の策を練り続けるのですが……


「曹操の一手に十手を浮かべ

対する一手を百策より引き出す」


そんな作業を朝な夕な繰り返し

心身ともにブッ壊れそうになったとき、

劉備が法正の異変に気付いて

後ろから抱きしめるんですよ。


「法正もういい、おめぇはよくやったッ」て。


法正ほどの軍師が命を賭して

ようやく対抗が叶うほど

曹孟徳という男のスケールは

とにかくえげつないんです。


龐統の遺言があるので、

劉備も泣くのを必死で堪えており……

この場面は涙なしには見られません。


蒼天航路の黄忠も、定軍山で

夏侯淵から深手を負ってしまい、

劉備も彼に休養を命じるのですが、

「妻子も既にこの世にいないから

思い残すこともないし、

戦場で死なせてください」と

引き下がろうとしません。


趙雲別伝の記述の通り、

黄忠は曹操軍の兵糧奪おうとして

(傷を押して)出陣するんですが

見るも無残なくらい

ボロボロの姿で帰ってきます。


法正と黄忠が

揃って死んでしまうのが

本当に残念でなりません。


劉備が法正に与えた諡号は

「翼」侯でした。


翼には〝助ける〟の意味があるので

法正に扶翼の臣として、最大の信頼を

寄せていたことが窺えます。


関羽の死後、劉備は皆の諫めを無視して

孫権を討伐しようとしますが

この時40歳前後の陸遜りくそんの前に

大敗を喫してしまいます。


かくして、武田軍の長篠の戦いレベルの

ボロ負けが2度続いてしまい、

大将の劉備にもここでお迎えが来てしまいます。


孫権はこの頃が全盛期で

采配キレッキレなんですよ。

焦っている老境の劉備では正直、

この時の脂の乗った孫権を降すのは

厳しいかなぁ……と感じました。



曹操も、赤壁で敗れたときに

「郭嘉が生きていれば…………」と

歎息する場面があるのですが、


ここでは諸葛亮が

「法正が生きていれば……」と

彼の死を惜しんでいます。


個人的には、これも

陳寿が蜀書に仕込んだ

祖国アピールの一環だと思ってます。



演義では、無敵の筈の諸葛亮が

呉攻めの時にほとんど何もしてないので

どうしても怠慢に見えてしまいます。


正史の劉備軍は4万ですが、

演義では約20倍の

75万まで増えています。


演義は、あくまで合戦の結果は

史実と同じにしようとするので

兵数で圧倒してるにも関わらず

惨敗を喫してしまった劉備の無能さが

最後の最後の場面に来て

浮き彫りになってしまっています。


見方を変えれば、

関羽と張飛のカタキを討つために

利害とか全部度外視で

孫権の首を狙うっていうのが

この上なく義侠らしい引き際と云えます。

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