註六、曹操の負け惜しみ
註6.
臣松之以為蜀與漢中,其由脣齒也。劉主之智,豈不及此?將計略未展,正先發之耳。夫聽用嘉謀以成功業,霸王之主,誰不皆然?魏武以為人所教,亦豈劣哉!此蓋耻恨之餘辭,非測實之當言也。
(訳)
わたくし松之の意見。
蜀と漢中はともに唇と歯の如くである。
劉主(劉備)の智略を以て、どうして
この点に考えが及ばぬ事があろうか。
計略がいまだ展開されぬうちに
法正が先んじて発案しただけである。
そもそも良策を聴き分け
用いて功業を成す事は
覇王となる主ならば
誰でも皆同様ではなかろうか?
魏武(曹操)が
(劉備の策が)人に教えられたものだと
見做したのなら、なんと
劣った考えであろうか!
これはおそらく、
恥と悔しさから出た余計な言葉であって
事実を推測した真っ当な発言ではない。
(註釈)
要するにやっぱ負け惜しみですよ!
唇と歯の間柄……は、
唇がないと歯も無防備になっちゃうので
それほど密接で、存亡をともにする
関係性だという事です。
裴松之先生は劉備の智を
高く評価しています。
曹操の言う通り、ただ
法正の献策に従っただけとしても
それに耳を傾けて、採用するかどうかも
主君の采配や度量のうちですからね。
巴・漢中の攻防戦は
法正と黄忠が目立ってますが
基本戦略を立てたのは黄権のようです。
その黄権も、呉攻めの際に
進退窮まって魏に降伏しちゃうんですが
彼も法正に負けない程非常に優秀な人物です。




