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淡々三国志  作者: ンバ
蜀書第六、黄忠伝
50/603

二、夏侯淵を討つ

2.

建安二十四年、於漢中定軍山撃夏侯淵。淵衆甚精、忠推鋒必進、勸率士卒、金鼓振天、歡聲動谷、一戰斬淵、淵軍大敗。遷征西將軍。是歳、先主為漢中王、欲用忠為後將軍、諸葛亮説先主曰: 「忠之名望、素非關・馬之倫也。而今便令同列。馬・張在近、親見其功、尚可喩指;關遙聞之、恐必不悅、得無不可乎!」先主曰:「吾自當解之。」遂與羽等齊位、賜爵關内侯。明年卒、追諡剛侯。子敍、早沒、無後。




(訳)

建安二十四年(219年)

漢中の定軍山ていぐんざんに於いて夏侯淵かこうえんを攻撃した。



夏侯淵の軍勢は甚だ精強であったが

黄忠は鋒を突き立ててひたすら進み

率先して士卒を激励し、

鐘と太鼓は天を震わせ

歓声は谷をも動かすほどで

一戦して夏侯淵を斬り、

夏侯淵の軍は大敗を喫した。


(この手柄で)黄忠は征西将軍に昇進した。


この年、先主が漢中王となり

黄忠を後将軍に任命したいと考えたが

諸葛亮が先主を説いて


「黄忠の名望はもともと

関羽・馬超の域ではありませぬ。

それを今ただちに同列の位に

就かせようとしておられます。


馬超や張飛は近くにあって

自ら黄忠の功を見ているため

まだこの旨を理解させられましょうが

関羽が遠方でこれを聞けば

恐らく不愉快になるに違いありません。

よからぬ事ではございませんか!」


先主が言うことには

「私が自ら彼に説明しよう」


こうして(黄忠は)関羽と同等の位に就き

関内侯かんだいこうの爵を賜った。


翌年卒し、剛侯ごうこう追諡ついしされた。

子の黄叙こうじょは夭折しており、後継ぎはなかった。


(注釈)

太鼓は天を震わせ、歓声は谷を動かし……

と、天下の夏侯淵を破る黄忠の大金星に

蜀の旧臣である陳寿の筆も

いつになくノリノリになっている気がします。


2019夏期に上野で開催されていた

「三国志展」において

定軍山から出土した撒菱(まきびし)

展示されていました。

黄忠が夏侯淵との戦いで

使ったものなんでしょうか??


三国志演義において

黄忠の定軍山での活躍を讃えた

漢詩もまたカッコイイです。↓


蒼頭 大敵に臨み

皓首こうしゅ 神威しんいを逞しゅうす

雕弓(ちょうきゅう)いて発し

風 雪刃を迎えてふる

おたけびの声 虎の吼ゆるが如く

駿馬 竜の飛ぶがごと

くびを献じて功勲を重ね

きょうを開き帝畿ていきひろげたり


曹操の宿将の夏侯淵を討った功績は大きく

黄忠は関羽や馬超と同列の位を与えられました。


しかし、そんな事をしたら

プライドの高い関羽が黙っていない、

と諸葛亮が劉備に抗議します。


関羽の手紙のくだりでもあった通り、

諸葛亮は関羽の自尊心の高さを

よく知っているんですね。


費詩伝で、

黄忠と同列の位に任じられた関羽が

「大丈夫が老兵と同列にはならん」と

憤る場面があります。


黄忠=老人 の出典はここです。


しかし体に無理が祟ったのか

夏侯淵を破った翌年に

黄忠は亡くなってしまいます。


関羽の言うように老兵でありながら

谷をも動かす喊声で、最後まで

立派に戦い抜いた黄忠に

与えられた諡は「剛」でした。


諡法解によると

彊毅果敢曰、「剛」。


夏侯淵を破って蜀の版図を広げ

果敢に戦った彼にピッタリの諡だと思います。


彼に後継ぎがいなかったことが

悔やまれてなりません。

黄忠伝の記述がかなり少ないのは

この辺の事情も関係してそうです。

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