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淡々三国志  作者: ンバ
蜀書第七、法正伝
78/603

四、靖より始めよ

4.

十九年,進圍成都,璋蜀郡太守許靖將踰城降,事覺,不果。璋以危亡在近,故不誅靖。璋旣稽服,先主以此薄靖不用也。正說曰:「天下有獲虛譽而無其實者,許靖是也。然今主公始創大業,天下之人不可戶說,靖之浮稱,播流四海,若其不禮,天下之人以是謂主公為賤賢也。宜加敬重,以眩遠近,追昔燕王之待郭隗。」先主於是乃厚待靖。


(訳)

建安十九年(214)

(劉備は)進軍して成都を囲み、

劉璋の蜀郡太守である許靖きょせい

城壁を乗り越えて降伏しようとしたが

事が発覚し、果たせなかった。


劉璋は、危難が差し迫っていたため

許靖を誅さなかった。


劉璋が降伏したのち、

先主はこの薄情さを聞いて

許靖を用いようとしなかった。


法正は説いて言った。


「天下には虚名はあれど

実の伴わない者がおりますが

許靖こそがそれに該当します。


しかし、ただいま

我が君は大業を創始され

天下の人間それぞれに

説いて回る事は出来ません。


許靖の虚名は四海に広く伝わり、

もし彼を礼遇なさらなければ

天下の人々は、我が君が

賢人を蔑ろにしたと謂うでしょう。


(許靖に)敬重を加えて遠近を眩ませ

かつて燕王えんおう郭隗かくかいを待遇した例に

倣うのが宜しいでしょう」


先主はこうして許靖を厚遇した。


(註釈)

ほんとに劉備は

法正の言う事は素直に聞きますね!


前漢の時代から郷挙里選きょうきょりせんという制度があり、

州郡の有力者が何名か

見込みのある者をピックアップして

推挙するというシステムであります。


人格者は「孝廉こうれん

学問に秀でていれば「秀才(茂才)」

文章を善くすれば「文学」など。


三国志や演義を読んでいると、よく

「○○によって孝廉に推挙された〜」

って一文が登場しますが、

まさしくそれのことです。


魏の曹丕そうひ陳羣ちんぐんがこれに代わる

人材登用のシステムとして

九品きゅうひん官人法かんじんほう」を制定し、

隋・唐の時代からは、難しい試験を課す

「科挙」制度に移ってゆきます。



後漢末期は宦官汚吏が幅を利かせており

事態を重く見た名士たちが、

自分たちの手で有徳の人材を見つけてやる!

という流れから、人物評論が流行り

こうした名士たちと誼を結ぶことが

立身出世の第一歩とされました。


清流せいりゅう派」を自称した名士たちと

悪徳宦官との対立は激化して

166年・169年の2度に渡り

彼らに出仕禁止令が出されました。

これが「党錮とうこの禁」です。


清流派士大夫の中には

登竜門とうりゅうもん」の語源となった李膺りようらがいます。


ここに名前の出た許靖きょせいと従弟の許劭きょしょう

この人物評論の第一人者で、

高い名声が当時響き渡っていましたが

それを裏付けるだけの実績には乏しく

法正からは「虚名ばかり」と

逆に辛辣な評価を下されています。


季漢輔臣賛(蜀の身内ベタ褒め文書)でも

なんと、劉備諸葛亮に次ぐ

3番目に名前が載っています、が

やはり虚名ばかりなのか

内容がほとんどありません。


郭隗かくかいについては

「隗より始めよ」の故事で有名な人です。


「賢者を求めるならばまず

私のようなつまらぬ者を登用なさい、

さすれば有能な者がどんどん

集まってくるでしょう」


ということを昭公に言いました。

(その考えを持てる時点でぜんぜん

つまらぬ者じゃないと思いますが)


法正はこの故事を引き合いに出して


許靖は実の伴わない男だけれども

そんな彼を厚遇することで

賢者の歓心を得られるよ!

と述べた感じであります。

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